五十四話 託(たく)された命
ラックは俺たち三人にいつも言うんだ。
自分の実力を信じなさい、って。
お前たちには各々、素晴らしい個性がある、って。
それは才能、だって。
俺達は理解してないふりをしていた・・・
ラックは血がつながっていない義理の父・・・
思えば、幸せな人生だった。
捨て子だった俺達は、ラックに拾われて必死で鍛錬をした・・・
ラックは喜んでくれた。
すごい、と。
俺達は、それでよかったんだ。
さっきまでは。
国の存亡よりも、ラックに好かれるかどうかだった。
サクラが片目をやられておかしくなった時、
ラックの声が蘇ってきた。
自分の実力を信じなさいって。
水を水玉にして空中に浮かせた時から、
なんとなく知ってた気がしたんだ。
なんかの役に立つ、って。
サクラの片目から毒を抜き出すことを決めた時、
失敗したら・・・死ぬつもりだった。
・・・はぁ~あ、成功して気が抜けたよ。
しばらく動けそうに無い。
ここで休んで、何かあったら風魔法通信を使うから。
・・・え?僕は普通に聞こえるような気がするよ?
なに??
休憩所で休んでいるコハが、風魔法で凍った球形の毒を浮かせた。
意識を一瞬、した。
するとキラキラと光るその毒玉は、消えた。
「「おお・・・」」
サクラ君とコハが感嘆の声をもらす。
「なんだ、今の?」
「フリーズドライ・・・もしかしたら・・・」
「そうゆうことか!実戦に使えるかもしれない!」
「はい」
「さっきも言ったけど、僕はここにいる、からね?勝って迎えに来てよ?」とコハ、
「分かった」
「きっと」
――
――――・・・
サクラ君と一緒に、馬に乗り山頂を目指す。
袋に入れてあるヒョンファと他の植物の種も一緒に蒔きながら、進む。
そして濃霧と化していた瘴気は、聖魔法である程度、扇で撫いで無効化にした。
「おやおや」
そう言った声は魔女ネヴァンのものだった。
「ネヴァン!!」
サクラ君は馬から飛び降り、いきなり剣を抜いて魔女に斬りかかった。
しかし前方に物質バリアが張ってあって、その攻撃は無効。
サクラ君は間合いを読んで、後ろに飛びすさった。
私も馬から降りて、周りの濃霧をなるべく浄化している。
「そうだ!」
袋に入ったヒョンファの種を周りに蒔き、〈サカス・サカセル〉を発動。
「なんだい、それは?」
じわじわと萌え出す植物たちに動揺した魔女の油断に、もう一度斬りかかるサクラ君。
魔女は咄嗟にバリアを強めた。
そして側にある、焚き火でぐつぐつと煮えた黒い大釜の謎スープをおたまで飲んでいる。
「あれはなに?」
「魔女のスープ。ゲテモノだ」
「よく知っているねぇ。100年もののエナジースープだよ。そっちの翡翠髪、ひとくちどうだい?」
「うるさいっ」
魔女はケタケタと笑い出した。
サクラ君が再び斬りかかる。
片腕の魔女がバリアを張る。
サクラ君は大釜を狙って斬り込んだ。
でも、大釜にも物質バリアが張ってあって、跳ね返された勢いで後ろにすさった。
サクラ君は片目が不自由になっている。
いつも氷魔法を使って兵士を癒やしていた分、魔素を使いすぎたのかもしれない。
その場に剣を刺して、それを支えに片膝を地面についた。
息が荒れている。
「いいねぇ、いいねぇ」
ネヴァンが上機嫌だ。
「翡翠髪は、美味しそう」
魔女がそう言ったとたん、サクラ君は氷魔法を発動させ地面から魔女の足と大釜の火を凍らせた。
「なんてこったい!ちくしょうっ」
魔女が慌ててスープを飲もうとしている。
以前ラク・フレイアが放った攻撃で片方の腕が使えなくなっているようだ。
――ラク、ありがとう!!
山頂までの道のり、サクラ君とぽつぽつ話合いをしながら進んで来た。
旅の疲れで、そして魔女からの盗み聞きを心配して、少しずつの話合いだった。
「飛ぶ」
「魔法?」
「そう」
「風魔法?」
「補助」
「了解」
「フリーズドライ」
「オーケー」
「・・・分かった」
「アメ、補助してくれっ」
周りは氷が張ってきらきらとしていた。
聖魔法で瘴気を払い、風魔法を発動、走ったサクラ君が飛び込んで斬りかかる。
「まーた、かい」
バリアの反動を利用して、脳天を狙ったその軌道から空中で前転して、サクラ君は魔女の背中に回り込んだ。
そして素早く振り返り、私は魔女に聖を込めた針手裏剣を投げた。
咄嗟に魔女はこちらに気をとられている。
その隙に、サクラ君は魔女の心臓を背後から貫き、叫んだ。
「〈絶対零度〉!!」
驚いている魔女が身体の芯から完全に凍っていく。
そしてサクラ君は次に「アメ!!」と叫んだ。
「はいっ」
私は魔女の方面に向かって、風と聖魔法を練ったものを発動。
「〈聖破〉!!フリーズドライ!!」
魔女は凍った状態で乾燥させられ、空気中に散った。
サクラ君は残った大釜を凍らせた。
私がそれをフリーズドライ。
――気配はない。
「終わったのか・・・?」
「はい・・・もしかしたら」
――魔女の気配が、ない。
サクラ君は備えていた銃を空に向かって撃った。
それは魔女を倒した時にしか撃たないと約束してある照明弾。
しかもフェルナルドの意向で、美しく花火になって散った。




