五十弐話 白い炎
ヒョンファで解毒・・・それでも奥に行くに連れて、瘴気は濃くなっていく。
解毒の花の効果がまだ追いつかない。
――もっと量があったら・・・
瘴気に色がついているような気がする。
見えている分、紫がかっている。
兵士たちは弐回目の休憩所で、ぐったりとしていた。
目薬が残り少ない。
特に目の痛みが症状なので、どうしようもない。
目薬が残り少ない。
休憩所の様子を見て、ラクが言った。
「ルシーナ隊はここで限界だ」
「せやんな・・・あとはわしらが進むしかあれへん」とサクラ君。
目薬はあと1個しかない、とサクラ君がぼやいた。
横になって唸っている兵士たちもいる。
瘴気にあたったらしい。
苦しそうだ。
風魔法通信で、一回目の休憩所へ連絡。
そちらは良好に作業を進めているとのこと。
二回目の休憩所は、バリアを張るのが難しくなっている。
なんと言ったらいいのか・・・一回目より、妙に薄いバリアだ。
――瘴気が勝っている・・・?
不安が表情に滲んでしまう。
話合いの結果、当初の予定通り、私とサクラ君と三人兵そしてラクで山の奥に進むパーティーを組んだ。
三回目の休憩所も、伝説にある。
牛は置いて行かなきゃいけない。
ラクは歩きだ。
緑毛馬は瘴気に当たらないけど、ラクの体重では乗せることはできない。
ラクは機械化されている件で、体重が見た目よりかなり重い。
それから情緒的なもので、『姫の馬』には乗れないとラクは苦笑した。
「大丈夫、歩きます」
「ラク」
「ラック」
「大丈夫なの、ラック?」
不安そうな三人兵に、ラクは笑って見せる。
「そろそろ部品の寿命だ」
二回目の休憩所に、技師たちは残る。
ここからは更に危険だけど、三人兵がいてくれてよかった。
とんでもない拒絶感でバリアが張れる三人は、なぜか瘴気に当たらない。
技師さんがくれた特別性のゴーグルマスクをしていることもあるのだろう。
聖女はこの瘴気には当たらない。
つまり私には、瘴気は問題ない。
サクラ君は瘴気に抗体を持った特殊体質。
それでも目薬を差す頻度が多くなっている。
「・・・そうだ!!」
私は扇を取り出して、ラクに進行方向が当たっているか聞いた。
「はい、こちらの方向かと思われます」
「よーし・・・せーのっ」
扇を振り、聖風魔法を発動。
ないだ軌道は一陣の風になり、そして聖を混ぜたその成分で浄化に成功した。
つまり、瘴気がない道が少し開けた。
「すげぇ!」とコハ。
三人兵たちがはしゃいでいる。
「こんな質量、大丈夫なんけ?」とサクラ君。
「今は・・・大丈夫」
緑毛馬に乗り、みっつめの休憩所へと進む。
思いついたのが、ヒョンファの種を前方に蒔いて植物魔法を発動させる方法。
そしてそれが成功して、花の道ができていく。
踏まなければならないことに少々の罪悪感はあるけれど、ヒョンファはすぐに八重咲きに変わってくれた。
――
――――・・・
清浄な空気がなつかしい。
小さくセキを始めた三人兵が心配だ。
技師のマスクでも、瘴気が確実に身体をむしばんでいる。
「あ、あれじゃないか?」
そこには三回目の休憩所。
そこに三人兵がバリアを張ろうとした時だった。
大声みたいな鳴き声がして、サクラ君がそれを早斬りした。
地面にむなしくも落ちた遺体は、おそらく毒カラスだった。
黒い羽根に、緑色のくちばしの鳥。
「これが毒カラス・・・?」
「くちばしが緑色・・・知らなかった」
「メモしておこう。毒カラスはくちばしが―」
「みぃつけた」
背中がぞっとした。
風魔法通信で兵士の誰かが言った。
「瘴気が強くなっています!!」
そしてふつりと通信は切れた。
いつの間にかそこにいたのは黒髪の美女。
黒基調のドレスを着ている。
「魔女ネヴァン!!」
「そうさ、わたしはネヴァンだよ」
サクラ君が剣を手にかまえる。
けらけらと笑うネヴァン。
「瘴気の中、よくここまで来たね、人間よ」
「サクラ君、アメ、道を開けて下さいっ」
咄嗟に馬を操り、奇しくもかすみがネヴァンの視界を遮った。
そこに、左腕を右腕で支えたラク・フレイアの攻撃。
「全力発動、〈ホムラ光線〉!!」
白い炎が真っ直ぐと飛び、その炎は魔女ネヴァンの片方の肩口をえぐった。
醜い悲鳴があがり、ちくしょう、と声がして気配が消えた。
そして炎を出した反動で、ラクの身体は壊れた。
「山頂に向かってる!!待て、ネヴァン!!」
崩れて倒れるラクに対して、サクラ君は魔女ネヴァンを追いかける。
「ラック!!ラック!!」
「どうしよう?どうしよう?」
「――・・・ふたりは、下に戻って?」とコハが言う。
「ラクっ・・・」
「ダメだ、素手で触るな!!高温だ!!高熱が出てるっ」
ラクは部品が散らばった地面で吐血をした。
「ラクっ・・・!!」
泣きそうになってしまった。
「アメ・・・サクラ君をひとりにするな・・・行きなさい。聖女よ」
「ラク・・・!!」
「僕も着いて行く!!ふたりはラックをどうにか守ってて!!」とコハが言う。
「馬に乗って!!」
コハはサクラ君が乗っていた馬に乗り、「いざ!!」と叫んだ。
「すぐに!!」
私とコハはサクラ君を追いかけるために馬を走らせた。




