五十壱話 ハゲドク山に到着
ラクが背中を摩ってくれて、どうにか自分を律した。
「泣き虫でごめんなさい」
「大丈夫。愛しています、アメ」
「わしもやで~」とひょうひょうとサクラ君が会話に混じった。
驚いている私に、サクラ君は笑って見せた。
「いつの間にか家族みたいじゃ。気づけてよかった」
「――・・・ふぁいっ。あ、はいっ」
私の返事は妙な発音になったけど、サクラ君は「うん」と言って氷魔法発動に戻った。
緑毛馬の毛色に慣れてきた。
隣国の使者フェルナルドとの連絡も良好。
兵は心も身体も健康。
技師たちは勤勉。
自分も頑張らねば、と意気込む。
目指すはハゲドク山。
そこに、魔女ネヴァンがいる・・・
――
――――・・・
「本当だったんだ~」
思わず声を上げてしまったのは、ハゲドク山の麓。
そこに、ヒョンファの花畑がある。
麓をぐるりと囲っているらしい。
そして八重咲きだ。
「八重咲きのヒョンファは食用になる!しかもそれは解毒されてる証拠!!」
ルシーナ隊の士気が上がる。
つまり瘴気が解毒の花で無効化できることを、近隣の空気を吸って体感したからだ。
「これなら瘴気に対抗できるかもしれねぇな!」と兵士たちの声がする。
戦いの前だと言うのに、皆、嬉しそうだ。
「きっと我々は国の役に立つんだ」
「少しでもヒョンファを植えて」
「頑張るぜよ」
――私も頑張ります。
まず取り組むこと。
地道に、植林。
幻の休憩所を知っているのはラク・フレイアだけ。
なのでそこを目指し、ルシーナ隊はヒョンファの植林を続ける。
まず麓近くから。
麓の花畑の切れ目から少しずつ奥に向かって、植えていく。
丘や小崖になっている場所では、登った兵が投げられた苗をキャッチして、ヘラで土を堀り、もろこしプラスチックごと、ヘラで作った穴に植える作業。
それを終え、道に着地したルシーナ隊が魔法を発動させる。
「〈サカス・サカセル〉」
――・・・おお、と感嘆の声がほうぼうでした。
見事にヒョンファの花が八重咲きになったからだ。
皆、きゃぴきゃぴ喜んでいる。
ルシーナ隊はそのあとも、進軍しならハゲドク山の休憩所を目指して植林を続けた。
――
――――・・・
問題は、進むにつれて濃くなっていく瘴気。
気分が悪い、息苦しい、とぽつぽつ言い出す兵士たち。
そこらで、伝説にあった休憩所が実在した。
ラクが喜びを隠せなかったくらいには苦しい。
森の拓けた場所に、瘴気がない場所がある。
そこに、ルシーナ隊は広大なバリアを張った。
物質結界と魔法結界の両方だ。
「もしかしたらネヴァンに知れた・・・」
サクラ君がぼやく。
ハゲドク山には魔女ネヴァンが眠ってる。
そして結界を張った気配に、何かが目覚めた気配がした。
森がざわめいている。
そんな薄気味悪い気配の中、カラスの鳴き声がした。
「毒カラス、でしょうか?」とラク。
「知れた・・・」とサクラ君は殺意をあらわにする。
三人兵の指揮のもと、魔法料理が重宝された。
バリアで包んであるので、極力瘴気を含まずに済む。
休憩所にはバリアが張ってあるので、ルシーナ隊は即席麺を食べた。
そのあと即席麺の個包装もろこしプラスチックを埋めた場所に、ヒョンファの種を蒔いた。魔法発動で、花が咲いた。そしてしばらく観察すると、自然と八重咲きになった。
「「おお・・・」」
「この作業を地道に続ければ、山の毒素を無効化できるかもしれない」
私がそう言うと、ラクが返事を返した。
「皆、共に頑張ろう」
兵士たちの士気はまだ、留まることを知らない。
――
――――・・・
早朝、テントの中から出ると休憩所の周りはヒョンファの花でいっぱいだった。
「わ~・・・すごいっ・・・」
三人兵が言う。
「姫さんが疲れた、って言うからあのあと俺達が植えておいた。ラックにほめられた」
「良かったね」
「「おう」」と三人兵が嬉しそう。
休憩所にある程度の兵を残して、何かあった時の通信役に任命。
風魔法通信のことだ。
近隣の瘴気を吸える場所に、休憩をはさみながらヒョンファを植え続けるよう指示。
サフが気づいたことだが、毒に犯された木々にヒョンファの種や苗を植えて魔法を発動させると、それにも解毒効果があった。
なので山全体が助かる見込みはあるんだそうだ。
次の休憩所を目指し、ルシーナ隊は私とサクラ君を緑毛馬に乗せて。
ラクを牛に乗せて。
そしてラクの心配で前線にいる三人兵以外が、うしろむきにかがみながら植林を続けて道を作っている。
サフが提案した、バリアを頭部に丸く張る方法は一見滑稽だけど兵に喜ばれた。




