五十話 漁村(ぎょそん)でのおもてなし
ついにハゲドク山の近く、件の漁村に到着した。
遠くに灰色の山が見える。
海と近いなんて、なんて危険な場所なんだう、とひとりごちる。
普通、そんな所と王宮が契約しているのは不思議だ。
すると案内役は、元王族だと名乗った。
日焼けした壮年の男性だったけど、どこか品のある目元をしている。
報告を受けた。
牛たちは喜んでもろこしを食べている、と。
そしてその牛は美味である、と。
安全な食べ物を食べた牛は安全、と言う事実がやっと浸透して来たとのこと。
「お役に立ててよかった」
「姫は牛肉、お好きですか?」
「え、あ、はい・・・普通、かな?」
「「とっても好きなんですよ」」と複数人。
笑い出す案内人のポルカリドさん。
「――・・・あ、姫、そう言えば例のレシピ、叶えましょう」
――
――――・・・
と、言うわけで、私の考えたレシピで大量の料理を三人兵たちと料理番がしてくれた。
▼ 材料 ▼
魚缶
ケチャップ
オリーブオイル
にんにく
粗挽き黒胡椒
茹でたパスタ
料理法は適量の材料をフライパンで熱してソースにしたら、茹でたパスタに絡めるだけ。
ルシーナ隊、大喜び。
近隣の家々も呼び、ハゲドク山を目前に宴。
人見知りの集団だったけど、打ち解けて肩を組んで歌ったりとかしている。
――可愛いなぁ。
遠目にそれを見ていて、食事の時に牛肉のステーキが出された。
じゅうじゅうとした肉汁を思い出してつばを飲み込む。
――本当に食べてもいいのかな?
聖女、ってイメージが崩れませんか、ってポルカリドさんに相談。
苦笑され、その時サクラ君がほろ酔いの様子で声をかけてきた。
「アメ、食べんかいや」
「あ、はい」
「わしのんは?」
「隣に」
「あ。もう先にいただいていますよ」とラク。
「ラック、本当に大丈夫なんですか?」
「え、美味しいですよ?」
「いえ、そう言う意味ではなく」
「身体?」
「はい」
ラク・フレイアはにっこりと笑った。
「もう、死んでもいい。ごはんが美味しいから」
「ラック!!」
「いいんです」
「ええのんじゃ。わしにかまえや」
「え?」
「一緒に食べる約束したじゃろ」
「あ、はい」
「気にしないで。三人はどこかなぁ。探して来ますね」
そう言ってラクはその場を離れた。
サクラ君が隣に座り、用意されたステーキを見て微笑む。
「美味しそうだな」
「・・・はい」
「馳走になるで」
「・・・はい」
聖女成分で少し怖いけど、久しぶりに牛肉を口の中に入れた。
「うまいな」
「おーいしー!!」
周りから笑いが起こる。
どうやら天啓は本当だった。
無理になっていた牛肉を食べれた。
それだけで嬉しい。
そのことをサクラ君に言うと、彼は「心外だ」と言った。
「この世界にはまだ美味しいもんが溢れてるんじゃ。わしと一緒に食い!」
とっても、とっても、嬉しい言葉だった。
ポルカリドさんのいる漁村で、ルシーナ隊から五十人がいなくなった。
養殖の魚の缶詰とヤギと牛について、
酒粕と茎ワカメともろこしで解決。
酒で茎ワカメのくさみ抜き。
甘くない芋と茎ワカメで育ったヤギ肉のスープ。
にんにくの芽と牛の焼き肉。
これを一般に早く広めるために、五十人を派遣に出したから。
当初からその予定はあったけど、朝食を一緒にした兵とかもその中に混じっていた。
「きっと魔女討伐を!」
「よい道を!」
そう言って送り出し、兵五十人の後ろ姿に涙が溢れてきた。
――二度と、会えないかもしれない。




