四十八話 魔女ネヴァン
今回討伐する魔女の名前は「ネヴァン」。
どうも「ネヴィン」と言う毒カラスを弐羽、使役しているらしい。
毒カラスとは、凶暴な毒を持った鳥のこと。
特に爪に毒性を持ち、獲物をとらえて食らう。
人間の場合、目を狙われることが多々あった、と。
「過去形・・・?」
「はい。魔女ネヴァンが生成したと言われる弐羽のカラス・・・行方知れず。おそらくはハゲドク山のどこかにひそんでいます」
と、ラクが言った。
ラクに振り向く。
「そんなに危険ですか?」
「危険です」
ラクは言い切った。
「倒す方法は?」
「早斬り。場合によってはサクラが担当になる予定です」
「動きが俊敏、ってことですか?そのカラス?」
「そうなのです。しかも毒性が強い」
サクラ君が「大丈夫。俺が守る」と言い切った。
「アメには爪壱本も触れさせん」
――ちょっと胸キュン。
それをできるだけ隠して、微笑。
「ありがとう、サクラ」
「ハゲドク山の毒素の話は聞きました?」
と、自由同盟国の技師が聞いて来た。
「そう言えば、ハゲドク山は天然で毒を持っているわけではない?」
「「そう」」と複数人から応えがあった。
ラクが言う。
「魔女ネヴァンとその使役された毒カラスによって山ひとつが毒を帯びた」
「それは―・・・200年前?」
「そう、ざっくり。わたくしラクが産まれる前ですね」
――ネヴァインは200年は生きてる、ってこと?
山頂に向かって毒は濃いらしく、麓には解毒の花『ヒョンファ』が植えられている。
それはその山がハゲドク山と呼ばれるようになった頃に現われた魔法使いが植えたもの。
元々、ヒョンファはその魔法使いが掛け合わせで作った伝説の植物。
この世界で『シュアザローナ』と呼ばれる『希少な存在』。
その効果を試してもいいか、というようなものだったらしい。
そして、麓にはヒョンファの花が大量に咲いているんだそうだ。
だから麓あたりの瘴気は薄く、そして一般人は特にその山には入れない。
代々の魔法使いたちが、ハゲドク山のある程度のポイントにヒョンファを植えてある。
なのでハゲドク山には休憩場所が少なからずあるんだそうだ。
それも伝説上のもので、今はどうなっているのか分らない。
――それは王宮にいる時に聞いたっけ。休憩場所ないのは困るな。
「魔女ネヴァンは―・・・どんな姿をしているのでしょうか?」
周りが少しざわっとした。
ラクが言う。
「ある一定の原型を留めて、変化の術が使えるそうなんです」
「はぁ!?人違いとかは?」
「「ない」」
「なぜ?」
皆が即答した。
「「魔女ネヴァンはカビ臭い」」
苦笑したラクが「伝承なんです」と言う。
「カビ・・・」
「それから、黒髪なんだそうです」
「ほう・・・変化の決まりですか?」
「はい。もしかしたらそうなんです」
「なるほど・・・」
「ネヴァンの強味は、瘴気なんです」
「ヒョンファ・・・それから魔法」
――ヒョンファの種を大量に作ってもらった。なんとかなるかもしれない。
自由同盟国の技師のひとりが言った。
「ヒョンファって言うのは、そんなにスゴいんですかい?」
周りの兵士たちが小さく何度もうなずく。
「・・・なるほど」
ラクが言った。
「瘴気を浄化しきったヒョンファは、万能薬に変るんです」
「ええっ!?すごいっ」
――私も最初に聞いたときはびっくりしたなぁ。
「まさか八重咲になると食せるとは驚きです」
「八重咲?」と技師。
「毒を吸いきって解毒したヒョンファは八重咲になるんだそうです」
「ほー・・・信じがたいな。見目は?」
「可愛いらしいお花なんですよ」とラク。
「ほー・・・メモしておこう。メモ~、メモ~・・・」
別の技師が言った。
「隣国が協力してくれるのは、もしかして、その件もあって、ってことですか?」
「そうなんです!」
私の目が輝いたらしい。
ものすごい勢いで振り向いたそうな。
「フェルナルドは友人なのですっ」
「あのうわさの色男?」
「隣国でも瘴気は問題になっている。なので和平を組んでヒョンファを植えるんです」
「地道に?」
「はい」
「手作業で?」
「はい!」
「・・・ほ~・・・」
その時、ヴンと耳元で音がした。
風魔法の通信だ。
「その男は多分、記者だ。気を付けて」
そう言うと兵士の誰かからの通信が途絶えてプツっと小さく空気が変って音が風に混じっていく感じがした。
――風魔法通信も、きっとこちらの強味になる!
その日は契約している牛乳が届いて、そして献上としてはちみつが手に入った。
はちみつホットミルク。
「みんなで無事に帰って、全員ではちみつミルクを飲みたいです」
ひと時の幸せの中、私はそう言った。
「なるほど、僕は酒で乾杯したいな」とラク。
「俺もじゃ」とサクラ君。
「お酒かぁ~・・・薬酒ですか?」
周りにいた幹部たちがその冗談めかした私の言い方に、苦笑した。
「さすがにビールがいい」
「ですよね~」
「「うんうん」」
星がよく見える、いい風の夜だった。




