四十六話 美々な日和(ひより)
トマトケチャップの開発に成功の知らせが来た。
マヨネーズは瓶であったけど、ケチャップが配達係から届くとおおはしゃぎ。
兵士と、私。
前世の言葉で「アジヘン」、ですよ。
連れているニワトリのたまごの目玉焼きトーストの上にかけてみた。
「う、っわぁ、美味しい」
ニワトリのたまごは基本的に特別枠が食べることになっている。
なので心苦しいから、特別枠のひとたちプラス数人の抽選一般兵で朝ご飯。
その日のたまごの量による抽選。
ありがとう、ニワトリ!
緊張気味の一般兵の感動の顔や言葉、毎朝楽しいよ!!
「そろそろ漁村ですねぇ」
「あ、そうですね」
私に声をかけたのは自由同盟国の技師さんのひとり。
いっつもゴーグルをかけている。
どうも電子ゴーグルらしく、視力補助をしているらしい。
つまり眼鏡の役割。
すごいなぁ・・・ズームとかもできるらしい。
「お魚、諸々(もろもろ)、美味しくなってるといいですね」
「そうですよねぇ~。最近なんだか食べ物が定まってきて、聖女っぽいかな。ははは」
・・・実は、本当に聖女として食べ物に制限がかかる体質が効力を上げてる。
漁村近くでは畑を拓いてもろこしを作っているらしい。
それをエサにした牛肉ステーキがふるまわれる予定を聞いた。
正直、うらやましいけど、身体が受け付けない。
最近は鶏肉も微妙に拒絶感が出てて、奇跡芋に感謝中。
そうそう、それから、少し前から最寄りの問屋さんが協力してくれている。
善行のうわさが少しずつ国中に広まってるみたい。
少しの間、旅の僧侶を一行に連れて供養とか追悼までしたかららしい。
衣服、下着、靴の交換時期にはかなり感謝。
それから、下着類を、職にあぶれた婆たちに小銭を払って洗って貰うことが叶った。
ナイスの缶詰も喜ばれた。
下着には番号が刺繍してあるので、すぐに誰のか分かる。
ルシーナ隊は民に、軍人としての威厳みたいなのを押しつけないのが民に売れたらしい。
「ルシーナってアホで構成されてるんだ~」と嬉しそうに子供たちが言っていた。
「俺も将来、ルシーナに入りたい~」
「あたちも~」
「なんで女が軍に入るんだよ?」
「良いじゃん、別に。そこが居場所なら」
「うーん・・・まぁ、なぁ」
少し微笑ましい会話が聞けたり、お忍び視察は面白い面もあったりする。
自給自足のためのお金や土地がない、って問題について・・・
小さな畑に野菜や花の苗をプレゼント。
切実だから、花も食用。
「いつか鑑賞のために花を愛でたいなぁ」とつぶやきが聞こえて嬉しい。
それから、畑にできないくらい土地の少ない住宅街には、鉢苗を。
特にいちごやミニトマト、ナス、ヨモギ、それからナイス。
環境に配慮すると、これくらいに限られてくる。
国で亜種があんまり出ないようにしているらしい。
外でもらった種や苗なんかは、個人の責任で保護飼育できるらしいけど。
「ヨモギって簡単に食べれますか?」
そう聞いて来たのは子供たちのうちのひとり。
「はい。乾燥させてお茶にもなったりしますよ」
「あっ。もしかしてっ・・・」
「ん?」
「ああ~っ、このひときっとお姫さまだぁっ。お忍びなんでしょーっ?」
人差し指を立てて「しー、しー」と必死に言う。
何故か異世界でも「しー」は人差し指を立てることがあるらしい。
通じていて、子供たちははしゃいだりニヤニヤしている。
その日の側近の判断でその場を離れる。
するとめまいがあって、私は体勢を崩すのとほぼ同時、気絶してしまった。
――
――――・・・
夢の中。
緑が豊かな芝生の丘を茂みの中から見つけて、丘のてっぺんにブランコを見つける。
大人が眠れる大きさのブランコに、誰かが眠っている。
ゆっくりと近づいて、そっと顔をのぞき込んだ。
――ああ、サクラ君。
何か声をかけようとしたのか、彼が目覚めようとしたところで白い光の空間。
そこに、オレンジ髪のオレンジの瞳の美しいひとがいた。
髪が長い。
――性別が関係ないほど、美しい・・・でも、サクラ君の夢のほうがよかったな。
「それはすまなかったな」
――げ。心の声、聞かれてる。
「ああ、聞こえているよ」
――なにか用ですか?
そこで美人は苦笑した。
いつの間にか横には、白幕童子たちがいる。
「大丈夫やで」
「せやで」
オレンジ髪の美人が言った。
「天からのメッセージです。今までの功績を認め、何を食べてもよいことにします。あなたは悪いことしないから。アメ」
――
――――・・・
そこですと目が覚めて、周りのひとが顔をのぞき込む。
サクラ君がいた。
「大丈夫か?」
「・・・はい」
「あのあとほぼ同時に、技師たちが神がかりになった。アメ姫は何を食べてもいいって」
「え?」
「ああ、天啓があったんやな」
「あ・・・ああ、はい。ありました・・・」
「うん、わかった。じゃあ俺も漁村で牛を喰う」
「え?あ、はい」
「楽しみやな」
「・・・そうですね」
少し笑ってしまった。
そのあと少し休むことになって、三人兵のコハが重力系魔法に目覚めたと聞いた。
行脚に戻って先頭として馬に乗る頃、コハが綺麗な水玉を宙に浮かせた。
コハ「綺麗な水だよ。飲んでも良いよ~」
私は笑いながら、その宙に浮く水玉に噛みついた。
周りから少し笑いがもれた。




