四十壱話 早めの出兵(しゅっぺい)
「聞くところによると、サンプルから姫様がデザインされたとか!お似合いですよ」
「そうかなぁ?」
少し腰をひねってみる。
早朝、白いドレスを身にまとい、鏡の前でおめかしをしている。
イメージの問題で、白を基調にドレスを作ることは決まっていた。
襟元や脇腹あたりの、動きやすい服を注文した。
そして、昔、王宮に仕えていたパルゼン村の婆が織ってくれたリボンを胴体に結ぶ。
これは旅に持っていくと決めていた。
そして隣国の王子フェルナルド・ゴッテスから再び求婚があった。
友達でありたい、と言っておいた。
フェルナルドはどうも、ノンセクシャルらしい。
その相談を受けていた件で人払いをしていたから、うわさがたっていた。
相談に真剣に対面した私に、フェルナルドは問題解決の協力を約束してくれた。
「僕の大切な友人。嫁に来てくれたらもっと嬉しい」
めまいが起きそうだったけど、なんとか揺らぎを止めた。
フェルナルドはとっても優しいひとだけど、なぜかそういう意味では好みじゃない。
でも一生、友達でいられたらいいな、と思っている。
もしかしたら魔女討伐で、命を落とすかもしれない。
フェルナルドには安全を確保するために、飛行船に乗っていてもらう。
それから、無事に生きて帰れたらフェエルナルドと結婚しなさいと母様に言われた。
どうも彼の人の良さを、レイン姫の両親――つまり王様とお妃様――が惚れ込んでいるらしい。
サクラ君と結婚したい胸の内は、フェルナルドにしか言っていない。
本当のお友達だと思っているから。
「もしサクラになにかあったら、私が君を嫁にするからね」
――ああ、フェルナルド・ゴッテス・・・なんて優しいひとなんだろう?
旅のための白いドレスには魔法使いの護りが編み込んであるらしい。
水色の胴体と黄色のかぎ編みフリルを使ったリボンを後ろ腰で縛る。
きゅ、っと気合いが入った気がした。
各地を見て回るに、王宮に仕える者たちからの意見を集めて参考にすることにした。
すると、『魚を食べたことがないひと』っているらしく、最近の酒粕で育った美味しい魚の缶詰を多めに持っていくことにした。
それから『ヨモギすらない』村がある、との報告も。
異世界にヨモギがあるのは意外。
ヨモギは色々と便利だから、苗を用意してもらった。
それから、クワの木とワイルドストロベリーの苗。
クワの木は、通りすがり食べてもいい場所にあったら嬉しいとの意見を参考に。
ワイルドストロベリーについては、私の独断。
莓は特別な食べもの、って言う感覚がすごくあって異世界にもあったから。
専用の黒肌の緑毛馬のタテガミにはビックリ。
そこでサクラ君と合流して、微笑みあった。
サクラ君は魔法眷属が「氷」ひとつしかない。
ただ、途方もない復讐心の冷えた心から来るその魔法は一目おかれ、優秀生と呼ばれている。
それは三人兵から風魔法の連絡で聞いていた。
フェルナルドとの結婚について話題にしようかと思ったけど、どうも雰囲気的に無理だった。
それに気づいたサクラ君が「姫」とささやいた。
「はい・・・」
「もうすぐ出発の時間です」
「あ、はい・・・」
どうもサクラ君の綺麗な翡翠色の瞳を見つめていたらしい。
彼は複雑そうな顔をしていた。
「毛色の変った者が珍しかったのでしょう・・・」
「普通に!」
「ん?」
「普通にお話したいです。路中、側にいて下さい」
「あ、はい・・・了解、です・・・」
「はい」
「はい・・・」
――
――――・・・
そして出発の時。
「「共に生きて帰ろう!」」
私とラク・フレイアと、優秀性サクラ君が息を合わせ高らかに言った。
朝の九時、快晴、ルシーナ隊二千人、出兵。




