参十九話 植物魔法サカス・サカセル
お茶の席に座って、優雅なお茶時間。
琥珀色の赤いお茶に、砂糖とレモン。
「そう言えば昔、レモンティーにミルクを入れて最悪なおもいをしたっけなぁ」
「うーわー・・・怖いなぁ」とジルバ。
「まぁ、もったいなくてなるべくは飲んだんだけどね」
用意されていたクッキーをかじって、口角が上がる。
「美味しい」
「ちょっと甘すぎませんか?」
「なら、サンドイッチのほうでいいでしょう」と同席している女衛兵。
「そうね。あ。姫様、甘いと言えば、ステビアですよ!」
「ステビア?なんだっけ??どこかで聞いたことがある気がする」
「甘味料です」
「うーん・・・何?どれくらい甘いの?」
「砂糖の約300倍です」
「それは薄めたりするの?」
「缶詰にするのに使えるものです」
「・・・缶詰?・・・まさかナイスのっ?ベリー風味はするのかしらっ?」
「ナイスの缶詰っ?聞いたことないっ」
「甘い物は嫌いだけど、ナイスが缶詰だったら兵士たち喜ぶと思います」と女衛兵。
「うんうん」
「しかし姫、問題は・・・」
「大量生産?」
「ですよねぇ。今のところ、見込みはありません・・・」
――パルゼン村の子供たちは、ナイスを森に植えていたと言っていた。
「庭にある森の敷地を使用できませんか?」
「私の権限にそれはありません」とジルバ。
「分かった。今度、申請しておきます」
――ヒョンファで解毒して、風魔法と聖魔法を混ぜて、瘴気を無効化する。
女衛兵が言った。
「そう言えば姫様、翡翠髪の兵士をご存じですか?」
「え、サクラ?」
「ご存じなんですね。彼の体質のおかげで、もうすぐ瘴気対策目薬できるらしいです」
「もしかして貴重なものなの?」
「それはそれは、貴重です。最小限しか作れません」
「最小限、って・・・」
「うわさには、二千個です」
「ひとり1個だけっ?」
「はい。軍で開発研究をしているのですが、ベテランの勘の配合のほうが効きます」
「勘の配合・・・?」
「カルテを見て、配合するんです」
「それは手間がかかりそう」
「そうなんです。この国にはもう、その技師が三人しかいません」
「三人っ?」
「翡翠髪の体質のサクラには、特別製の目薬が必要で、身体検査を入念にしています」
「人体実験じゃないよね?」
「身体検査、程度です。血液検査についても常識の範囲内だと聞いています」
「・・・なら、いいんだけど」
「大丈夫です、酷いことはきっとしていません」
「うちの国はお人好しで有名なんです」とジルバ。
「お人好し?」
「そうなんです」
――
――――・・・
後日。
魔法具として使える扇、『花波:はななみ』を国王からたまわった。
さっそく森で風魔法の練習が許されて、意識を同調させる。
すぐにそれは上手くいって、「せーのっ」と声をかけて飛ぶように扇で空中を払った。
その一陣の風は、するどく何かの大きな刃のように地面を削って爪痕を残した。
地面の分じゃないほうほうは、意識してつむじ風になって空気に溶かした。
周りにいた衛兵たちが感嘆の声をもらす。
指導役が、「素晴らしい」と採点した。
その場に同席していたフェルナルド・ゴッテスが拍手してくれている。
それを見つけて苦笑。
そのあと地面の切り口を埋める作業が行われるらしい。
そこに来て、ナイスの植林の話を出してみた。
すると兵士たちが顔を見合わせ、私を見る。
「なぜ『それ』をご存じで・・・?」
「やっぱり!森になにか成長の秘密があるのね」
フェルナルド・ゴッテスが不思議そうに首をかしげる。
「ジルバは上流階級の娘だから知ってるはずはない・・・」と兵士がぼやく。
ナイスは庶民の特別な秘密な食べ物。
上流階級が知ってからも、今のいままで大量生産は叶わなかった。
多分それは、情緒なんだろう。
パルゼン村のひたちの笑顔を思い出した。
「大量生産をしたいのっ」
「十年はかかりますよ?」と兵士のひとりが言った。
「植物魔法、どう思う?」
数秒後、兵士たちが顔を見合わせてだんだんと意を察したらしかった。
「ナイスが年中食べれるっ・・・?」
「そりゃあ無理だろ」
「ああ、保存法がなぁ」
「缶詰にしたら、どうだろうな、って・・・」と私は聞こえるようにぼやく。
「「・・・缶詰っ?」」
――
――――・・・
そこで始まったのが、植物魔法を覚えるルシーナたちの努力。
私も植物魔法を持っているから、しばらくの間、お祈りの時間で同調をはかった。
言い出しっぺの責任みたいなのを感じる。
兵士たちは民の一部、期待は高まっている・・・
失敗するわけにはいかない・・・
すっと目が覚めるようなまぶたの開き方をして、同調が少し叶った。
森に行って、植物魔法〈サカス・サカセル〉を発動。
急激に成長した樹に、ナイスが実っている。
そしてそれに習って、兵士たちの〈サカス・サカセル〉で立派な並木が出来上がっていく。
「実ってる~」
こうして砂糖水じゃなくて、ステビアのシロップでナイスの缶詰ができた。
自由同盟国にならって、缶詰はリサイクルするんだそうだ。




