参十八話 王宮の庭
「わぁ~っ、綺麗~っ、すごいなーっ」
少し高い所から王宮の庭を見渡して感動。
視線を巡らすも、全容は見えないくらいに広い。
約束していた場所に女性衛兵と共に向かう。
「あっ。姫様、こちらですよ~っ」
そう言ってお茶用のテーブルの方からやって来たさっぱりした美を持つ案内人に会う。
「あなたがジルバ?」
「はい、そうであります、姫。案内役のジルバです。よろしくです」
思わずその可愛さにほほえむ。
「よろしく、ジルバ」
ジルバが見せたいものがある、と言って、その合間にも他の植物の話をしている。
蚊を寄せ付けない植物の話になって、前世を思い出してなつかしむ。
運ばれていく『毛長もろこし』は、どうも毛の部分がお茶にすると美味。
通常のもろこしより満足感が違うんだそうだ。
なんで満足感が違うのか研究中らしい。
「それは実の部分、どうしているの?」
「え、食べていますよ。普通です」
「ほーう・・・素晴らしいなぁ」
ジルバは嬉しそうに「連れて行きたいのは莓園なんです」と言う。
「莓園・・・まさか、王族ブランド!?」
「はい。最高の莓です」
「わー、わー、す、すごいぃ。そう言えば私、姫だった~」
「姫様、大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫」
女の衛兵が「姫様は莓を食べに行くのがお好きだったことお忘れなのですか?」と言う。
「・・・え。あ、あの・・・頭を強く、打ってしまった、のだった、か」
「ああ、なるほど」
「記憶がおかしくなってる、みたいなうわさは聞いています」
「名前が「アメ」に変ったことも?」
「存じていますが、我々は基本的にあなたを『姫』と呼ぶように言いつかっています」
「もしかして、王様とお妃様から?」
「「はい。そうであります」」
「・・・はい。答えてくれてありがとう。話を戻しましょう。アメは莓が大好きです」
女の衛兵とジルバが顔を見合わせ、吹くように笑う。
「全然、違うひと」
「なんだか安心したぁ」
――
――――・・・
そのあとはわきあいあいと、女衛兵も会話に入って莓園に行いった。
ガラスハウスに、腰の高さくらいの土掘りがあって莓がわんさかしている。
「可愛いっ」
「食べてもいんですよ?」
「え・・・本当に?」
ジルバと衛兵がまた笑った。
「姫様、お好きになさっていいんですよ?」
「なんたって、姫様、ですから」
「じゃ、じゃあ・・・食べてみます・・・」
赤くて形のいいものばかりで、葉は新鮮味と荘厳を含んでいる。
口の中で弾けるように崩れていく歯ごたえに、甘酸っぱさがやってくる。
声にならない感動が鳴き声みたいになってしまった。
いくつか食べた後、ジルバと女衛兵にすすめてみた。
「自分は甘いものとすっぱいものが苦手です・・・」と女衛兵。
「私は今、案内役ですので・・・え、なに?」
「あー・・・んっ」
うながされて、莓をひとくちかじるジルバ。
「美味しいです、姫様」
「うんうん、じゃあ、他にも見て回ろうよ」
「各所にお茶ができるテーブルがありますよ」
「ほうほう」
「お疲れでは?」
「んん~・・・お茶の前に、ナイスの木を見てみたいな」
「なにも楽しくないと思いますよ?」
「なんとなく見ておきたい・・・」
「うーん・・・まぁ、姫様が望むなら」
「うん。そのあとお茶をしましょう?」
「はい、姫様」
「はい、姫様」
――
――――・・・
回収されたナイスは王室で研究対象になっている。
立派に育ったナイスの樹があって、これは百年ものらしい。
「この樹から実ったナイスを王室ではいただいています」
「他には?」
「あちらに、並木があります。ひょろいですけど」
見てみると、少し育ったナイスの木たちが畑みたいに並んでいる。
「うーん・・・あっちは、なに?」
「あ、王室領の一部となる森です」
「そちらにナイスを植えたことは?」
「前例にありません」
「うーん・・・もし植えたら、なにか問題なの?」
「えーっと・・・ナイスを?え、すいません・・・あの・・・分かりません」
「うーん、そうか~・・・試してみたいなぁ」
女衛兵が「何をですか」と確認を取る。
「森にナイスを植えてみたい」
「・・・どっひゃー」
「え?」
「あ、いえいえ・・・」
「姫、そろそろお茶の時間です」
「あ、うん。分かった。お茶にしましょう?」
「はい、姫様」




