参十六話 魔法適合テスト
魔法適合テストの視察に行ってもいいことになって、当日。
現場におもむくと、兵士たちの「おお」と言う感嘆の声が透った。
あたりはきらきらと光っている。
少し寒い・・・
兵士のひとだかりが、「名前なんて言うんだ、翡翠髪~」と言う。
――サクラ君!?
軍人の鏡と呼ばれた伝説のラクを認めた兵士たちが、きゃぴきゃぴしながら道を開けた。
その場の状況が分かった。
「サクラ君っ」
「・・・あ?」
おもむろに振り向いたのはやっぱりサクラ君で、人目を忘れ、抱きついた。
我に返ったサクラ君の数秒後の微笑。
「浮気してないからな」
「私もしてません」
泣き出した私の頭を、サクラ君がなでてくれる。
「魔法に適合した」
「うん・・・すごいです」
サクラ君の魔法属性は「氷」。
ものすごく適合したらしく、あたりは氷が大きな水晶のように張っていて、きらきらと陽の光に反射して光っている。
「サクラ」
ラク・フレイアがおもむろに近づいてくると、自然と寄り添った身体を離した。
静かにラクが言った。
「もう大丈夫、気絶して、眠ってもいい。私がいますから」
「ああ・・・ありがたい・・・」
そう言って急に力が抜けたサクラ君が倒れたのを、専用の救急担架が兵舎に運ぶ。
その部屋に行きたいと申し出て、許可が出たのは三日後。
その間に、適合テストは全体的に終わっていたらしい。
天啓がまたあって、今回は風と植物魔法の眷属の割合が少し多いと聞いた。
ふりかけおにぎりを作って、サクラ君に会いに宿舎におもむく。
――お見舞いと言ったら「お花」かしら?
それが異世界で適合するのかがちょっとまだ分からない。
まぁ、食べ物が無難なのかなって、ふりかけおにぎり持参。
平皿に2個、ラップは存在しないらしくてかけてない。
サクラ君はパルゼン村で私の衛兵をしていたから、個室にいる。
ただ簡素なベッドとローテーブルがあるくらいの内装。
――起きたらまず、水分は摂りたいだろうなぁ。
そう思ってコップを見つけ、共同の水飲み場に汲みに行く。
周りにちらほらいる兵士たちが、少し動揺している。
でも、あんまり気にしないでおこう。
部屋に戻るとサクラ君は起きていて、ベッドに腰掛けてぼうっとしていた。
「あ。サクラ君。おはようございます」
「・・・うん」
「そこに置いてあるおにぎり、食べてもいいですよ」
「水が欲しい・・・」
「あ。注いでおきました」
そう言ってコップの水を渡すと一気飲み。
ぶっきらぼうに見えるその様子に、起きたてのめまいか頭痛の印象。
「・・・これ、食べてもええのん?」
「はい」
おにぎりを手づかみしたサクラ君はそれをほおばった。
すぐに二口目、三口目とほおばって、噛む。
するとサクラ君が泣き出した。
「・・・うまい・・・」
涙を流しながら、こちらを見上げるサクラ君。
「うまいで」
「おにぎり、って言うんです」
「おにぎり・・・ええなぁ。ありがたいわ」
「よかった。三人兵とふりかけっていうものを作ったんです」
「そうなんか・・・」
1個目を食べ終わったサクラ君は、しばらく沈黙していた。
「もう1個も、サクラ君のですよ?」
「あとで・・・食べたい」
「ああ、弱らないうちに」
沈黙がしばらく続いて、首をかしげてしまう。
「どうしたんです?」
「抱きたいけど、魔女討伐せんとあかんやんけ・・・俺は兵士で。あんたは姫や」
それを聞いて、足をあながち開いて座っているサクラ君のハの字の脚の空間に、かしずくようにひざで座って、抱きついた。
驚いているサクラ君が泣いている。
「私と一緒に、まだもう少し・・・生きてほしいです」
「もう少し、ってどれくらいや?」
「分からない。もしサクラ君が死んだら、私、どうしていいのか分かりません」
「隣国の王子とは?」
「分かりません・・・今は、なにも分からない。私だって女になりたい気分ある」
サクラ君が両手で私の同体を掴んで、ひざの上に乗せた。
なんだかこちらまで泣きたくなった。
姫と、兵士の決まりが王宮で発動してる・・・。
それでも「なんとなく」をするために、手探りとキスが始まった。
「俺は絶対に、魔女を倒す・・・そして、本当の意味でお前を抱く」
サクラ君は涙声でそう言った。
・・・討伐隊に、私も参加します。
その言葉を、心の中で言ったのか、口に出したのか分からない状態だった。




