参十四話 ラクの涙の理由
聖女兼姫として、兵士よりだいぶ先に魔法の適合テストをした。
そして適合テストを受けた者たちは、たいがい眠気で倒れるらしい。
説明はむずかしいけど、眠っている間に使い方を感覚で教えてもらっている。
少なくとも、そんな感じがしている。
目覚めてそれを医師に言うと、潜在能力分、魔法は芽生えると言われた。
聖、風、結界・・・
それを活かす方法を、戦いの場だけではなく使用できないか。
それが冬の間の、私の魔法修行になった。
監修、つまり師匠はラク・フレイア。
王宮内では密かに、私とラクの恋仲のうわさがたっているらしい。
・・・サクラ君、今頃どうしてるかな?
ラクに相談すると、「彼、浮気はしてませんよ」と微笑まれる。
「魔法に適合しなかったら・・・」
「うーん、そうですね。ちょうど今日、適合テストを受けるって聞いています」
「魔女討伐隊・・・」
「私は知っていたんです」
「・・・ん?何にです?」
「あなたのおかげで、少なくともパルゼン村は救われた・・・お手紙来てましたよ」
「六人兵からっ?今、読みたいっ」
【 奇跡芋が安全だって分かったから、王宮に一部献上するよ 】
「わぁー、パルゼン芋!食べたい、食べたいっ。そうだ、タルトにしたら美味しかもっ」
高揚した気分で勢いよくラクに振り向くと、ラクは静かに泣いていた。
「・・・あなたのことを、巻き込みたくない。愛しているから・・・」
「・・・ラック?」
「ラックでいいです。僕が泣いたの秘密にしておいて下さい」
「どうして泣いてるんです?わけが分からない」
「いいんです。前の姫を思い出したんです。全然違う。あなたはアメ」
「はい。アメです」
「それでいいんです。僕はあなたの身体を知っているけど、今は他人です」
「・・・ちょっとショック。お友達か友人に、なれませんか」
「意外だ。私は、私だって男だと言いたいんです。あなたに」
ぱちくりとまばたきをした。
「ラック・・・?あなたが男性であることは気づいてましたよ??」
泣きながら苦笑をしたラクは、差し出したハンカチで涙を拭いて鼻を噛んだ。
そしてそのハンカチを部屋にいる侍女に渡して、気持ちを落ち着けているようだった。
ラクがこちらを見る。
「わざと知らないふりをしましたね?」
「あはは」
「笑ってごまかすのか」
「知らなーい。友達みたいに一緒にすごしたーい」
「じゃあそれでもいいです。『友達みたいなの』で」
「じゃあ、それがいい」
「・・・そう言えば・・・おにぎりについて調べてみたんです」
「え?あ、はい。ここらに『おにりぎ』って・・・」
「ない、んです」
「ない、んだっ?」
「炊いた米を手の圧縮で三角にする食べ物、ってシェフたち困っていました」
「・・・んん~・・・これは―・・・」
「お米はあるんですよ?」
「ラク、時間があるなら一緒に厨房に行きませんか?」
「何をする気なんです?」
「おにぎりって必要だと思うんです。なんだか・・・勘、みたいなもの」
「予感?」
「はい・・・これは必要な情報だぞ、って光の気持ちが言ってる気がするんです」
「圧縮したらいいんですね?炊いたお米を?三角に?」
「うーん・・・そう言えばラックは料理ができない・・・」
「ええ、ええ」
「おにぎって・・・料理なのか」
「美味しいんですか?べちょべちょしてそうですけど」
「ええっ?握りつぶすわけじゃないですよっ?」
「ああ、そうなんだ?」
「ラク!」
「はい?」
「厨房に向かいましょう?」
「それでもいいんですが・・・あなたの身体の相性は抜群で」
「はぁ~、もう、うるさい、うるさい」
「別にいいんですけどね、サフとルビとコハとのうわさもたっているんですよ」
「三人兵と?なんで??」
「知りません。一応あいつらも『昔馴染み』なんですけどね」
「・・・はぁっ!?」
「なに?」
「ありえない!わけが分からない。王宮って、そんなんなの?」
部屋にいた執事のひとりを見ると、明確にかぶりを振る。
「存じません」
「おにぎり、食べたいですか?」
「聞くに今のところイヤです」
「そうなんだ・・・」
ラク・フレイアがぼやいた。
「僕はアメに、恋をしている・・・レインにではなく、アメ、に・・・」
――好きになってくれて、ありがとう。




