二十九話 王宮
続く立派な馬車の列に、荷物を引く牛。
うさわはすでに立っているのかもしれなくて、整備された道に入った。
行き交う人々が好奇の目で通りすがる馬車を見ている情景が窓越しに流れてく。
遠目から見え始めた王宮。
西洋風のシャトルとかがあるお城だ。
川が近くにあって、城には堀と鎖で開閉する跳ね橋がある。
跳ね橋はすでに開いていて、門番たちが会釈している。
ここで降りるのかな、と思ったら一旦の検査だった。
更に門を抜けるとそこには美しい広大な庭があって、わぁ、と関心の声が出た。
――異世界にも庭に噴水とかあるんだ?口に出したら「は?」とか言われそう。
まだ寒いのに、庭に緑が茂ってる。
馬の形に形成された茂みに感動したら、「サクラをご存じない?」とぼやかれた。
一緒に馬車に乗っている衛兵に振り向き、「サクラ君をご存じなんですか?」と聞く。
「・・・ん?」
「ん?」
「・・・ん?すいません、分かりません」
「え?あ、はい。え?サクラ君の話、しませんでした?」
「いえ、分かりません、自分は馬の話をしました」
「ん?」
するともうひとりが、「王と奥方のお迎えです」と声を透した。
一気に緊張してきて、城の屋内へと続く階段の前にふたりの夫婦らしき姿。
長い金髪をコテで巻いている若い女性。
それから金髪に冠をつけている・・・もしかしたら、王様かもしれない男性。
馬車から降りて、そして「歓迎するよアメ」とふたりにいきなりハグされた。
「わわわ」
側仕えみたいなリストを持っている執事が、「王様と王妃様との対面です」と言う。
――ふたりとも若いな。そう言えば『娘』は『姫』で『別人』。
「外は寒いだろう?さささ、中に入ろうね」
ものすごく優しそうな王様と、信じがたいくらい美人な王妃。
「ラーメン、すごく美味しかったわ」
――そう言えば、王妃は美味しいものを独り占めする癖があるひと、だっけ?
一旦、自室に案内される。
不安なのでサクラ君を指名して部屋に呼びたいと言うと、意外がられた。
少ししてサクラ君がやって来て、ソファに座っていた私の側に立つ。
「ご一緒しても?」
「え、あはい。どうぞ」
「はい」
「緊張しているんですか?」
――あれ?こっちもなんだか敬語。
「とても緊張しています。失礼します」
「・・・サクラ君ですよね?」
うなずくサクラ君。
翡翠色の髪に、翡翠色の虹彩。
「何かご用で?」
「あ、うん。緑の馬を庭で見たのですけど」
「「はっ?」」
「え?」
サクラ君だけじゃなく、衛兵たちまで驚いている。
「ん?庭の垣根アートで」
「あ、ああ。びっくりしたぁ・・・自分の名前は緑毛馬から由来です」
「みどりげうま・・・?」
「タテガミが天然の緑色で、秋から冬にかけては紅葉して赤茶色になるんです」
「はぁ!?なにそれ、面白いっ。春になったら?」
「そりゃ、緑色に戻ります」
「光合成をしているってことですか?」
「いや、一説にあるんですが、緑色の毛が生まれつきなんで、俺には分かりません」
「珍しいの?緑毛馬って?」
「それはもう」
「そうなのか・・・見てみたいな」
「春になったら見れると思います」
「王宮にいるんですか?」
部屋の衛兵たちのほうに振り向くと、「はい、おりますよ」と返事があった。
「どんな緑色なんだろう?」
部屋の兵士全員が「ほう」と小さく関心した。
「美しいんですよ。サクラって言う品種です」
「・・・なるほど」
春が来るのが、ちょっとだけ楽しみ。




