二十七話 木漏れ日
求婚してきたのは『フェルナルド・ゴッテス』と言う30歳の男。
生まれは高貴、容姿端麗、経済力も抜群。
だとしたら、女に困ることもないだろう、と思った。
なのでラク神父に相談をして、お断りの返事を書いてもらった。
なんせ彼は、今、冷戦状態の『隣国』のひと。
もしかしたら何かを探りに手紙を寄越したのかもしれなかった。
ラク神父もそれを予期したと言って、少し表情を硬くした。
お断りの手紙をラク神父が送ってから、【しばらく間を開ける】と返事。
その通り、手紙はしばらく来なかった。
そしていつの間にか、その手紙のことを忘れていた。
ラク神父が「気にすることはない」と言ってくれたから。
季節は冬だけど、ここはあながち温暖な気候。
でも吹いてくる風は少し涼しいを通り越している。
村で大好評の麦芽クルミちぎりパンを焼いた。
それから塩水で煮たあと蒸かした奇跡芋の皮を剥いて潰したものに、砕いたアーモンドを混ぜたやつは妊婦さんに大好評。
人参嫌い克服依頼のために、キャロットマフィンを焼いて、若い葉は天ぷらにした。
毎日がキラキラとしていて美しい。
そう言えばこの世界では、そういうのを「美々(びび)」って言うらしい。
使い方は、おおむね「美々な日」。
とっても素敵な言葉だと思う。
村で畑仕事をしている面々(めんめん)に差し入れをして、一緒に休憩。
風は心地良いし、木漏れ日が綺麗。
黄色いお茶を淹れてもらって、素敵な香りだな、と思う。
その茶葉そのものの香りらしく、自然ってすごいなぁと思う。
適量の塩をふりかけたゆでたまごも好評。
あと、簡単なサンドイッチとパン耳のラスクも。
畑の護衛をしていたサクラ君も同席していて、「うまい」と言ってくれた。
そのあとはラク神父の青空教室の様子を見に行って、こちらにも差し入れ。
ココアクッキーと牛乳。
子供たち大喜び。
ラク神父もそのはしゃぎぶりに楽しそう。
「「アメちゃん、ありがとう」」
「感謝します、アメ」
そうそう、そう言えば「レイン姫」じゃなくて「アメちゃん」って呼ばれ方が普通になった。
それは村の極秘。
「なんやあれっ?」
サクラ君がそう叫んで、抜刀してかまえる。
周りがざわついて、それを見つけて悲鳴をあげたり息を呑んだりした。
「め、目玉のオバケ・・・!?」
ラク神父が「これは偵察用のものですよ」と声を抑えて言う。
「切っても大丈夫なんけ!?」とサクラ君。
「協力しますっ」とラク神父。
大地を蹴って飛翔したサクラ君は、宙に浮いている翼と尾のついた目玉を切った。
そしてその瞬間、ラク神父が指を鳴らし魔法が発動。
炎魔法で焼かれたその魔物らしきものは、灰になって風に消えた。
「もう大丈夫です。サクラ、念のため風呂に入っておきなさい」
「了解」
「あの、サクラ君・・・」
「大丈夫や、今、近寄るな。体液が跳ねた。こりゃ少し毒性がある」
「えっ?」
「大丈夫や、わしは常人より毒に少し強い」
そして少しして、ゴッテスから手紙は来た。
【素晴らしい剣士をお持ちのようですね。
翡翠の髪は初めて見た。
その男と恋仲なのですね?
それでも言う。
我からの求婚を受けられよ】
村で相談した結果、返事を返すことにした。
【何が目的なの?】
応えは案外と早く来た。
【こちらの国とあなたの国の和平のためです】
【戦いは望んでいません。そしてあなたとの結婚も】
そう返すと、手紙は来なくなった。




