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二十六話 手紙


 王宮への不満、みたいなものを感じる。


 どっちかっていうと前世が庶民しょみんでしたので、この空気、分からなくもない。


 ただ、今の立場は聖女兼姫。


 民から寄せられる書の相談なんかを、少しずつしている。


 まず、王宮の様子が知りたい、というものがいくつかあった。

 

 これはラク神父に相談したら、こたえなくていい、と割り切られた。



 王宮から出されてもいい思いをしてるんだろう、みたいな手紙が混じっていた。


 それは、ラク神父が魔法で燃やした。


 そう言えばラク神父は、炎魔法の能力者らしい。


 手の中でくしゃりとつぶしたその手紙を魔法で燃やして灰にした。


 こちらを見て、「あなたはイメージで見られがちです」と言われて少し安心。



 いつも綺麗なドレスを着て、微笑みをたたえて、なに不自由なく食事をする。


 そんな姫としてのイメージが、私にも少しある。



 もしかして隣国の姫さまたちは、とか思ったりもしたけど・・・


 そんなこと、手紙にしたら事が複雑になりそう。



 サクラ君が、王宮がある程度、目を通してあるんじゃないのかと少し不機嫌。



「おそらくテストのひとつですね」とラク神父。


「テスト?」


「あなたがどれくらい周りの人間に人脈じんみゃくを持つ素質そしつを持っているかどうか」


「なるほど・・・私、かなり恵まれていると思います」


「ほう」


 壁に寄りかかって腕を組んでいたサクラ君が小さく何度もうなずく。


「お前さんはアメでいいねん。表沙汰おもてざた、レイン姫や」


「・・・ありがとう!」


 ラク神父が微笑みながら何度か小さくうなずいた。


 とても機嫌がよさそうに、「王宮にこのことを報告しておきます」と部屋を出て行く。



 大きなため息を吐いて、虚脱きょだつしてテーブルにした。


「どないしてん?」


「レイン姫って、国中で有名なんでしょうか?」


「はぁ!?」


 苦笑しながら顔の向きを変えて、サクラ君を見る。


「その所業しょぎょうみたいなの?」


「違うわ。姫、っていうイメージがレインの母のせいで悪いんじゃ」


「・・・ってことは、まだ28歳のレインのお母様ですか?」


「そうじゃ。美味しいものを牛耳きゅうじくせがあるねん」


「なぜ?」


 サクラ君を見ながら体勢を戻して、髪の毛を肩のうしろに回す。


「あんたさんは、どないなん?」


「美味しいものはできるだけ皆で食べたいひとですよ、わたし」


 何かに弾かれたようにサクラ君が驚いた。


「ママ・・・」



「ん?」



「ママ・・・」


「サクラ君?」


「ママと同じこと言った・・・」


「サクラ君?」


 はっと我に返ったサクラ君が少し慌てていた。


 耳が真っ赤だ。


「な、なんでもないぃ」


「・・・へ?なに?」


「なんでもない。なおしただけや」



 少し不思議な感じがしたんだけど、この日から、幸運に導く光が見えるようになった。


 夢の中で、真っ白な光の中で声がした。


 

 頑張っていますね。


 あなたは環境に恵まれるなら才能を発揮はっきできる存在。


 おおいに活躍かつやくしなさい。


 見守っています。


 ・・・・・・それから、助言をしておきましょう。

 

 いている相手に手紙を書いてみるのも、愛情表現のひとつですよ。



 そこで目が覚めて、朝方、サクラ君に恋文こいぶみを書くことにした。


 ラク神父と三人兵と六人兵に普段のお礼の手紙もいいかもしれない。



 そう言えば、前に確認してあったんだった。


 引き出しに作りかけがある。


 この国には開けると立体的に飛び出す仕掛けのあるメッセージカードがない。


 なので『ポップアップカード』を手作りしてみた。


 お花が咲いてる感じのを。


 

 気づいたら朝食の時間を忘れていて、ラク神父が呼びに来てくれた。


 全部完成したら同じ日に渡したほうがいいだろう、と思った。


 なのであわてて作りかけのカードを引き出しに戻し、「着替え中です」と言った。


「朝ご飯、できてますからね~」


「すぐ着替えます~」



 ――

 ――――・・・


「はい、サクラ君とラク神父と三人兵と六人兵に」

 


 完成したカードを開けて、皆が驚いていた。


 本当に嬉しそうにしてくれていて、苦労してよかったと思った。


「一生、大事にする!!」


「「うんっ」」


 

 手紙の相談について、思いついたことがあった。


 それはサクラ君に協力してもらって、ポップアップカードを・・・


 やまいに伏していると言った二十代前半の女性に贈ったのがきっかけだった。


 

 村に郵便鳥さんを通じて、熱い感謝の手紙が遺族いぞくから来ていた。


【 姫さまのおかげで、いい葬式ができました 】


 そんな内容を、代筆屋に頼んだらしく・・・


 その事情を代筆屋が感動して周りに話したらうわさになったらしかった。


 姫は不思議な魔法が使えるらしい、と。


 それは病の苦しみを遠ざけてくれるらしい、と。


 たったひとりの民のために、時間を裂いて下さった。


 これが事実なり、と感動の声は少しずつ『姫』を通して『王宮』への好印象に。


 

 このまま今の状態を続けて―・・・


 そんな風に思っていたところだった。


 

 高級な封をしてある手紙に、少し動揺した。


【 わたくしの求婚きゅうこんけられよ 】


 それは貴族と王族の混血である美青年で有名な男からのものだった。

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