二十壱話 異世界ラーメン 其の弐
里では、「タニシ」を出汁に麺を食べることはあったと老人のひとりが言った。
「タニシ、って・・・食べられるんですかっ?」
「うん。美味しいよ」
「そうなんだ・・・」
「「「姫、早く、来いっ!!!」」」と三人兵。
けっこう、眠ったなぁ。
まだ眠りたいない気はするけど・・・
――
――――・・・
麺は辛いの常識を逸した、出汁勝負のラーメン!!
簡易生麺を約1分30秒湯がいてる間に、別に作ったスープを器に混ぜて・・・
ネギを刻んで、味玉を糸で切って・・・
茹であがった麺を平らに盛りつけて、具をのせる。
チャーシューは作れない・・・
作り方を知らない・・・
ああ、チャーシューを入れたかった!!
あと、海苔とかメンマとか。
でも、出汁を採った鶏肉の味玉つゆ煮込みは我ながら天才的!!
出汁を採った昆布は前世の記憶から市販の鰹だしと料理酒と醤油でシンプルな昆布だけのクーブイリチーっていう炒め物に。
鰹だしはパウダーで、自由同盟国からの輸入らしい。
あさりはペペロンチーノにして、貝殻はたまごの殻と共に肥料に使う予定。
最初の一口目は、ラク神父が食べることになった。
「どう?どう?どう?」
食い込み気味に聞いた私に、ラク神父は数秒沈黙をして親指を立てた。
そのままおもむろにふたくちめをすする。
「待ってよ、みんなで味見するんじゃないの!?」
無言でかぶりをふるラク神父。
皆がなごやかな中、三人兵が動揺している。
「「「こんなパーパー、はじめて見た」」」
「そうなんだ?」
三人兵が私に抱きついた。
「「「ありがとう、アメ!!!」」」
「・・・へ?」
「「「ありがとうっ。事情は聞かないでくれっ」」」
「はぁ~・・・美味しかったぁ。もう、死んでもいい」
「はぁ!?」
「あ。ビックリしたぁ。久しぶりに美味しいが新しいです。城に申請します」
「皆、喜んでくれるでしょうか?」
「うーん・・・製法がなぁ。どうやって麺にねりこむか粉末にするか・・・」
「「「だから風魔法だよ」」」と三人兵。
「よくは分からないけど、素敵な気分だ。城に報告する」
「この国の文明について、今度、お話をしてほしいです」
「分かりました。それでいいんですよ、姫」
席からすくりと立ち上がったラク神父は、鼻歌をくちづさみながら自室に戻った。
「そうとう美味しいのだろうな」
「ラク神父のあの様子、そうとううまかろう」
「食してみたいな」
「あんなに煮込んだらヤバくない?」
「出汁が出きってるんでない?」
「まず、香りがいいね」
六人の衛兵を『六人兵士』と言って、クレナイ、ムラサキ、ダイダイ、ヤマブキ、アオ、ミドリ、と言う。
同じ孤児院で育った六人らしい。
幼馴染みとか、きょうだいみたいな感じの間柄なのかもしれない。
「さぁ、日頃の頑張りにご褒美です!めしあがれっ」
『すする』は普通にあるのか。
いただきます、って言えよ!!
「うんまーーーー!!」
ちょっとビックリ。
「これはもはや神の食べ物かもしれない」
なんか怖い。
その言い方、なんか怖い。
とりあえず六人兵士と三人兵士と一緒に、食事をすませた。
「これからは普通に話す」
「「「うん」」」
なんだか心を開いてくれた!!
嬉しい!!
そのあと村のひとたちにも小ぶりな器で、ってことになるけど、望む人に配給。
結局、ほぼ全員が食べて、そのあと「作り方を教えてくれ」と要望殺到。
村人たちに三人兵が対応してくれて、なかなか気は静まったらしい。
「なんて良い思いをしたんだろう?」
うんうん。
「これで、もう、死んでも良い!」」
だから、あの~・・・
異世界って美味しいもの食べたらそうなるのか1?
ラーメン・・・リアル~。
「もっと美味しいものを皆で食べましょうよ!」
私はそう言うと、村人たちはひざをついて泣き出した。
あなたは本当によくしてくれる、と、感動の涙だった。
「聖女アメ、あなたの存在に感謝します」
無邪気に小さな子供達が言った。
「いっつも生まれてきてくれてありがとうって言ってくれてありがとう。アメちゃんも、うまれてきてくれて、ありがとーーー!!」
泣き出した私をお姫様だっこをする付き添いのサクラ君。
もう号泣。
ハンカチを取り出して鼻をかんだけど、そんなことするの初めて。
サクラ君は私の自室のベッドに私を横に泣かせると、自分も隣に寝転んだ。
「今日はもう眠り」
「勝手にしないでくだしさいよ?」
「そう言えば・・・なんで隣に眠ってること怒らへんのん?」
「サクラ君だから、です!!」
「ほ~・・・そうなんけ」
「そろそろ何か、進展、ありませんかっ?」
ぎょっとしたサクラ君が私の顔をのぞきこむ。
綺麗な目に見つめられている。
「ほんまに、したいんけ?」
数秒の間。
そうだった、私は聖女で、魔女との戦いが控えている。
「も・・もし、魔女を倒したら」
またたくサクラ君。
「まさか、討伐隊に同行する気やの?」
「はい」
「分かったで。なんもせぇへん」
「え?」
そう言ってサクラ君は、いきなり私の胸をわしづかみした。
「なんとなくなら・・・ええか?」
「か、勝手にするな!!」
笑ったサクラ君が唇にキスを贈って、ベッドに横になった。
「俺は人種として思考回路が違うからな」
すぐに寝息をたてはじめる。
・・・寝顔可愛い!!
すぐにでも・・・魔女を倒したい。




