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十四話 君の色に染めて


 メロリンコルンの種は蒸かしてから炒ると、マフィンの生地が薄いピンクになる。


 そこらへんから、料理に使われると思っていた種は染色に使われだした。


 うちの村でも、メロリンコルン染めが流行しだした。


 特にハンカチや手拭い、ベバロと言う万能の長い布を染めるのが人気。


 布をヒモで縛って染色すると、縛った部分は染まらずに柄になる。


 楽しそうに桶に用意されたメロリンコルンの種の液体に布を浸す子供たち。


 木と木の間にヒモを通して、洗濯ばさみで留めている。


 洗濯ばさみってあるんだね!


 そう言えばあるとなかなか便利なのに気づいた。


 普段、ポテチとか食べ残したら袋とかを洗濯ばさみで留めていたっけ。


 ああ、そう言えばポテチ食べたい・・・


 ラク神父に相談してみようっと。



 ――

 ――――・・・


 わー、わー、すっごいことになったーぁ♡


 ポテチと共に、イモッチみたいなのできたー!!


 やっほーい!!


 村のひとたちと一緒に大興奮♡


 甘めの芋のチップス~。


 名前考えてくれって言われてどうしよう?


 ・・・イモッチでいいか!!


 ――――・・・

 ――


 うーーわーーー!!

 

 イモッチ、多数決で正式名称になったーー!!


『聖女の愛する芋料理、イモッチ』って勝手に謳い文句にして商いしてるー!!


 喜んでくれるなら・・・それでいいやーーー!!


 今回はそれでいいもんねーー!!


 

「うっま!?信じられへん・・・うますぎる」



 そんなこと言っているサクラ君はポテチとイモッチ両方を同時に口の中に入れている。


 ははは。子供っぽいひと♪



 三人兵が油で揚げる役割を炊き出し式、当日なんだけど・・・


 揚げるわ揚げるわ、良い天気だけど熱そうで大変そう。


 しかも側にるラク神父が、油切り終わったら、ある程度つまみ食べている。


 サクラ君がそれを見て・・・「ラク神父」と声をかけた。



「ん?遠慮するつもりはありませんよ?」


「違うねん。ポテチとイモッチを両方同時に口に入れるんや」


「きっと最高ですね」



 和気あいあいとしている所、今日はサクラ君、長い髪を後頭部に高く結ってある。

 

 お客様が来るって聞いてるけど、その件と何か関係あるのかな?


 たしか、『しろまくどうじ』?だっけ??


 こちらの世界にも、礼儀として髪型にある程度決まりがあるらしいのは本で読んだ。


 ラク神父に確認ととったら、前世の日本ほどではないな、と思う。


 そう言えばここは『王国』だし、私ってその『姫』!?


 うーわー・・・忘れてた。


 お姫様ってポテチとかイモッチとかにテンション上げたらいけないのかな?


 だとしたら面倒くさい。


 この村で暮らしていて、幸せに生きてることの再確認。



「ラック!!子供たちの分、なくなるでしょうに!!」


「そうですよ、ラック!!」


「ラーック!!」



 三人兵の注意むなしく、けっこうな量のポテチとイモッチ無くなっていく。


 それから三人兵には、ラク神父って「ラック」って呼ばれているらしい。


 親愛を込めたニックネームらしい。


 三人兵は、他の誰にもラク神父を「ラック」と呼ぶのを許さないらしい。


 ちょっと呼んでみたいのに、残念だなぁ。



「はぁ~・・・食べた、食べた。久しぶりにお腹がいっぱいです」


 満足そうにお腹をさするラク神父がこちらの視線に気づいて苦笑する。



 少しお時間いいですか、と言われてふたりきりで木陰に入る。



「どうされたんです?」


「・・・ん~・・・ちょっと質問があって」


「え?何でしょう?」



 身長差がけっこうあるので、見上げる形になる。


 ラク神父は真剣な顔をしていた。



「あなたがこちらに来る前に体験したことを聞いて、三人兵は泣きましたよね?」


「はい・・・」


「あなたはそれを―・・・どう、思いましたか?」


「え」



 数秒の間があって、「少し時間を下さい」と言って、視線を足元に下げた。


 そして体感数十秒後、言葉を紡げそうな気がした。


 

「その涙も鼻水も、キラキラしてて・・・綺麗だなぁ、って思いました」



 数秒の、間。



「ふぅん・・・」



 ――なに、ふぅん、って?ヤバい。ドキドキするっ。怖いっ。



 ラク神父は袖の中に手を入れて、何かを取り出した。



 ――まさか、銃とか刃物とか!?



 ラク神父は小さな箱を手渡ししてくれた。


 開けてみると、そこには『聖女の瞳』と『聖女の涙』をあしらったネックレス。



「綺麗・・・」


「差し上げます。約束通り」



「で、でもっ・・・わたしはレイン姫じゃないしっ」


「二度目の・・・人生を祝して」



「えっ・・・いいんですかっ?」


「胸元あたりに石が来るように頼んだのですが・・・試しに今、試着しても?」



「あ、はい」


「手伝います」



 私は長い金色に近いベージュ色の髪・・・蜜色みついろかも?


 試着するために前方から腕を回されて、ポテチとイモッチの香りを意識してしまう。


 揚げてる側にいたから、香りが服に移っていた。


 教会の清めの香の香りも相まって、安心感がすごい。



 ――多分、このひとは私を犯さない。



 水色の楕円の核に、小さな透明の石が囲ってある。


 耳にはサクラ君が贈ってくれたピアスをしていた。



「サクラと相談して、合わせてもいいデザインしたんですよ」


「あ、え、あの、ありがとうですっ!!」


「いえいえ」



 ――ああ、ラク神父の笑い方好きだなぁ。



 

「ラク神父、聖女様っ、来たよっ、お客っっ」



 急いで声を通したのはヤホン君。


 なぜだか顔色が悪く見えた。




「どうしたの?」


「来たか・・・アメ、あなたは同席しないほうがいいかもしれない」


「え?いえ、気になります」



 ラク神父が足早で、着いていくとそこには真っ白な三つ目の牛の牛車ぎっしゃ


 中にいたのであろう白い棍棒を持った、姿のそっくりなふたり。


 麗しい顔をしているけど、何もかもが白くて少し怖い。


 そう言えば、「あやかし」だって言っていた。


 前世ではテレビアニメとかで「あやかし」って言うフレーズは知ってたけど・・・


 実際に見たことなんてなかったなぁ・・・



「サクラ君っ?」



 ザリッと音がした。


 サクラ君は、高く縛った長髪を、小太刀こだちで切り上げた。


 縛った部分でまとまった翡翠色の髪の毛を彼らに渡し、白幕童子たちは喜んだ。



「「これでぇ、どうにかぁ、なるやもなぁ?けったいやわぁ」」



 白い直衣のうし型のシャツみたいのと七分丈ズボンに白いローブーツ?


 肌も虹彩も髪の毛も真っ白。


 双子なのか、ふたりの顔、そっくり!!



 ――ファッショナブル・・・ 



 そう心の中でぼやいてみて、はっとした。



「まさか、お城からの命令なんですかっ?サクラ君っ?」


「気にするな。ちょうどうとましいと思っててん。髪の毛洗う時間、短くなるやろ」


「はぁっ!?何を強がってっ・・・」



 その先を言わせないように、サクラ君は皆の前で私の唇にキスを贈った。



「そうや。お城の古代兵器発動のための代価に切った。お礼はベバロでいいで?」


「メロリンコルン染めの?」



「そうや」


「頑張りますっ」



 ・・・と言うわけで、長い布に柄を作るべく前世を思い出してみる。


 そうだ、テレビで観たことあるけど、糸で縛ってみようっと。


 

 ――――・・・

 ――


 仕上がりに周りもびっくり。


 サクラ君は私が贈ったメロリンコルン染めのベバロを頭に巻いて、ご機嫌だ。



 わたし・・・自分でも不思議なくらい、彼の愛に染まりたいです。

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