十壱話 宝石よりも価値のある時間
サフ、ルビ、コハのことを「三人兵」って私が呼んでいるのは書いてあったっけ?
三人兵が持ってきた話って言うのは、「デザイン」。
なんのか、って言うと、アクセサリーのデザイン!!
やっぱり『聖女の瞳』と『聖女の涙』って宝石らしい。
普段は原石をそのまま献上していたんだけど、私の絵をみて惚れたひとがいるって。
それがきっかけで、『聖女の瞳』と『聖女の涙』を使ったデザインを頼まれた。
前世で落書き程度だけど絵が好きだった私。
なんて誉れ高いんだろう?
ドキドキしてる。
わくわくもしてる。
デザインする紙は単体で、上質。
まるでコピー用紙みたい。
なつかしいなぁ・・・基本的にイラストなんかはコピー用紙に描いていた。
でも、渡されたのはペン。
ペン画はなかなかしたことがない。
シャーペン画がどっちかって言うと手軽で好きだった。
そう言えば絵の具の肌色がなくなった話を、両親は案外と意外がっていたっけ。
祖父にからかわれて、「日焼け肌色版」があるもんだと思っていた。
そんな話をしながら前世の知識で、基本的な「宝石カット」の図を描いてみた。
三人兵士が「すっげぇ絵がうまいじゃねぇか」と関心している。
なんだか嬉しいな。
サクラ君とラク神父は何かを話していたけど、基本系の図を見て嬉しそうにした。
ラク神父が「私はネックレスを大粒で作ってみたいです」と言った。
サクラ君は「俺はこぶりなやつがいいんだが、両方使って欲しい」と言う。
個人的に注文するものだから、デザイン画が必要らしい。
とりあえず要望になるべく応えるべく、宝石のサンプルを見ながら図を描く。
「あ。これと、これを・・・合わせたいねん」
「何を作りたいんですか?」
「耳飾りや。お姫さんは耳にピアス穴開いてるやろ」
「えっ・・・そう言えば意外だった。魔除けとかの意味でしょうか?」
室内がしーんとして数秒後、ラク神父が「さぁ。続けましょう」と言う。
どうもあとで聞くに、王宮では普通にピアスがあるらしい。
ただ、消毒のしすぎで少し炎症を起こしたからって、呪いだと騒いだらしい。
うーん・・・レイン姫ってどんなひとなのか一言二言でまだ思いつかないや。
あ。そうだった。デザイン。
私が描いた基本系の図から選ぶ形で、自分たちも理想を描くと言ってお絵かき時間。
デザイン画はイメージ画でもいんだそうだ。
「お姫さんは、どないなピアスがいいのん?あんたさんに贈りたいんやけど?」
一生懸命に絵を描いているサクラ君の言葉と横顔に、ふと微笑してしまう。
「カタピがいいです」
「ん?どういう意味?」
「片方の耳だけにしか身につけない耳飾りです」
「・・・ほーぅ・・・右、左、どっちや?」
「え、何か意味合いがあったりしますか?同性愛的な?」
「は?」
その場にいたラク神父まで意外そうな顔で驚いていた。
「同性愛の証なんですか?カタピというやつ??向こう側で??」
「えーっと・・・うん。そういう場合もあります。むしろ違うよ、って意味で」
「ほう、ほんだらカタピを考えるで」とサクラ君が再び手元に視線を戻す。
「・・・ちょっとだけ、デザイン、見てもいいですか?」
「イヤじゃ」
「ああ、そうなんだ・・・」
「楽しみにしておきぃ」
「ええ、はい。ありがとう」
「もらってから言え」
「これ、サクラ君。少しお口が悪いですよ」とラク神父は言う。
「すんません・・・」
「うんうん」
そう言うと、ラク神父も、片手にペンを持ち紙に図を描くのに夢中になっている。
三人兵士は「いつか宝石贈りたくなるような女に出会いたい」の話をしている。
「そう言えば、ラク神父はお城で私の・・・いや、レイン姫の恋人だったんだよね?」
「そうですよ~。三人兵、話してあげなさい」
「「「はいはーい」」」
どうも話に聞くに、赤子だった三人は売られそうになっている所をラク神父に買われた。
あ、当時は『軍人ラク・フレイア』か。
その代金と養育費のために、お城で「語り部」なんかをしていたらしい。
なんせざっくり150歳。
色々とあったんだろうその半生は、貴重な資料になったらしい。
そしてレイン姫と恋仲になった。
三人兵は年上で、そして命を助けてくれた恩人にしか仕えない頭らしい。
なので舎弟兵って呼ばれている。
「私も舎弟兵って呼んだほうがいいでしょうか?」
「ん?舎弟兵でも三人兵でもどっちでもいい。ラクと一緒にいられれば」
「あ。うん。臨機応変にします」
「「「それはいいね」」」
水色の宝石『聖女の瞳』と、透明な宝石『聖女の涙』。
私の目は水色。
ちなみに髪の毛は金髪に近いベージュ系だ。
そう言えば前世では、「必要だったら金髪生えてくる」とか逸話があったなぁ。
それを言うと室内に笑いがこぼれた。
「案外と可愛いな、向こう側」と青い目のサフが言う。
「黒髪と金髪しか、向こう側にはいないってこと??」とルビ。
「違います。黒も金もいるけど、赤毛とかもいます。染めてるひとも色々」
「眼の色とかは?」とコハ。
「んん~・・・金色の虹彩をしているひとがいるのは知ってるけど」
「「「金色??」」」
「こちらでは?」
「「「珍しい」」」
「そうなんだ・・・」
「よっし、でーきたっ」
そう言ってペンを置いて紙を片手に持ち、サクラ君がさっそく届けに行って来ると退室した。
「誰に届けるんです?」
「「「飾師」」」
「そんな言い方があるんだ?知らなかった・・・仲介人とかいますか?」
「「「飾師が仲介人」」」
「ああ・・・なるほど。作るのは?」
「「「飾り鍛冶」」」
「かざりかじ・・・精緻な加工とかもしてる系ですか?」
「「「ゴブリン」」」
「なるほど、アクセサリーを作るのに代価、必要ですか?」
「あの~・・・どうしてそんなに何の話にも質問できるの?」とラク神父。
「えっ。すいませんっ。ウザかったですかっ?」
「いえ。すごい勉強をしてきたのかなって。普通、宝石の図なんて描きませんよ?」
「そうなんだ?なんだか意外・・・」
「さて、私もデザインを終えたので退室しますよ。三人兵と浮気しちゃダメですからね」
「そんなことするわけないでしょうに!」
「「「ん?」」」
「え、なにっ?」
「「「ううん」」」
「・・・え?」
「「「ううん」」」
「ああ、なんだ。ビックリした。からかわれたのか」
サクラ君とラク神父が戻って来た。
「飾師、ぎりぎり村から出発する所だった」
「間に合ってよかったです」
「あーあ・・・私も何かデザインから飾り作って、皆に贈りたいな」
「「「ほーう」」」
「ん?」
「「「身体とか?」」」
「そんなわけないでしょうに」
「「「別人になってよかった」」」
「なんのこと?」
ラク神父とサクラ君も三人兵に混じって言った。
「『気づいても気にするな』」




