07 ノザンは自分の未来の為に、リリーを諦める。
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――ノザンside――
嗚呼、とても困ったことになった。
どうせライカでは跡など継げぬと思っていたら、降ってわいたローザンヌ・フォルデア公爵令嬢――筋肉ダルマとの婚約だ。
俺がローザンヌに対してアレコレ言ってたいのを両親も祖父母も知ってた。
学校の事など親にはバレないと思っていたのに、リリーとの密会までバレていた。
これが決定打で、廃嫡とまで言われてしまったのだ……。
「はぁ……」
「どうしたノザン」
「ノシュか……」
「暗い顔をして何かあったのか?」
ノシュ・ファボレ伯爵令息。
親は王室騎士団で隊長をしており、彼も剣術はとても上手い。
ローザンヌの足元にも及ばないが……出来る運動系だ。
彼もまたEランクの底辺にいる訳だが、親がとても煩いらしい。
煩わしそうにしているが、長男なので跡継ぎは自分だと信じて疑っていない。
「またリリーに何かあったのか?」
そう聞いて来たのはボール・カマン伯爵令息。
彼はワンコ系だとリリーが言っていたが、弟には負けるが可愛らしい顔をしていて、リリーの一等お気に入りだった。
そして――。
「またリリーがローザンヌに虐められたか? 全くあの筋肉ダルマには困ったものだな。相手が公爵家では我がグレンダイザー王室からも文句が言えん」
そう言ったのはこの国の第一王子であるゼドール・グレンダイザー第一王子。
俺達は皆リリーに夢中なのだ。
しかし――。
「俺の屑の弟ライカと、ローザンヌの婚約が決まってしまったんだ」
これに騒めいた皆に、俺は更に言葉を続けた。
「邪魔をすれば即廃嫡。Bランクまで上がらなくても即廃嫡らしい」
「なんて横暴な!!」
「と言うか、ライカと言うとあの美少年だろう? どこに接点などあったのだ?」
「それは……俺が何時ものようにリリーをイジメたローザンヌに怒りを露わにしている時にたまたまやってきて……そこで知り合ってしまった」
「お前……なんてことを」
「仕方ないだろう!? まさか屑が近くを通るなんて思いもしなかったんだ!!」
「確かリリーはノザンに入れ込んでいたよな? 俺達の事も平等に愛してくれているが、一人を選べと言うのならノザンにすると言っていた。廃嫡になれば君はリリーとの婚約すら難しいぞ」
その言葉に、両親の言葉が脳裏を霞める。
この面子全員に抱かれているリリー……まさかそんな筈など無いと思いたいが、リリーは処女では無かった。
正に男遊びに慣れた感じがあったのは事実。
今まで「まさかそんな筈はない」と思っていただけに、両親が調べつくした資料を読んで血の気が引いたのは言うまでもない。
「リリーは……本当に俺が好きなんだろうか」
「君はリリーの僕らへの愛を疑うの?」
「決定的な愛が欲しい……と、今は思ってるよ」
きっと彼らの家もリリーの事を調べている筈だ。
何かあった際にはその書類を出されるのだろう。
リリーはローザンヌに虐められても居なかった。
全てでっち上げだったのだ。
考えてみればそうだ。クラスもEクラスとAクラスでは随分と遠い。
ローザンヌにリリーをイジメる道理もない。
「可愛い自分に嫉妬している」とリリーは何時も言っていたが、ローザンヌは何とも思っていなかった。
そう、思いこませられていただけだと――初めて気が付いたのだ。
そもそも、リリーは確かに可愛いが、俺の屑な弟が女装をすればリリーなど霞む。
ローザンヌはその可能性を見出したのだろう。
奴はユリっ気があるのか?
「それで、君の弟ってあの美少女みたいな華奢な子だろう? 本当にローザンヌと婚約したのか?」
「ああ、双方同意の上らしい。とても愛し合っているのだと両親からも聞いている」
「マジかよ。あの筋肉ダルマとノザンの弟じゃ、美少年と野獣だろう?」
「は――……リリーには何時かは耳に入るんだろうな」
そしたらきっと悲しむどころかブチ切れるだろう。
どうなるか分かったもんじゃない。
それに、リリーが本当に愛しているのは俺ではなく、弟であるライカであることも知ってしまった。
俺はライカに近づくための餌でしかなかったのだ。
「俺はこれから必死に勉強をしてBランクに行く。悪いが君たちとはこれまでだ」
「お、おい」
「ノザン」
「俺がフランドルフ家にいる為には、それしかもう道が残っていない……それが出来なければ廃嫡されて一般庶民に落とされる。そう言われたんだ」
「「「!!」」」
「リリーの事は、俺はすっぱりと諦める。君たちに譲るよ。ではな」
「お、おいノザン!!」
そう言って席を立ち自分の席に戻ると参考書を片手に勉強を始めた。
まさかリリーの狙いがライカだったなんて気が付きもしないで盛り上がって……はぁ。何て虚しいんだろうか。
いや、待てよ。
そうなると増々ライカとローザンヌの婚約がバレたら不味いんじゃないか?
リリーは【人の者を盗む癖がある】と記載されていた。
ライカなど女性慣れしていないから一発だろう!?
あんな愚弟の事など気にしたくはないが、公爵家から何かを言われては事だ。
深入りはせず、勉強に励んで見守る事にしよう。
出来ればローザンヌの見た目が好みと言う特殊性癖で乗り切って欲しいが……。
そう思っているとリリーが遅刻ギリギリになって教室に入ってきて、皆と少し談笑していると「え!?」と言う大きな声が木霊し教室は静まり返った。
そして――。
「うそ、嘘よ嘘!! ライカちゃんローザンヌと婚約しちゃったの!?」
「リリー、落ち着いて」
「そうそう、ライカとリリーは接点ないじゃん? そんなに驚かなくても」
そう皆の声がしたが、リリーは俺の元に駆け寄るとドンッと机を叩き歯を食いしばって俺を見つめている。
前は可愛いと思えた顔が、今では醜く感じる。
ライカの方が数倍可愛いな。
「ライカちゃん……筋肉ダルマと婚約したって……嘘よね?」
「事実だ。今週頭にテリサバース教会で婚約式も行っている」
「そんな……」
「俺に近づいてきたのはライカ狙いだったんだろうが、もうライカはローザンヌの婚約者だ。相手は公爵家令嬢。手出しは出来ん」
「~~~何で妨害しなかったの!?」
「仕方ないだろう!? 二人が愛し合っていると言ったら止めようがない!」
「嘘よ嘘よ!! 愛し合ってるなんて、脅されてるんだわ!!」
「それはない。本当にライカは、」
「あああああん!! アタシのライカちゃんがあああああ!!」
そう言って子供のように泣き出したリリーに頭を抱え、他の面子が宥めていたが「気分が悪いから保健室で休む!」と言って教室を飛び出していき、俺達は溜息を吐いたのだった。
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