一人静か
※地球とは断定しておりません。
ここは地の底、牢の中。
独房なのか分からないが、周りに物音は聞こえない。
電気は常についているが、日の光は届かないようだ。
今が朝だか、夕だか、それとも夜中なのかもわからない。
そして自分の名前もわからない。
どうしてここにいるのかさえ。
……何故ここが牢なのかは、あの人が教えてくれた。
僕とちょっとだけ形の違う人だった。
昔、ある星で人同士が争い、数十人だけが生き残った。
その数十人で子を増やし、村ができて町ができて。
でもまた争いが起きて、今度は全員亡くなったんだって。
僕と形の違う人は、まだ形のある亡くなった人を、冷凍保存して持ってきたそうなんだ。
一度クローン技術? で、人を増やしたけれど、また争いが起こって死んでしまったんだって。
………………僕以外は。
僕はみんなが争っている時、一人で本を読んでいたらしい。
形の違う人は、本当はもう人は再生しないつもりでいたらしいんだ。
今ある冷凍サンプル? で十分だと思ったそうだ。
全員死亡かと思ったら、僕が生きていたらしい。
何かしらの研究ができるかと、念の為連れてきてくれたそうだ。
そのままならば、餓死するからと。
どうやら、人というのは寂しいと死んでしまうらしい。
形の違う人も、誰かから聞きかじっただけで、はっきりはわからないみたい。
ああ、僕は寂しいと死んでしまうのかな?
でも寂しいって、なんだろう?
よくわからないや。
形の違う人もいるし、別に一人ということでもないからだろう。
きっと、形の違う人がいないと、寂しくなる? のかもしれない。
どうやら僕は、異種族に偏見を持たない人らしい。
異種族との交配もいけるかもしれないと、形の違う人と働いている偉い人が言っていたそうだ。
どうやら形の違う人以外にも、人はいるみたいだ。
僕と同種族は僕だけで、さらにクローン? だから、増えるかは実験しないとわからないらしい。
僕がいた星では、人は生体電気で動いていたらしい。
星からの電気をデータ化して、集団で同じように体を動かしていたらしいのだ。
星からのデータを直接受け取っていた時は、生命は今の形ではなく、透明でフニャフニャだったそうなのだ。
星ができて何万年か経つと、個々の脳のネットワークが発達したせいで、電気信号がばらついて自我(心)が発達(ある意味誤作動)したそうだ。
ある程度の集落ができると、その集落ごとにさらにデータが変化していき、元々の星からのデータとは違うものになった。
もう星ができた時と、今の僕とはかなり違ったものになったのだろう。
星からの電気データは受け取れないし、体も昔のように戻れない。
僕の星は、僕達を生んだ時、嬉しかったのだろうか?
そして最後の人がいなくなって、寂しいのだろうか?
もしかしたら、形の変わっていく生命が怖かったかもしれないね。
きっと、星が生まれた時と同じ生命が、今も星にたくさんいるから寂しくないね。
人と同じように、金属? でできた人もいたけれど、人が争った時にメンテナンス? できる人がいなくなって、動かせなくなったんだって。
ああ、今の僕にはわからないことばかりだ。
どうやら、僕の種族? は野蛮らしくて、他の種族? と一緒にできないらしい。
他の星からも、星に住めなくなった種族? がこの船に乗っているらしい。
だから僕は、船底の柵がついている場所に1人でいるみたい。
僕は本さえあれば、何もいらない。
ただ本には、人が星を壊したように書かれている。
本当のことなのだろうか?
そうだとしたら辛いことだね。
でも、もう人がいないなら、治っていくのだろうか?
今度は違う電気信号を送って、争わない人? ができるのだろうか?
もう嫌になって、人なんて作らないのだろうか?
どちらにしろ、もう僕はあの星へは戻れない。
『さよなら星
元気でいてね』
そう心で、星に呟いた。
そして優しい色で描かれた、幸せの絵本を読むのだ。
6/7 23時 日間ホラーランキング(短編) 12位でした。
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6/8 9時 日間ホラーランキング(短編)8位でした。
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