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鯨 【WEB】

作者: 雨澤 穀稼
掲載日:2023/01/16


   鯨


 大阪の淀川沖に現れた、マッコウ鯨の汐吹きの様子がニュースで流れていた。

 数日経って衰弱して、沖へと帰らぬ鯨となったそうです。

 わたしの小さな頃……鯨は身近にあった。

 学校の給食のメニューに鯨の竜田揚げがありました。

 中学では軟式テニス部だったので、鯨筋のガット(みんなは鯨の髭って言ってましたけど(実は鯨の脳の筋を洗浄して乾燥させたものを()り合わせたものだそうです))を使っていました。鯨なのに何で水に弱いのと思っていましたが……ゴムのテニスボールがよく跳ねるのですが、水に濡らすとプチッと直ぐに切れてしまうので雲って来たりポトリと雨が降って来たりすると、ラケットを服の中に入れてかばいながら急いで緊急非難してました。

 お婆ちゃんの実家が漁師さんだった事もあり、海鮮や鮮魚等食卓には何時も海の幸が並べられ鯨の刺し身等も偶に登場していました。

 その影響だったんてしょうね、父親に何かあればリュックを背負わされ山を越えて鎖をつたって崖を下った防波堤や、魚船に乗せられて沖釣りに引っ張り回されておりました。

 漁船に並走するイルカや、キラキラと飛び跳ねる飛魚に心踊る光景を目の辺りにすることもしばしば御座いました……が、どちらかと言いますと辛かった思い出が多いように思われます……が、今でも忘れられないのが、少し離れた場所にプシュー……プシューっと突然何の前触れも無く海水が吹き出されました。

 あっ……鯨だ! 揺れる船揺れる波間に薄っすらと見える黒っぽい鯨の背中かな? プシュー! プシュー! っとキラキラと鯨が汐吹きしてくれていました……ジ〜ンと神秘的な光景に、ランランと目と心を輝かせていました。

 あ〜……魚おらんようになってまったわ? 場所変えるか……と、大人達は(大金をお支払いして、壱隻漁船をチャーターしているのですから仕方ないのかもしれません)さほど鯨に興味が無いのかボンボンボンボンと動力が回されて……波間の向こうの鯨はバシャ〜ンと尻尾で水飛沫を上げて鰭をピーンと立てた後……静かに海中へと潜ってゆきました。

 ある時、地元の生鮮食品スーパーの軒先に、黒い大きな護謨みたいな塊がありました!

 何だこりゃ? キキーッとブレーキを鳴らして、父親の友達から貰い受け、荒々しく緑色のラッカースプレーを塗布されたお古の自転車を止めた!

 多分6m〜7m位だったと思います。図鑑で調べたとは思うんですが……何鯨かは忘れてしまいました。

 デロ〜ンとだらし無く口から伸びた、紫っぽい舌がちょっと気持ち悪かった。

 張りでた軒先の下にドーンと、何の囲いも無く無造作に置かれていたので触り放題だった。

 独特な生臭い感じがあった……が、好奇心には勝てないのだ!

 ポンポンと触った感触は、硬い硬質の護謨みたいだった。

 鰭や尻尾やお腹とか、かったい髭とか触ったりしてた。何日か毎日通ってわ触っていましたが……学校の帰りに遠回りして寄って見たらいなくなってました。

 当然ですが……お店の中の鮮魚店に卸された大量の鯨が並んでました。

 これまた当然ですが……食卓にもあの鯨が並べられていました。

 高校生になって友達に、小学生の頃スーパーの軒先に鯨が置かれていたんだって話していると……嗚呼それ! 昔は俺んちさ、魚やだったんだよ! うちのオヤジが誰も買い手が付かなかったのを、子供達に生の鯨を見せてやりたいって競りで落としたんだよって教えてくれました。

 そんな鯨の思い出です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] オヤジさんめっちゃ粋!! 光景が目に浮かぶような作品でした。昭和薫る漁師町かなぁと(*´ー`*) 素敵な作品を読ませていただき有り難うございました♪ [気になる点] きっと 雨澤 様 らし…
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