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海へ来て一番ファックを頂いてもいいぞ!

「なんでまた海なんですか?」

「一度きりの海で満喫できるほど、ファックは甘くないぞ!」


 真夏のビーチに俺と軍曹、椋さんと松竹梅、そして何故かこの前助けたシスターが揃った。


「なぜ?」


 我慢できず、シスターを指差した。


「軍曹さんに誘われました~♪ 久し振りの海です~♪」


 大胆不敵なビキニでたわわわわわわわわわわな巨峰を揺れに揺らし、砂浜を走るシスター。そう言えば名前を聞いていないが、今更聞くに聞き辛い。


「アンナです~♪」

「しれっと人の心を読まないで欲しい」


 シスターアンナが走る後ろ姿を、松竹梅はずっと食い入るように睨みを利かして見つめている。

 目を細めても水着は透けないので、出来れば良い子は真似するな。


「お前は分かりやすいな」

「雅人ー! 俺は今人生で一番幸せだー!!」

「うん、砂に埋まってるけど、それでいいならそれでいいんだ」


 砂から顔しか出ていない松竹梅の傍へパラソルを刺し、荷物を置く。埋めたのは椋さんだ。


「雅人さん。日焼け止め……塗って貰えませんか?」


 そっと肩紐をずらした椋さんは、とても挑発的な顔をしていた。松竹梅を埋めたのは邪魔されないためか。


「雅人ー! 死ねー!! なんか良く分からない病で死ねー!!」

「……」


 人の気も知らんで騒ぐ松竹梅にイラッとした俺は、目一杯振ったラムネを奴の顔の上で開けた。


「ガボァ……!! ガボガハガボガガ……!!」


 ラムネで溺れる松竹梅。少しだけスカッとした。


「あらあら、ラムネがこぼれちゃってますよ」


 松竹梅の顔を拭く椋さん。何だかんだで悪魔的な人である。


「雅人ー!! 俺は今人生で一番幸せだー!!」

「黙ってろ」

「ガボガハガボガガッッ……!!」

「雅人さんオイル塗って下さいな♡」

「雅人ー!! 病で死ね──ガボガハガボガガ……!!」


 エンドレスで終わらない気がしたので、松竹梅を完全に砂で埋めた。お情けで鼻にストローだけ挿しておこう。



 椋さんのオイルは丁寧に辞退し、波打ち際で準備体操を始める。波が引いて足の周りの砂が持って行かれるこの感覚が結構好きだ。


「かにかにかにかに~♪」


 シスターアンナがしゃがみ込んで小さなカニを見ている。シスター服を着ていた時には分からなかったが、結構ムッチリしていて、言わずもがなエロい。


「あ、勇様」

「はい、勇です。もう勇で良いです、はい」

「見て下さい♪ カニさんです」


 手の上にカニを乗せ、ニッカリと笑うシスターアンナ。


「勇様、この前はありがとう御座いました~」

「いえいえ」


 俺、何もしてないけどね。全部軍曹が倒したんだけど。


「飛び込んできた勇様はとても素敵で……私、その……」

「……」


 まさか……アレであれか?

 春か?

 立春か?

 春はあけぼのか?


「勇様になら……」


 嗚呼、春の気配……!!


「寺門二等兵! 抜け駆けファックは軍の規律で禁じられていらぞ!?」


 ──ザバッ!!


 海の中から突如軍曹が勢い良く現れた。居ないと思っていたら潜っていたか。

 傍に居た子どもが酷く驚き泣き出す。すまぬ童よ。


「寺門二等兵の一番ファックは私の物だ!!」

「一番風呂みたいな言い方しないで下さいよ……」

「二番なら良いですか~?」


 シスターアンナがおくびにも出さぬ笑顔でニッコリと笑った。スゲェ胆力だ……。


「……十番ファックくらいならいいぞ?」

「やたっ♪」


 良いのかそれで……。

 お茶なら何も出ねぇぞい。出涸らしにも程がある。


「勇様! 行きましょう♪」


 しっとりとした肌を押し付け、腕を引かれた。ドンブルニュと当たったやわわわわわわな特濃乳脂肪分が、破壊槌の如く俺の理性を亡き者にしようとしてくる。


「ぬほ……っ!」

「寺門二等兵!!!!」

「サ、サーッ!!」


 訓練では見せない様な、私怨染みた殺気。俺は思わず敬礼をした。


「他の女とイチャつくのは許すが、ファックはダメだ……!!」

「サーッ!!」


 勢いで返事をしてしまう。クセって怖い。


「あっちの岩場の影で私をファックして下さいな♡」

「──!?」


 そっと小さく、シスターアンナが俺の耳元で囁いた。俺の頭の中で、何か切腹エンジンの様な物がかかる音がした気がする。


「聞こえておるぞ寺門二等兵!!!!」

「サ、サーッ!!」


 スゲェ地獄耳。恐るべし。


「寺門二等兵をファックするつもりなら、私を倒してからにしろ!!」


 俺がファックされるんかい……。


「あ、かにさ~ん」


 シスターアンナはカニを見つけ、てこてこと波打ち際を歩き出した。無敵に揺れる乳くれが、非常にマイペースで宜しい。


「……寺門二等兵よ」

「サー!」

「ファックレスな時代だからこそ、私は肌と肌の触れ合いを大事にしたい」

「電子決済みたいな言い方しないで下さい」

「奴は危険だ。ファックを許してはならぬぞ」


 アンタの方が遥かに危険極まりないと思うのだけれども……言わないでおこう。


「因みに今日の私のラッキーファックは水の中だ」

「そ、そうですか……」


 イルカやクジラかよ。

 そう言えば軍曹一時間は素潜り出来るんだっけか。人間じゃねぇ。魚類だ魚類。


「ところで寺門二等兵よ」

「サー」

「貴様、頭はいいか?」

「……あまり」


 唐突な質問に要領を得ない俺は、とりあえず素直に返答をした。学生時代の成績は上から数えても下から数えても同じくらいの位置だ。


「軍人たるもの頭脳も無いと厳しいぞ! 座学を軽んじてはいけない!」

「サ、サーッ!」

「ティーピーピー」

「……環太平洋パートーナーシップ協定」

「ほほう。間違えたらアリゾナ海溝に沈めてやろうと思ったのに、残念だなぁ」


 あっぶね……目がマジだ。


「エーシーイーエーエヌ」

「東南アジア諸国連合!」

「ほほう」


 不敵に笑う軍曹は腕を組んで俺の返答に楽しんでいる。本当に沈められる気がして恐ろしい。


「エフエーシーケー」

「……?」


 なんだ?

 なんだっけか……!?

 どっかで聞いたことくらいはあるはずだが、全く思い出せない……!!


「すみません分かりません!!」

「ファックだ」

「……」


 しぶーい顔を向けてみる。

 軍曹はニッコリと笑って腰に手を当てた。


「じゃ、しようか?」

「しませんよ」


 そそくさとその場を離れようとすると、いつの間にかシスターアンナが遠くで日焼け男達に囲まれていた。皆、一様にサーフボードを持っており、どうやら波乗りを生き甲斐とする輩らしい。


「ねえねえお姉さん。メッチャ可愛いね! どう? これからどう?」

「えっ……!? その、あの……」


 返事に困ると言うよりは、状況に困っているシスターアンナ。仕方なくそちらへ

歩いて救助へと向かうことにした。


「俺、岡って言うんだけど。お姉さんマジ好みッスわ」


 どうやら岡サーファー君はシスターアンナを大変お気に召したらしい。


「勇様お助けを……!」


 シスターアンナが腕を横に振りながらこちらへ走り逃げ出した。女の子走りが可愛らしいし、お胸が揺れて高評価だ。十点満点。


「おいおい兄ちゃん……」


 岡サーファーがとても気味の悪い笑顔でにじり寄ってきた。


「こちとらナンパ目的でサーファー始めてよ、百連敗辺りから覚えてねぇんだわ……。気が付きゃプロサーファーとして名が知れる程に上達しちまってよ。だから今回ばかりは譲ってくれや。な?」


 ある意味可哀想なんだか、凄いんだか分からない岡サーファーに少し同情しつつ、それでもなお、お断りの姿勢を見える。


「すみません。関係者としてそれは……」

「うるせぇな!! こちとら半分誰でも良いんだぞ!? お前をファックしちまうぞゴラァ!!」


 なんと意味の分からない脅し文句だろうか。

 今時そんな支離滅裂な言葉でどうにかなる奴が居るのだろうか? ……居た。軍曹だ。


「誰がファックするってぇ!?」

「な、なんだこの筋肉アスリートのゴツい女は……!?」


 波打ち際、砂で出来た巨大な五段ウェディングケーキが見えた。アンタの場合入刀と言うよりは手刀で真っ二つにしそうだから恐ろしい。


「小僧……ファックだなんて言葉を軽々しく口にするとは、覚悟が出来てるんだろな?」


 どの口がそれを言うんですか!

 アンタ一番言っちゃいけない人じゃん!!


「何なんだこの女はよぉ!? キモいんじゃ!!」


 ──ゴパッ


 とても軽い音がした。

 まるで水切りのように、岡サーファーが水面を跳ね、転がりながら水平線の向こうへと遠ざかってゆく。


「岡さんに何すんだおい!!」

「ん、蹴り」


 死んでないと良いけど……。


「お前らに一つだけ言っておく」


 軍曹は脚を戻し、真面目な顔で指を立てた。


「リアルファックは笑えない」


 ……何言ってんの?


「何言ってんだ……?」


 ナンパ集団と意見が合致した。突然コイツらが愛おしく思えてくる。


「勇様、コイツらを殺戮しちゃって下さい……!」

「うん、黙ってようか」


 殺戮はダメでしょうが。


「雅人さーん。お昼ですよー」


 と、椋さんがこれまた可愛らしい走り方でやって来た。トウモロコシ生えてるので☆三つ減です。


「おおっ! 可愛い!!」


 当然の如くナンパ集団がザワついた。知らぬが仏というやつだろう。


「か、可愛いだと……!?」


 遠くへ蹴飛ばした筈の岡サーファー氏が、自力で泳いで帰ってきた。何故かケツには小さなサメが噛み付いている。


「おおっ! これは美しい……!!」


 岡サーファー氏は、椋さんの事も大変お気に召したらしく、上から下からじっくりと、舐め回すように眺めている。


 ──ゴパッ


 デジャヴみたいに全く同じ軌道を描き、岡サーファー氏は水平線の彼方へと消えた。


「次は無いぞ……!?」


 毅然たる睨みでナンパ集団をひと睨みし、蹴りの構えを見せる。


「ひえっ!」

「恐ろしい……!!」

「人間じゃねぇだ……!!」

「エイリアン……!!」


 ──ゴパッ


 エイリアンと発言したナンパ人Aは再三見たであろう軌道にて消えた。蹴ったのは椋さんだ。


「お姉ちゃんの事を悪く言う奴はぶっ〇す……!!」


 軍曹そっくりの眼光。その恐ろしさに思わず息をのんでしまう。


「ひえーっ!!」


 蜘蛛の子を散らす様に逃げてゆくナンパ集団。


「待てゴラァァ!!!!」


 なんとも下品なお言葉使いだろうか。そして戦闘力も軍曹並だ。色々な意味で恐ろしい。


「ぶっ挿すからなゴラァァ!!!!」


 ……恐ろしい。

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― 新着の感想 ―
[一言] ファックはFUCKだと思いますけど
[一言] リアルじゃないファックなんてあるの!?www
[良い点] 軍曹ファックだけで5話作っただけでも猟奇的で素晴らしい。 毎話新しいファックワードが登場するたびに笑ってしまう。
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