ウチに来てシスターをリアルファックから助けてもいいぞ!!
シスター──AV堕ちさせるのに持って来いな我が儘ドスケベボディ。
休み明け、特別部隊に志願した仲間達からの視線が妙に刺さった。
「アイツ、昨日軍曹から特別訓練を言い渡されたらしいぞ……」
「うわぁ……あの軍曹に目を付けられたのかよ」
「アイツ死んだわ」
どうやら軍曹と海に行った事は伏せられており、特別訓練をさせられていた事になっているらしい。
「それでは訓練を始める!!」
「サー!!」
「サー!!」
「サー!!」
軍曹が現れ、いつも通りの変装と声色で訓練が開始された。
「何をぐずぐずしているか豚ども!!」
「サー!!」
昨日までのやり取りがまるで嘘のように、軍曹による厳しい訓練の数々。
「寺門二等兵!!」
「サー!!」
軍曹が俺を呼ぶ。いつも通りの返事。
そう、あれは夢だったのだな……。
「良い筋肉だぞ」
「さ、さー……」
軍曹がニヤリと笑った。
同僚達がヒソヒソと俺を見る。
「もしかして特別訓練って……」
「シッ! 黙ってろ……」
「軍曹そっちの趣味かよ」
「アイツ始まったわ」
有ること無いこと次々とささやかれ、いたたまれない気持ちになるも、気持ちを切り替えて訓練に励んだ。
「なにをへばっておる!! こうやるんだ! こう!」
「サー!」
「こうして、こう!!」
「サ、サー!」
「こうやってこう!!」
「サ、サー……!」
「──以上! 本日の訓練はこれまで!!」
「……だっ、だりあどざーじだぁ……」
言葉が出ない程にくたびれる。
特殊部隊への編入期待生としての訓練は、実に熾烈を極め、肉体を限界まで酷使し、ようやく初めてそこそこ物になるレベルだ。
それを難なく熟す軍曹は、マジで人間を凌駕しているとしか言えない。
死人の行進の如く、俺は今にも死にそうな体を引きずり、何とか自宅まで帰る。
二週間交代で寮住まいとなるため、今週来週は気合で自宅まで帰らねばならないのだ。
「マジでヤバい……死ぬぅ」
帰宅直後、俺は玄関で倒れた。
ダメだ、もう動けない。
──ピンポーン
インターフォンが鳴る。しかし立ち上がる気力も無い。
──ピンポーン
再びインターフォンが鳴る。しかし体が言うことを聞かない。
──カチャ……
「あ、あのー……」
先日軍曹が破壊した我が家の扉にセキュリティ性は皆無であり、引けば開くという素敵仕様になっている。この刺激的なビフォーアフターに依頼人も(頼んだ憶えは無いが)ビックリだ。
因みに大家曰く、ドア業者が来るのは未定だそうだ。ビバ不透明な世界!
「あのー……」
「見ての通り死んでます。またのご来店を……」
女性の声がするが、振り向く事すら叶わない。満身創痍の死に損ないなう。
「大丈夫ですかー?」
「……ダメです」
「何かお手伝い出来ることはありますかー?」
女性が倒れる俺の前で屈む。
まず、パンツが見えた。白だ。
次に深い谷間が見えた。D? F? G? 良く分からんがデカい。
そして最後に可愛い笑顔が見えた。
「……ありがとうございます」
俺はそこで息絶えた。
…………と、思ったら生きていた。
「こーしてー、ココにも置いてー」
目を開けると全身に痛みが走った。訓練の副作用だ。
「あててっ!」
「あ、大丈夫ですか!?」
トトト、と足音が聞こえ、パンツが見えた。
さっき見た光景アゲインだ。
「てか俺、そのままなんですね」
「重くて運べなかったのですみません……」
「いえ、良いんです……」
気合と根性とかじゃなくて、罪悪感で何とか立ち上がると、その女性はシスター服を着てはいるが、やたら胸の部分が開けたシスター服で、なまら背中が開いた服で、ずばりエロいシスターだった。
しかも小さな十字架を持って祈る仕草を見せている。間違いない、エロいシスターだ。
「ええっと……何処から話せば……」
「はい、何処からでも大丈夫です♪」
ふむ、と一つ頷き、俺はお言葉に甘えることにした。
「その服は?」
「神父様のご趣味です……」
おもわず『あっ(察し)』と、飛び出そうになったが、ちょっとそこは深く介入しない方が良さそうだ。
「で、俺の部屋のアレは?」
「開運の像です」
俺の部屋の至る所に、小さな金ピカの像が置いてあり、如何にも胡散臭い物を感じた俺は撤去を始めた。
「あー! 一つ五万円です! 二つで九万九千八百円ですよー!」
「いらん」
ポイポイとゴミ袋へ金ピカを投げてゆく。
俺は無神論者で、強いて言えば筋肉しか信じていない。
「止めてくださいー! それが売れないと私帰れませんー!」
「えっ?」
どうやら怪しいエロいシスターにも、退っ引きならない事情があるようだ。しかし買わんぞ?
「今日売れないと、私知らない男の人とホームビデオを撮らないといけないんです……神父様に怒られます」
「は?」
いやいや、それ絶対にホームビデオ違うぞ?
「おいおいおい、それって犯罪じゃないのかい?」
ちょっとお節介ながらも、流石にそれは困っていそうなので介入してしまう。
「違うんです。皆でキャンプしたり、ご飯食べたり、ベッドで寝たりするんです」
「その説明はかなりオブラートが厚すぎる」
「テントで3Pと裸エプロンとベッドで緊縛なんですぅー!!」
「包め!! オブラートに包まんかい!!」
なんという事か!
今目の前に居るエロいシスターは金を持って帰らないと体を売るしかないと言うのか!?
しかし俺に金があるわけが……ない!!
「話は玄関で聞かせて貰ったぞ!!」
振り向くまでも無く、軍曹の声だと分かった。
シスターはいきなり現れたデカい……どっちだ? 変装か? 素のままか?
とりあえず振り向くことにした。
「お疲れのようだな寺門二等兵! 訓練はまだ序の口だ、早く寝るが良い! あ、その前にファックよろ」
「しませんってば!!」
素のままありのまま、変装無しの軍曹が腕を組んで立っていた。その姿は悪の組織の総帥か、お茶好きの尖兵そっくりだ。
「ふぇぇ~、どなたですか~!? 不法侵入です~!!」
「あんたが言うなや」
「寺門二等兵! 話は聞いたぞ! そこの娘は金が無くてリアルファックされてしまうらしいな!!」
「リアルファックとか言わないで下さいよ」
「さっきからファックファックって何なんですかこの人~!?」
「気にしないで下さい。病気なんです」
「ククク、私は寺門二等兵のファックフレンドだ!!」
「違いますって!! 違いますよ!? 違いますからね!?」
「訳が分からないです~! 帰りますのでさよならです!!」
いくら説明しても信じてくれなさそうな顔をするシスター。もう面倒なのでそのままにしておこう。
てか帰ったらホームビデオの刑だが大丈夫なのか……?
「では行こうか、寺門二等兵よ」
「えっ、何処へですか……?」
「リアルファックとか許せんだろ? 破壊しにだ」
軍曹が自分の後ろを指差した。玄関の外にはバズーカが壁に掛けてあり、通行人が持ち去ろうと思えば持って行けるような状態だった。扱いが雑すぎるだろこの人……。
「サー!」
しかし破壊発動には同意せざるを得ない。
女の子をリアルファックとか、許しておいて良いわけが無い。
シスターが属する教会の前には、如何にもなスキンヘッドが一人、見張りをしていた。
「どうします軍曹」
「アイツごとバズーカで吹き飛ばそう」
「殺人はダメですって!! しかも我々が破壊活動してどうするんですか!」
「ちぇっ、ファックの小さい奴だ」
ファックに大小あるんかい、と言うツッコミは置いておこう。面倒なだけだ。
「寺門二等兵はココで待機していろ。私一人で十分だ」
「サー」
ポンと肩に手を置かれ、軍曹がゆっくりと教会へ向かって歩き出した。
「なんだお前は!? 今日は貸し切りだ、帰れ」
スキンヘッドが軍曹を見て、強い口調で止めようとする。しかし軍曹は止まらない。
「フンッ!!」
「──ぅのんぱっ!!」
たった一撃、あまりにも速過ぎるその拳は的確にスキンヘッドの顔を捉え、殴られたスキンヘッドは宙を舞いながら3回転半を決め酷い着地で地面にキスをした。
──バンッ!
教会の扉を開け放つと、キャンプテントの傍で火起こしをする男と、縛られたシスターが見えた。傍にはビデオカメラも見え、撮影の準備中らしかった。
「誰だ!? 見張りはどうした!?」
「貴様等には偉大なる先人の言葉を贈ろう」
軍曹の圧がマジだ。後ろから見ているだけだが確実にコッチまで殺気が伝わってくる。
「可哀想なのは抜けない」
「は?」
キャンプ男が間抜けな顔をした。
「可哀想なのは抜けないと言ったのだ!!」
ただでさえ凄まじい圧が、更に一段と強くなり、常人のならそれだけで漏らしてしまうだろう。
「クッ……!! なんなんだコイツはぁぁ!!」
火起こしの棒を置き、軍曹に殴りかかるキャンプ男。アイツ死んだわ確実に。
今のうちにスキンヘッド氏の生死を確認しておこう。ついでに所属とかも。
「うわぁぁぁぁ!!!!」
「──なんだ!?」
倒れているスキンヘッド氏の持ち物を確認していると、教会の中から軍曹の悲鳴が聞こえた!
しまった! 仲間が居たのか!?
「軍曹!!」
教会の中へ飛び込むと、軍曹が縛られておりその傍らにはボコボコに殴られたような感じの顔をしたキャンプ男が、火起こし棒を軍曹に突き付けていた。
「……こ、この女がどうなってもいいのか……」
「……?」
「きゃーっ、ファックされちゃうー! 助けてー!」
「お願い止めてあげて下さい~!」
ちょっと状況が見えない。
軍曹は縛られてる。シスターも縛られてる。
キャンプ男は何故かボコボコ。なんで?
「おいお前……早くコイツをファックしろ……」
ボコボコのキャンプ男が半泣きになりながら火起こし棒を軍曹に向ける。なるほど、そういう事か。
「軍曹なにやってるんですか?」
「タスケテー、ふぁっくサレルー」
酷い片言だが、何より可哀想なのはキャンプ男だ。ボコボコにされた上に、きっと脅されているのだろう。一芝居に付き合わされているのだから……。
「うわーん! ファックしてやれよー!!」
半狂乱に陥ったキャンプ男が俺に向かって襲いかかってきた。
「すまん!」
一言だけ謝り、そして思い切り殴った。
「──ぐおんっ!!」
キャンプ男は回転しながら地面に倒れ、そしてピクピクと痙攣しながら気絶した。
「……しょーもない事しないで下さいよ」
「ふふふ」
縛っていた縄を自分の力で引き千切り、立ち上がる軍曹。普通に考えてこの人が負けるはずがないんだよなぁ。
「飛び出してきた時の寺門二等兵の姿、素敵だったぞ?」
「……さ、さー」
言われて少し恥ずかしくなる。
「大丈夫ですか?」
「は、はぃ……」
縛られていたシスターを解放し、怪我の有無を確認。無事のようだ。
「さて、神父もボコボコにしたから、これでもう君は自由だ」
「二度と変な人に捕まってはダメだぞ!?」
軍曹と二人、教会を後にする。
「あ、あのっ……!」
「ん?」
「お二人のお名前を……!」
「近藤だ。こっちはファック勇」
「適当に言わないで下さい!! なんですかその売れない男優みたいな名前は!?」
「勇様……」
「違うって……!!」
「良いじゃないか、よろしく頼むよファック君」
「絶対止めて下さいよ!!」