第84話 フレイムスカル
俺と風音さん、二人の探索者が敵に向かって駆けていく。
だが接近戦を仕掛けるにはまだ少し距離があり、敵の魔法発動のほうが早いだろう。
しかし向こうが近付いてきてくれないのであれば、こちらから行くしかない。
純粋な魔法の撃ち合いをしたいと思えるほど、うちのパーティは魔法攻撃に特化していない。
魔法合戦で機先を制したのは、弓月だった。
「耐性があっても、まったく効かないわけじゃないっす! 【エクスプロージョン】!」
敵に向かって駆ける俺の横を、紅蓮の魔力塊が高速で通り過ぎた。
直後、魔力塊はフレイムスカル三体を巻き込んで爆発。
だがその爆炎の中から、三つの火炎弾が唸りをあげて飛び出してきた。
各一つずつ、俺、風音さん、弓月の三人に直撃する。
弾速が速すぎて、防御も回避も間に合わなかった。
「ぐぅっ……!」
焼けるような痛みがあるが、重傷ではない。
この程度のダメージなら、あと数発はもらっても耐えられるはず。
爆炎に包まれたフレイムスカル三体は、当然のように健在だった。
まあそれはそうだろう。
フレイムスカルは、「火属性耐性」という特性を持っている。
火属性魔法のダメージを半減してしまう効果があり、弓月にとっては天敵とも言える相手だ。
だが魔法で倒せなければ、接近戦だ。
足の速い風音さんが、敵のもとにいち早く滑り込んだ。
「痛かったんだからぁ──お返し!」
短剣二刀流で、フレイムスカルの一体に二連撃を加える。
一瞬で二発の斬撃を受けたフレイムスカルは、黒い靄となって消滅、魔石へと変わった。
よし。
【エクスプロージョン】と物理攻撃の一手で倒せるなら、まだ戦いようがあるな。
次は俺の番だが──迷う。
通常攻撃で倒せるか、それとも【三連衝】を使って確実に仕留めるか。
いや、戦闘終了後に回復魔法を三発使うことが確定している。
ならば──
「はぁっ!」
槍による通常攻撃で、フレイムスカルの一体を攻撃した。
相手は回避動作を見せる。かなりの速さ。
スキル【命中強化】の効果を受けた俺の体は、すぐさま補正をかけ、まったく危なげなく攻撃を命中させる。
だが俺の槍の一撃を受けても、そのフレイムスカルが消滅する様子はなかった。
ちっ、ダメか。
「うっわ、残りHP1とかひどいっす! 【ファイアボルト】!」
後方から火炎弾が飛んできて、瀕死のフレイムスカルに直撃。
その個体はさすがに消滅し、魔石となった。
それにしても、残りHP1……? そんなことあるの?
ひどくない? 妖怪イチタリナイの仕業?
そして残る一体のフレイムスカルは、最後っ屁でもう一発だけ弓月狙いで火炎魔法を撃ってきたが、その後に風音さんの手であっさりと屠られた。
戦闘終了だ。
俺は二人の仲間のもとに行って、ダメージの治癒に取り掛かる。
「二人とも、お疲れ様。ダメージは大丈夫?」
「うん。私は被弾したの一発だけだったから、そんなには。それより二発受けた火垂ちゃんが……」
「あー、痛いは痛いっすけど、別にそれほどでもない感じっすよ」
「ほう。回復の前にHPを教えてもらってもいいか?」
「うっす。えぇっと、うちのHPは今、『93/120』っすね。二発もらって、27点ダメージ受けたみたいっす」
「マジで……!? 俺とか一発で24点もらってるんだが……。風音さんは?」
「私は26点……。火垂ちゃん、ちょっと魔法防御高すぎない?」
「お、おおっ、そうなんすか? うちちょっとフレイムスカルが好きになったかもしれないっす」
弓月、ここに来てまさかの魔法防御力無双。
魔力の当たり能力値っぷり、相当だな。
とは言え、それなりのダメージを受けていることに変わりはない。
俺は三人に一発ずつ【アースヒール】をかけて、やけどによるダメージを癒していく。
回復量は十分だったようで、全員の傷は完全に癒された。
「うーん……1回の戦闘で、俺のMP12点消費か。ちょっとキツイな」
「だよね。それに私や大地くんが集中砲火を受けるとヤバそうだし、何か考えたほうがいいかも。──たしか武具店に『抗魔の指輪』って売ってたよね? 魔法防御力を上げる指輪」
「あったっすね。でもあれ確か、一個25万円するっすよ」
「安くはないな……。でも背に腹は代えられないし、検討の余地はあるか。遺跡層の浅層では毒や麻痺も飛んでこないはずだし」
「抗魔の指輪」、魔法攻撃が飛んでこない森林層では、購入品検討の際にリストアップすらしてなかったやつだな。
しかし、やはり渡る世間は金なのか。
どこも世知辛い。
それにもう、これ以上はレベルも上がらないしな。
経験値もカウンターストップしている。
モンスターを倒しても経験値を得られないのは、なんとなく寂しい。
うちのパーティはここまで快進撃を続けてきたが、さすがにもう、このあたりの階層が限界なのかもしれないなと思う。
この第九層止まりか、行けて第十層、第十一層ぐらいまでだろうか。
第十二層の遺跡層ボスを倒すのは、いくらなんでも厳しそうだ。
三人パーティのベテラン探索者だと、だいたい第八層か第九層あたりがメインの稼ぎ場になるって聞くしな。
ただそろそろ限界とはいえ、この第九層を攻略して南西部の端に到達するぐらいのことは、少なくともできるはずだ。
たどり着いた先に何が待っているのかは分からないが──
「よし、行くか。できれば今日中に、ガーゴイルにも触っておきたいな」
「だね。南西の端を本格的に目指すのは明日になるかな」
「ガーゴイル相手なら、うちの魔法が火を噴くっすよ~!」
俺は二人の仲間とともに、第九層の探索を続けていった。
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