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第81話 デモンズフラワー(1)

 開いた大扉をくぐり、奥へと進んでいく。


 大扉の奥は、草木の緑に囲まれた大広間だった。

 体育館ほどの広さがあるのは、ゴブリンロード戦を行った洞窟層のボス部屋と一緒だ。


 俺たちが進んでいくと、薄暗かった大広間が手前側から順に明るくなっていく。

 周囲の草木が発光しているようだ。


 それと同時に、入り口の大扉が閉じていく。


 慌てることはない。

 ここにはボスを倒しに来たのだから。


 大広間の奥には、巨大で奇妙な植物のようなものがいた。


 マッドフラワーと似ているが、それよりもさらに大きく、背丈は二階建て住居の屋根をもゆうに超えるほど。


 その上部には、十輪近い数の不気味な巨大花が、いびつに入り乱れて咲いている。


 巨大花を支える太い茎も、数十本が支離滅裂に絡み合っている。

 ねっとりとした糸を引いていることも相まって、生理的な嫌悪感を催させる外見だった。


 根っこにあたる部分が足のようにうねうねと動くのは、マッドフラワーと同じ。

 周囲に何本もの蔦を揺らめかせているのも同様だ。


 その巨大で奇妙な植物型のモンスターは、俺たちが大広間の中央あたりまで来たところで、全身に無数の「目」を開いた。


 花にも、茎にも、根にも、蔦にも。

 真っ赤な「目」が、巨大植物型モンスターの全身のあちこちで大量に開いて、俺たちのほうを一斉に凝視してくる。


「ひぃぃっ、怖い怖い怖いっす! 【ファイアウェポン】!」


「前情報で分かってはいたけど、実際に見るとやっぱりおぞましいなぁ。鳥肌出るよ~。【クイックネス】!」


「モンスター名『デモンズフラワー』──日本語にすると『悪魔の花』ってところか。たしかにちょっと悪魔っぽさあるな。【プロテクション】!」


「って先輩、ちょっと平然とし過ぎじゃないっすか!? 【ファイアウェポン】!」


 ボスモンスターの登場シーンでは、攻撃をしても無効化されるのは定例どおり。

 この間に三人で、補助魔法を使っていく。


 殊に今回は、弓月の【ファイアウェポン】が途方もない威力を発揮しそうだ。


 もともと【ファイアウェポン】は、付与した武器に「術者の魔力×0.5」の攻撃力を加算する魔法らしいという検証結果が出ている。


 これを今の弓月の化け物的魔力で使用すると、魔法の火炎が付与された武器の攻撃力は、通常より22点も増加することになる。


 つまり俺の槍だったら、「コルセスカ」の攻撃力が「21」から「43」に跳ね上がるような話だ。

 この時点でわりと狂った性能だと思う。


 それに加えて、火属性に弱点を持つモンスターを攻撃する場合は、効果に1.5倍の補正がかかるらしい。

 そしてデモンズフラワーは「火属性に弱点を持つモンスター」だという。


 さらにこの効果は、攻撃がヒットする回数が増えれば、その分だけ倍増しで威力を発揮することになる。

 俺の手には【三連衝】があり、ボス戦だから後先のMPを気にせずに使い放題だ。


 好条件が揃い過ぎている。

 果たしてどんなことになるのか──


 俺たちが全員に補助魔法を掛け切ったあたりで、ボスの登場シーンも完了する。


 最後はデモンズフラワーの周囲に四つの鬼火が現れ、それが取り巻きのモンスターへと姿を変えた。

 サーベルタイガーが二体、マッドフラワーが二体だ。


 ──ケヒャヒャヒャヒャッ!


 デモンズフラワーからけたたましい声が上がり(発声器官がどこにあるのかは不明)、モンスターたちが動き始める。

 戦闘開始だ。


 デモンズフラワーを含めた五体のモンスターは、俺たちに向かって真っすぐに近付いてくる。


 ここで左右に散らばったりされると面倒なのだが、こうルーチン的に動いてくれると、こっちとしては楽でいい。


「来るぞ! 風音さん、弓月、雑魚の殲滅頼む!」


「了解! 切り裂け、風刃の嵐! 【ウィンドストーム】!」


「任せろっす! 猛き爆炎よ、すべてを焼き尽くせ! 【エクスプロージョン】!」


 風音さんと弓月の魔法が、ほぼ同時に発動する。


 俺たちに襲い掛かろうとしていた五体のモンスターをすべて巻き込み、爆炎と風刃の嵐が炸裂した。


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