表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝起きたら探索者《シーカー》になっていたのでダンジョンに潜ってみる 〜1レベルから始める地道なレベルアップ〜  作者: いかぽん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/464

第65話 告白

 俺たち三人が、早めの夕食と会議を終えて回転寿司店を出たのは、午後の六時を少し過ぎたぐらいの時間だった。


 例によってビール一杯でできあがった小太刀さんは、ハイテンションで俺たちに絡んできていた。


「六槍さん、火垂ちゃん! 二軒目行きましょう二軒目! ハシゴ酒です! 二軒目なら二杯目以上ももちろんオーケーですよね?」


「どうしてそうなるんですか。ほら、帰りますよ小太刀さん」


「ええーっ、やぁーだぁー! 今日は帰りたくなーいー! もっと楽しいことしたい~!」


「子供ですか。まったくもう」


「何ですかぁ、六槍さんこそ大人ですかぁ? そんな大人な六槍さんには、こうしちゃいます。えいっ♪」


「わっ……! ちょ、ちょっと、小太刀さん……!」


 小太刀さんは俺に飛びつき、抱きついてきた。


 駅近くの店舗の前の通りだ。人通りは多く、通りすがりの人々がちらちらと視線を向けてくる。

 はたから見たら、完全にバカップルだろう。


 俺は後輩に助け船を求める。


「おい弓月、助けてくれ!」


「はあ? 何言ってんすか先輩。うちお邪魔虫みたいだから帰るっすよ」


「えっ……? お、おい、弓月……!?」


「じゃ、風音さんもまた明日っす。良い夜をお過ごしくださいっすよ」


「え、火垂ちゃん帰っちゃうの? もっと一緒に遊ぼうよ~」


「風音さんもそういうの、どうかと思うっす。酔ってるのか、ふりなのか知らないっすけど。それじゃ、先輩も風音さんもまた明日。遅刻してきちゃダメっすよ」


 弓月はそれだけ言い残して、さっさと自転車に乗って去ってしまった。


 あとに残されたのは、俺と小太刀さんの二人だけ。

 しかも小太刀さんに抱きつかれた状態でだ。


「火垂ちゃん……」


 小太刀さんが心配そうな声でつぶやく。


 なんか今日は、弓月の情緒が不安定だった気がする。

 本気で不満を抱えていそうな、そんな声色だと感じることが何度かあった。


 普段コメディリリーフなやつが本気のトーンになっても、俺もどうしていいか分からなくなる。


「弓月のやつ、何かあったんですかね……ていうか、そろそろ離れません?」


「あっ……そ、そうですね。あはははっ、私ってば、酔っていてつい」


 小太刀さんの温もりが、俺から離れていく。

 赤くした頬を、ぽりぽりとかく小太刀さん。


 俺から視線を逸らしている姿は、酔っている小太刀さんというよりも、普段の小太刀さんのようだ。


 なんか空気が変だ。いつもと違う。


 いや、いつもと違うのは、今に始まったことじゃない。ダンジョン探索のときからだ。

 今の回転寿司店での会議も、みんな一時的にいつも通りを演じていただけなのかもしれない。


 俺は、いつも通りをしていてはいけない理由を積み残している。

 忘れていたわけじゃないが、それを言い出せる空気を作れなかった。


 弓月はそんな俺を見かねて、場を作ってくれたのだろうか。

 分からない。それだけではない気もするが。


 でも、今しかないとも思った。ここで言い出さないようなら、永久に無理だろう。


「あの、小太刀さん」


「は、はひっ!」


 俺の声のトーンが、いつもと違うことに気付いたのだろうか。小太刀さんが一気に緊張した様子を見せる。


 周囲にはたくさんの人通りがある。でも今の俺には、小太刀さん以外の人々などは、すべてが取るに足らないモブとしか感じられなかった。


「あの……俺、小太刀さんのことが、好きです」


 言った。

 言ってやった。


 あまりにも遅すぎたし、これだけじゃ全然足りないようにも思うが、ともあれ俺の口から自分の想いをはっきりと言った。


 これだけは絶対、やらなきゃいけないことだと思っていた。


 もっとロマンティックなシーンで言わないとダメだとか、いろいろと考えたけど、そんな難しいことを考えていたら実行力を失ってしまう。


「……はい。私も、六槍さんのことが好きです」


 小太刀さんが、そう応じてきた。


 頬は真っ赤で、ガチガチに緊張している様子だった。

 たぶん俺も、似たような顔をしているんだろう。


 いいのかな。

 いいんだろうか。


 ──えぇい、ままよ。


 俺は小太刀さんの腰と背中に手を回して、抱き寄せる。

 小太刀さんは一瞬だけ驚いた様子を見せたが、やがて俺に身を任せて、まぶたを閉じた。


 俺は小太刀さんの唇に、唇を重ねた。


 小太刀さんの腕が、俺の背中へと回され、ぎゅっと抱きしめてきた。

 俺もまた、小太刀さんの体を、強く抱きしめ返す。


 心地よくて、温かくて、大好きな人の感触。

 俺はそれをいつまでも感じていたくて、ずっと長い間、小太刀さんを抱き続けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 弓月ちゃん今後どうなるんかな… 2人が結ばれたのは祝福しますぜ!
[良い点] 無双し過ぎないで徐々に強くなっていく感が良い。 [気になる点] 10万人に1人がシーカーになるということは日本では1000人程度。 実際に命をかけて潜ろうとする人は、その半分もいなさそう。…
[良い点] ついに言ったー---!! [気になる点] 弓月との仲は今後どうなるかなあ [一言] 更新ありがとうございます。 先日はご返信ありがとうございます。いわゆる「最大〇〇値が1つ上がる」とい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ