第463話 城内突撃
王城に夜襲を仕掛け、まんまと城内に侵入した俺たち。
レジスタンスのメンバーを城内に誘い入れてから、総員で中庭を駆けていく。
目指すは城内本館──国王ベルトルドが眠りについているであろう場所だ。
しかし夜襲というのは、少し悪いことをしている気分になるな。
本来であれば、どちらかというと正義の味方ポジションのレジスタンスにとっては、闇討ちみたいな卑怯(?)な真似は避けたいところではある。
正々堂々と宣戦布告をして、真っ向勝負を挑むほうが王道なのは確かだ。
しかし状況や戦力的に、そんな贅沢は言っていられないのが実情。
大を取るために小を切り捨てるということで、夜襲を仕掛けることとなった。
夜闇の中、城内中庭を本館に向かって駆けていく俺たち。
そこに弓矢や魔法による攻撃が、次々と降り注いでくる。
城壁の上や、城壁に一定間隔で配置された監視塔にいる、警備兵からの攻撃だ。
数はさほど多くない。
俺たちにとっては大した痛手にもならないが、レジスタンスの面々はそうもいかないようだ。
それでも、このまま駆け抜けてしまえれば、一時的なものだろうが──
そうは問屋が卸してくれない。
前方にあった建物のいくつかから、武装した覚醒者たちがぞろぞろと姿を現した。
その数、ざっと二十人弱。
「はぁあ? なんでもう侵入されてんだよ! 警備のやつらは何をやってやがった!」
「どこから湧いてきやがったんだ、こいつら!」
「グリフォン……!? なんでモンスターが一緒にいやがる!?」
「詮索は後だ。叩き潰すぞ!」
一度は戸惑いの様子を見せた武装兵たちだったが、すぐに戦闘態勢を整えてみせる。
なんやかんやで戦闘のプロたちだ。
こいつらを無視しての突破は、俺たち三人とグリフだけなら不可能ではないだろうが──後々のことも考えると、今のうちに敵の数を減らしておいたほうが賢明だろうな。
「風音は右の城壁と監視塔のやつらを頼む! グリフは左を! 弓月は両方の援護!」
「了解!」
「クアーッ!」
「承知っす!」
俺の指示を受け、風音は飛行魔法で右手の城壁へと飛び、グリフは翼を羽ばたかせて左手の城壁に向かう。
弓月はその場で足を止め、魔法発動準備を始めた。
一方で俺は、正面に向かって突進し、敵陣を切り崩しにかかった。
レジスタンスの八人も、近接戦闘に魔法に射撃にと、各々の得意分野を駆使した戦闘を開始する。
正面の近接戦闘に参加したのは、俺のほかにガヴィーノさん、クラウディア、ハンマー使いの大男ほか二人だ。
対する敵は、ざっくり十人ちょっとか。
人数を見れば、敵のほうが倍ほども多い。
だが、衝突して次々に戸惑いの声をあげたのは、王国側の武装兵たちのほうだった。
「くっ、何なんだこいつらの速さは! 全員に【クイックネス】が掛かってやがるのか!?」
「にしたって──ぐぁああああっ!」
「なっ!? 【二段斬り】の一発で、ウーゴがやられた!? 【ファイアウェポン】ったって、そんな威力ねぇだろ普通!」
「くそっ、硬てぇ……! 【プロテクション】かよ!?」
人数では劣っているものの、個々の戦力はこちらのほうがかなり上だ。
というのも、突入前に俺、風音、弓月で【エリアプロテクション】【エリアクイックネス】【エリアファイアウェポン】を、レジスタンス含めた全員を対象に行使したのだ。
補助魔法の威力は、術者の魔力に依存する。
25レベル同士の戦いなら、俺たち60レベル超えの魔力でかけられた補助魔法は、劇的な効果を発揮することになる。
特に弓月の【エリアファイアウェポン】は、各自の武器攻撃の威力を、意味不明なまでに高めているはずだ。
「ははっ、こいつぁご機嫌だ! ──っらぁ、次のやつ来いよ!」
「クラウ、あまり調子に乗るな! これはダイチくんたちの力を借りているだけだ。忘れると痛い目を見るぞ!」
「わぁってるよ! ガヴィーノはあたしのおかんか!」
「せめて父親にしてほしいものだ!」
レジスタンスのメンバーは、人数差がある状況下でも、かなり健闘していた。
一対二で互角、といっても過言ではないぐらいだ。
しかしひいき目に見て互角では、負ける可能性のほうが高い。
軽口を叩きながらも、ギリギリの戦いをしているのは、なんとなく見て取れた。
そこを打開するのが、俺の役目だ。
敵陣に真っ先に突っ込んだ俺は、魔法の炎が付与された神槍で、武装兵を次々と討ち倒していく。
敵の攻撃は盾で防いだり、鎧に当たるに任せたり、適当に凌ぐ。
物理攻撃によるダメージは、ほとんどゼロだ。
「な、なんだこいつ……つ、強すぎる……!」
「この鎧のガキ、特にヤベェぞ! 三人、いや四人で囲め!」
「んなもん無理だって分かるだろ! 人数が足りねぇ!」
まあ四人いても変わらんと思うけどな。
俺は【三連衝】を使うこともなく、通常攻撃で武装兵たちを一撃必倒していく。
目の前の敵がいなくなったら、味方の援護に回る。
さらに三人ほど倒し、人数差が逆転したあたりで、俺は敵の後衛へと視線を向けた。
そこには魔法や弓矢などで俺たちを攻撃しながらも驚き戸惑っている、五人の武装兵がいた。
「な、なんなんだこいつら……!? バケモノかよ……!?」
「特にあの鎧のガキ、どうやって倒したらいいんだ!? 物理攻撃ほとんど通ってねぇだろあれ」
「あれ、まさか……八英雄の一人、ドワーフ族長のバルザムントが作ったっていう、ガイアアーマーとガイアヘルムじゃ……!?」
「なんだよそれ!? ──うわぁあああっ! く、来るな! 来るなぁああああっ!」
近付いていくと、まるでホラー映画の怪物のように恐れられた俺氏。
と言っても、ここでこいつらを倒しておかない理由もないんだよな。
狂乱して襲い掛かってきたり、逃げ出そうとしたり、尻餅をついたりした武装兵たちを、俺はどんどん倒していく。
なお【手加減】は乗っているので、安心安全な火炎神槍による必倒攻撃である。
戦闘開始から、三十秒ほどか。
近くにいた敵を倒しきった頃に、ちょうど、神槍に宿っていた魔法の炎が消えた。
補助魔法の効果が切れたか。
またそれとほぼ同時に、仲間たちが戻ってきた。
「終わったよ、大地くん」
「どっちも片付いたっす」
「クアーッ」
城壁の上や監視塔から降ってくる弓矢や魔法による攻撃が、綺麗さっぱりなくなっていた。
一方でレジスタンスの面々も、それぞれ担当していた敵を倒し終えていた。
クラウディアとガヴィーノさんが歩み寄ってくる。
「ホントパネェな、あんたたち……」
「まったくだ。我々がむしろ、足手まといではないかと思いさえする」
「そんなことはないですよ。俺たちだけでこの人数を相手にするのは、少し怖さがあります。それより急ぎましょう」
「これだけの数の王国騎士を相手にしても、『少し怖さがある』で済むのか……。ああ、急ごう」
少しの会話を交えながら傷の治癒を終え、補助魔法をかけ直す。
一行は、再び本館へと向かって駆け出した。
王城とはいえ、深夜に攻め入ったのだ。
残りの敵の数は、そう多くはないはず。
真に問題となるのは──




