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朝起きたら探索者《シーカー》になっていたのでダンジョンに潜ってみる 〜1レベルから始める地道なレベルアップ〜  作者: いかぽん


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第458話 現実と夢

 俺は一つ、大きく深呼吸をする。

 それから周囲の人たちに向かって、こう伝えた。


「俺たちは、現国王ベルトルドの圧政から、この国を解放するために戦う“レジスタンス”です。正確には、俺とここにいる風音は、それに雇われた傭兵です」


 はい、結局のところ正直ベースで戦うのが一番という、いつものやつです。


 俺の言葉を聞いて、周囲の人々がどよめいた。


「レ、レジスタンス……?」


「聞いたことがある。国王陛下を打倒するために、戦おうとしているやつらがいるって」


「でも全然話にならないような、ちっぽけな人数だって聞いたけど。戦えるのは、十人にも足りない冒険者だけだって」


「“反逆の騎士”ガヴィーノが集めた、何人かの仲間たちがいるだけなんだろ。そんなの、百人以上もいる王国騎士団に──陛下に敵うわけがないじゃないか」


 最後の人の言葉を受けて、一様に暗い表情を見せる町の人たち。


 その態度を見て思ったのは、やはりこの王都の人たちも、現国王の統治を好ましくは思っていないのだろうということだ。

 さっきの様子を見ていれば、それはそうだろうと思うが。


 しかしだとしても、レジスタンスなどというわずかな希望の灯は、大きな闇の力によって踏み潰される──そんな現実を想像しているのかもしれない。


 それに対し、俺は大きく息を吐いてから、気を強く持ってこう言った。


「勝ちます」


 普段の俺だったら、絶対に言わないような言葉だ。

 空手形を切るのは主義じゃない。


 でもそれを、今はやるべき時だと思った。


 レジスタンスが国王軍に負けて、それに協力した者たちは身の毛もよだつような重い罰を受ける──そんな未来を想像されては、協力の意志も潰えてしまうだろう。


「『勝ちます』って言ったって……。気持ちだけで勝てるなら、誰も苦労しないだろ」


「そうだよ。俺たちだって、あの理不尽な王国騎士たちを、何度ぶちのめしてやりたいと思ったことか……でも、無理なものは無理なんだよ……」


 やはり町の人たちは信じない。

 為すすべもなく虐げられ続けてきた人たちは、「現実」を知り過ぎている。


 だったら少し、「夢」を見せてやる必要がある。

 選ぶべきワードは──これか。


「皆さんは“八英雄”をご存じですか?」


 うつむいていた人たちが、にわかに顔を上げた。

 一人が、こう返してくる。


「そ、そりゃあ、“八英雄”を知らないやつなんていないけど。それが一体……」


「俺たちはその“八英雄”のうち、三人と実際に会ったことがあります。ダークエルフの英雄ユースフィア、ドワーフ大集落の族長バルザムント、聖王国ラーディルトの国王である聖王エルドリック──俺と風音、それにもう一人の仲間は、その三人から実力を認められました」


 人々が、さらに大きくどよめいた。

 特に聖王エルドリックの名前が効いているようだった。


「で、でも、『実力を認められた』といったって、一人で何人もの騎士を倒せるわけじゃないだろうし……」


 うーん、ムードに流されない冷静なのがいるな。

 確かにそれだけなら、そういう受け取り方もできる。


 さらなるファクトが必要だ。

 追加材料投入。


「それに俺たちは先日、レジスタンスのメンバーが二十人近い数の王国騎士たちに壊滅させられそうになっていたところで助けに入り、三人でこれを撃退しました」


『は……?』


 町の人たちが、いよいよ呆気にとられた様子を見せた。


「そ、そういえば……この間、王国騎士たちが二十人ぐらいで遠征に出て行ったきり、戻ってきてないような……」


「いやいや……たった三人で、二十人をって……あの王国騎士たちを……? そんなバカな……」


「でも今ここに倒れてるやつらも、瞬殺だったような……」


 よしよし、だんだん信じてきたな。

 あとはダメ押しだ。


「この中に、覚醒者の『限界突破』について知っている人はいますか?」


 俺が人々を見回しながらそう聞くと、一人の男性が挙手をして「聞いたことがある」と言った。

 彼は周りの人たちを見回して、語りはじめる。


「覚醒者には、強さを示す指標として『レベル』というものがあるらしい。最初は誰でも『1レベル』だけど、経験を積むごとにこれが上がっていく。普通はどんなに経験を積んでも『25レベル』が上限で、熟練の冒険者や一人前の騎士は、だいたいみんな25レベルなんだそうだ。だけど──『限界突破』をした覚醒者だけは例外で、26レベル以上になれる可能性があるって」


「……てことは、あんたたちもその『限界突破』をしているってことか?」


 別の人が聞いてくる。

 俺はうなずいて、答える。


「はい。俺と風音、それにもう一人の仲間は、いずれも60レベルを超えています」


「ろ、60レベル超え!?」


 驚きの声をあげたのは、先ほど限界突破について説明してくれた男性だった。

 ほかの人たちは、いまいちピンと来ていない様子だ。


「え、それってどのぐらい凄いんだ……?」


「たとえば“八英雄”の『レベル』ってどのぐらいなの? 1000レベルぐらい?」


「いや、確か“八英雄”のほとんどが70レベル台だって聞いたような……」


「は……!? ということは……」


 人々はおそるおそるといった様子で、俺たちのほうを見てくる。


「じゃ、じゃあひょっとして、この二人……ほとんど“八英雄”と同じぐらい、強いってこと……?」


「“八英雄”って、千人近い覚醒者を集めた各国連合軍でも勝てなかった『魔王』を、たった八人で打ち倒したって話だったような……」


 よし、「夢」を見せるのはこのぐらいでいいだろう。

 まあ嘘は一つも言ってないはずだし、普通に現実ではあるのだが。


「もう一度言います。俺たちが協力する以上、レジスタンスは勝ちます。勝ってみせます。ですから皆さんも、協力してもらえませんか。俺たちは今、王都内部の情報を求めています」


 本日二度目となる、普段の俺ならば絶対に言わない言葉。


 足場がふわふわとして落ち着かない。

 人を騙しているような気分にもなる。


 だけど「現実」を知り過ぎている彼らに、悲観的な見立てを言ったところで、良い結果にはならないだろう。


 言ってしまったことは、実現してみせればいい。

 今の俺たちには、それができるだけの力があるはずだ──多分、きっと。


 町の人たちは、互いに顔を見合わせるなどしながら、困惑した様子を見せていた。

 だがその中で、一人の女性が前に出てきた。


「私は彼らを信じるわ。カルロのことだって助けてくれた、優しい人たちよ。それにもう、こんなやつらの言いなりになる生活は嫌!」


 女性は、俺と風音が倒した二人の王国騎士を睨みつけて言う。


 さらに限界突破の説明をしてくれた男性が、前に出る。


「俺も乗るぞ。今この時を逃したら、俺たちは一生、奴隷みたいな扱いのままだ。こんな生活、もう真っ平だ!」


 こうなってくると、後はなし崩し的だ。

 俺も俺もと言って、最終的にはその場にいた皆が、協力を申し出てくれた。


 一件落着。

 俺はひそかに、安堵の息を吐く。


 風音が俺の前にぴょこんと立って、小首を傾げた。


「大地くんって、普段は口下手なのに、ときどき詐欺師みたいに口がうまくなるよね。ひょっとして普段は、口下手のふりしてる?」


「ち、違うって。こういうのは必要があるときにしかやらないから。だいたい詐欺師って。嘘は言ってないし……多分」


「あー……なるほど。やろうと思えばやれるけど、日常的にはやらないってことか。これは浮気とかされても、気付けないかもなぁ」


「しないしないしない! 何度も言ってるけど、俺が風音と弓月を裏切るわけないだろ」


「信じるよ。信じるしかできないし──えへへっ」


 風音が不意に、俺の頬にキスをしてきた。

 なぜ? 公衆の面前でなぜ?

 最近、羞恥心とか公序良俗が壊れてない?


 俺は著しく動揺したが、さておき。


 その後、医者がやってきて、ベッドに寝かされたパン屋の子どもの容態を診た。

 診察の結果、大事には至らないだろうという話で、町の人たちも俺たちもホッと一安心。


 倒した二人の王国騎士は、騎士勲章を奪った上で、冒険者拘束用のロープで縛って一軒の家の地下室へと放り込んだ。

 一時間ほどは、目を覚まさないはずだ。


「クソ国王とクソ王国騎士たち、絶対ぶちのめす……!」


 子供の様子をあらためて確認した風音が、目を据わらせて、拳と手のひらを打ち合わせる。


 俺もまた、目的達成に向け、決意を新たにしていた。


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