第456話 作戦開始
「ここから先は敵地だと思った方がいい。慎重に進むぞ」
王都が見えてきたあたりで、ガヴィーノさんが号令をかける。
一行はうなずき、行動を開始した。
まずは街道を外れ、横手の森の中へと踏み込む。
ざくざくと落ち葉を踏みしめ、道なき道を進んでいく。
王都の近くまで来たところで、一行は足を止めた。
森の中の、わずかばかり空き地のようになった場所で、周囲には丈の高い草がぼうぼうに生えている。
ここで俺は、ペット状態だったグリフに【テイム】を使って、本来の大きさへと戻した。
レジスタンスのメンバーには事前に話しておいたが、それでもだいぶ驚かれた。
「じゃあ、大地くん」
「ああ、風音。──それじゃあ、行ってきます。できる限りのことはしますが、何か失敗をしないとも断言できません。幸運を祈っていてください」
俺は風音とともに出立の準備をしつつ、レジスタンスのメンバーに断りを入れる。
こういうところで強気に出られないのが俺らしいなと、我ながらに思う。
「承知している。元よりキミたちで無理なら、ほかの誰にも不可能なことだ」
「頼むぜ、ダイチ、カザネ。……つって、プレッシャーをかけてもダメか。まあ、なるようにしかなんねーさ。あんたたちがいなかったら、あたしたちは一昨日の段階で、町の広場で殲滅されて終わってたんだ。山ほど感謝することはあっても、失敗して恨むことはねぇよ」
ガヴィーノさんとクラウディアから、励ましの言葉を受ける。
さらにはグリフに抱き着いた弓月が、こう伝えてきた。
「先輩、風音さん、無理はダメっすよ。万が一にも二人が帰ってこなかったら、うち……とにかく、絶対に無理しちゃダメっすからね! 50万ポイントだから、何かあるかもしれないっすから」
「分かってるよ。俺がお前のことを絶対に手放さないのは知ってるだろ。必ず──なんとかうまいことやるさ。な、風音」
「うん、もちろん。それじゃあ火垂ちゃん、グリフちゃん、行ってくるね」
そうして残りのメンバーとは一時的に分かれ、俺と風音の二人で移動を開始する。
巨大化させたグリフも、ひとまず弓月とともにお留守番だ。
風音と二人で、森の中を駆けていく。
草を踏みしめ、木々をよけながら向かうのは、王都市壁の北側だ。
王都ヴェスカーラには東門、南門、西門という三つの通行口がある。
それらの門では当然に、覚醒者が門番をしているはずだ。
そこに覚醒者が大勢で乗り込めば、警戒されるに決まっている。
また少人数で分散して王都に入ろうとしても、覚醒者というだけで目を付けられる可能性が高い──とは、ガヴィーノさんの談だ。
まずは王都内部の状況の、できるだけ正確な情報が欲しい。
騒ぎを起こすのは、十分な情報を得て、それをもとに作戦を練ったあとが望ましい。
そこで俺と風音の出番だ。
【隠密】スキルを活用して、人知れず王都に潜入し、王都内部の現状を視察する。
それが俺たちの第一任務だ。
あわよくば、そのまま城まで乗り込んで最終目的を片付けてしまってもいいが、そのあたりは俺たちのアドリブに任されている。
最終目的は、国王ベルトルドの首を取ること──
その言葉を額面通りに受け取るなら、俺か風音が「殺人」を犯さなければならないことになる。
これまでに経験がないことだ。
そうしなければならない場合、風音にやらせず俺がやるのは、俺の中での確定事項だ。
しかしできることなら、それをせずに済ませたいというのが本音だ。
自分の手を血で染めたくないお花畑な気持ちは、俺の中にずっとある。
ただそもそも、人知れず国王を暗殺というのはやはり国民の印象が良くないので、できれば名乗りをあげて堂々と攻めたいというのがガヴィーノさんたちの本音らしい。
欲張り過ぎではあるので、状況次第だとも言っていたが。
だいたい、なんでこんなことに悩むかって、高レベル×【隠密】スキルの効果がチート過ぎるんだよな……。
いや、そもそも限界突破で60レベル超えがチートなのだが。
さておき。
森の中を駆けていった俺と風音は、やがて王都の北側を守る市壁のもとまでたどり着いた。
俺たちの眼前には今、背丈の五倍ほどもありそうな高い石壁が、右から左までずーっとそびえ立っている。
さすがに垂直跳び一発で突破できるような高さではない。
そのとき槍を持った歩哨が、市壁の上の通路を歩いてくるのが見えた。
俺と風音は、近くの木の陰で【隠密】スキルを発動し、歩哨をやり過ごす。
当然ながら、気付かれることはなかった。
「じゃあ風音、頼む」
「うん、行ってくる。──【フライト】」
歩哨が過ぎ去ったことを確認してから、風音が市壁のもとまで駆け寄り、風属性の魔法を発動させる。
風音の体がふわりと浮き上がり、そのまま空を飛んで、市壁の上に難なく着地。
風音はアイテムボックスからロープを取り出し、壁の下に垂らす。
俺はそれを使って、市壁を素早くよじ登った。
それから王都の内側に人の目がないことを確認して、二人で跳び降りた。
【隠密】スキルを発動していることもあり、この間、大きな音を発することはない。
その後も【隠密】を発動しながら、何食わぬ顔で市民のふりをして、王都の内部を探りにかかった。
【隠密】スキルには強い認識疎外の効果があるので、よほど不自然な行動を取るでもなければ、怪しまれることはないはずだ。
道でいくらかの市民とすれ違ってから、二人で感想を漏らす。
「やっぱりここも……」
「ああ。ほかの町や村と一緒か。十分な食事ができているようには見えないな」
王都の人々の顔色は、ご多分に漏れず、あまりよろしくなかった。
誰も彼も、やつれていて、暗い表情をしている。
そんな折のこと。
二人ほど、元気そうな人物が、道の向こうからやってきた。
「おう虫けらども、陛下のためにキリキリ働いてるか?」
「サボっちゃいねぇだろうなぁ、あぁん?」
剣や槍など抜き身の武器をひけらかしながらやってきたのは、王国騎士の勲章を身に着けた、武装した男たちだった。
活動報告にて、重要なご報告があります。
読者の皆様には、あまり望ましくない内容であるかもしれません。
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