第453話 秘密基地
「で、ガヴィーノ。それって誰からの手紙なの?」
大型の木箱の上ではしたなく、あぐらをかいた赤髪の少女──クラウディアが仲間に問う。
問いかけた相手は、俺たちの荷物の届け先であったガヴィーノという名の男性だ。
場所はレクティモの町にある酒場の一軒、その地下にある貯蔵庫。
酒樽や木箱が無造作に置かれたその地下室は、かなり広いわりには荷物が少なく、十人ほどが入っても窮屈すぎることはない。
実際にも今、十一人の覚醒者(と、ペット一体)がこの場にたむろしていた。
うち三人は俺、風音、弓月だ。
ペットはグリフ。
残りの八人は、現国王の横暴に反抗する「レジスタンス」のメンバーなのだそうだ。
クラウディアと、広場で倒れていた冒険者たちである。
この酒場の地下室は、レジスタンスの秘密基地のようなものらしい。
酒場のマスターも、彼らレジスタンスと志を同じくする仲間だ。
ほかにもこの街には、戦闘能力こそないものの、レジスタンスに協力する人が何人もいるという。
クラウディアから問われた男性、ガヴィーノさんが答える。
「手紙の送り主は、アルベローニ伯だ」
「へぇ、リカルドのおっさんからか。何が書いてあんの?」
「おっさんって……お前な。伯爵だぞ。少しは敬意というものを持て」
「えー、めんどくせぇ。ていうかさ、あたしって王家の血を引いてて、事がうまくいったらあたしが王様になるんだろ? ガヴィーノこそあたしに敬意を払っといたほうがいいんじゃねぇの? にしししっ」
「うぐっ……。ま、まあ、それはそうだが。では最初に会った頃のように『クラウディア様』と呼べばいいのか?」
「うぇーっ。いやマジに取んなよ、冗談だって。今まで通りクラウにしてくれ。今さらガヴィーノに様付けなんてされたら鳥肌立つわ。んで、内容は?」
「『好機到来』だそうだ。各地の貴族たちへの根回しは、盤石とは言えないが最低限は済んでいる。これ以上の好機が、今後訪れるとは思えないと。私も同感だ。もちろん彼ら次第ではあるが──」
そう言ってガヴィーノさんは、俺たちのほうへと目を向ける。
同時に仲間たちに向けて、手紙を差し出す仕草を見せた。
ほかの仲間たちが寄り集まって、手紙を受け取って内容を見る。
クラウディアも「よっ」と言って木箱から跳び降り、手紙を見る集団に参加した。
なおクラウディアを除く七人は、先の戦いで戦闘不能状態となっていたが、幸いなことにいずれも命に別状はなかった。
弓月の【リザレクション】を使って、彼らを戦闘不能状態から回復し、場所を移動して今ここである。
一方、件の王国騎士たちはというと、彼らレジスタンスの手で全員がトドメを刺された。
捕縛をしても管理ができない、余分なリスクを負っている余裕はない、というのが理由だった。
俺は思うところがあったし、風音と弓月も顔色は良くなかったが、手出しや口出しはしなかった。
何かひどく間違ったことに加担してしまったのではないかという不安もあったが、今さら後戻りもできない。
それと同じようなことは、ガヴィーノさんやクラウディアも話していた。
広場で王国騎士たちにトドメを刺し「これで後戻りはできんな」と言ったガヴィーノさんに、「今さらじゃね?」と応じたクラウディア。
「そうだな」と言ってふと笑い、クラウディアの頭をわしゃわしゃとなでたガヴィーノさんと、「子供扱いすんなっつってんだろ」と顔を赤らめ拗ねた様子で手を押しのけたクラウディアが印象的だった。
ちなみに俺たちは王国騎士たちを倒した段階で一つ、リカルドさんからの配達物をガヴィーノさんに渡した時点で一つ、特別ミッションを達成していた。
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特別ミッション『少女を襲っていた王国騎士たちを、すべて打倒する』を達成した!
パーティ全員が150000ポイントの経験値を獲得!
六槍大地が63レベルにレベルアップ!
弓月火垂が63レベルにレベルアップ!
現在の経験値
六槍大地……5584854/5984291(次のレベルまで:399437)
小太刀風音……5254536/5464572(次のレベルまで:210036)
弓月火垂……5471801/5984291(次のレベルまで:512490)
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特別ミッション『領主リカルドの依頼を受け、レクティモの町にいるガヴィーノに荷物を届ける』を達成した!
パーティ全員が30000ポイントの経験値を獲得!
現在の経験値
六槍大地……5614854/5984291(次のレベルまで:369437)
小太刀風音……5284536/5464572(次のレベルまで:180036)
弓月火垂……5501801/5984291(次のレベルまで:482490)
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荷物配達の報酬である大金貨30枚も、あれこれのお礼の言葉とともに、ガヴィーノさんから受け取った。
リカルドさんからの荷物の中に、お金も入っていたようだ。
というわけで形式上、俺たちの用事はすでに済んでいるわけだが──
用事が済んだのでさようなら、という雰囲気ではないよな。
ガヴィーノさんは、仲間たちが手紙をあらかた読み終えたのを確認してから、あらためて俺たち三人のほうへと向き直る。
金髪碧眼のいかにも真面目そうな偉丈夫で、年の頃は二十代中頃から後半ぐらいに見える。
彼は俺たちに向かって、こう伝えてきた。
「あなたがたに、折り入って頼みがある。私たちレジスタンスは──といっても戦力はこの八名のみだが──現国王の打倒を目的としている。どうか私たちに協力していただけまいか。成功報酬になるが、あなたがたの実力に見合った報酬は約束する。どうか──お願いしたい!」
ガヴィーノさんは深々と頭を下げてきた。
さらにクラウディアも、
「あたしからも、頼む! きっとこれっきりのチャンスなんだ。あんたたちが手伝ってくれれば希望はある。あたしたちを、この国のみんなを助けてほしい!」
そう言ってガバッと頭を下げた。
ほかの六人も、「頼む」「キミたちが希望なんだ」と口々に言って、深く頭を下げてくる。
「えっとー……大地くん、どうしよ」
八人から一斉に頭を下げられ、風音が困った様子を見せる。
「先輩。うちは先輩の犬っすから、先輩のあとについていくっすよ。くぅーん」
弓月は俺の服の裾を引っ張りながら、仔犬のようなつぶらな瞳で俺を見上げてきた。
いつもながら人前で誤解を招くことを言うのはやめような。
そして──ピコンッ。
いつもの通知音が脳内に響き、メッセージボードが表示された。
ですよねー、出ますよねーと思いながら、その内容に目を通した俺だったが──
「「「げっ……」」」
そこで俺たち三人の声がハモった。
メッセージボードにはこう記されていた。
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特別ミッション『レジスタンスに協力して、現国王を打倒する』が発生!
ミッション達成時の獲得経験値……500000ポイント
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50万ポイント、だと……?




