第449話 ストリップショー
隊長格に騎士は、敵わぬ抵抗をする女性を背後から取り押さえ、その首元に剣の刃を突きつけた。
女性の顔が恐怖にひきつり、抵抗が止まる。
「なっ……!? テメェ、何やってんだよ! テメェらの目的は、あたしたちレジスタンスなんだろ! その人はもう関係ねぇだろうが!」
覚醒者の少女が叫ぶ。
だが隊長格の騎士は、愉快げに笑う。
「だから貴様は何も分かっていないというのだ。我ら騎士が国の民を守るのは、それが陛下に利益をもたらす『財』であるからに過ぎない。しかしこの女は、陛下の遣いである我らに反抗した。いずれ陛下に仇をなす腐った果実だ。だから──」
「や、やめろっ! あたしは何でもするから、今すぐその人を放せ!」
隊長格の騎士が、捕らえた女性の首を斬ろうとする動きを見せたとき、覚醒者の少女がその言葉を放った。
隊長格の騎士の手が、ギリギリのところで止まる。
捕らえられた女性の首筋には、剣の刃がわずかに触れており、赤い筋から少量の血が流れ落ちた。
隊長格の騎士が、女性の首から剣を離し、くくくっと笑う。
「『何でもする』か、いい言葉だ。ではまず武器を捨てろ」
「……わ、分かった」
覚醒者の少女は、腰のベルトに提げていた剣を鞘ごと手にとって、それを地面に放り投げた。
「では次は鎧だ。脱ぎ捨てろ」
「な、なんでそんなこと。武器だけ捨てれば十分じゃ……わ、分かったよ」
指示に従うしかない少女は、次に胸当てなどの防具を脱いで、これも放り投げた。
隊長格の騎士は、ニヤニヤと笑う。
そして次には、少女に向けてこう指示した。
「よし。次は服をすべて脱げ」
「は……?」
今度こそ少女は、呆気にとられた。
何を言われたのか、にわかに理解できなかったのだ。
隊長格の騎士は、なおもニタニタと笑い、こう続ける。
「聞こえなかったのか? この場でストリップショーをしてみせろと言ったのだ。『何でもする』のだろう? それとも──」
「わ、分かった! やる、やるよ、やればいいんだろ!」
女性の首元に再び刃が突きつけられたのを見て、少女はあきらめの声を発する。
そして自ら、衣服を脱ぎ捨てはじめた。
「くそっ……何の意味があるんだよ、こんなの……ただいたぶって遊んでるだけじゃねぇか……」
多くの民衆に見られている中で、羞恥に頬を赤く染めながら、最後の一枚まで脱ぎ捨てた少女。
全裸の姿で、隊長格の騎士を睨みつける。
「これで終わりか? だったらその人と、ほかの人たちも全員解放しろ。もういいだろ。あたしのことはとっ捕まえるなり何なり、好きにすればいい。でも町の人たちは解放してやってくれ」
「自己犠牲の精神か。裸にひん剥いてやったというのに、高潔が過ぎるな。貴様は英雄であってはならんのだ。反逆者クラウディアは浅ましい一匹のメス犬に過ぎないと、民に教えてやらねばならぬ」
隊長格の騎士は、捕えていた女性を無造作に放り捨てると、覚醒者の少女のもとへと歩み寄っていく。
そして全裸の少女の目の前に立つと、その手で少女のあごをくいと持ち上げ、こう言った。
「最後の命令だ。反逆者クラウディア、貴様はここで犯されろ。衆人環視のもと、男どもの慰み者となるのだ。一晩じゅう輪姦され、あえぎ続けろ。貴様が高潔さのかけらもない浅ましいメス犬なのだと、誰の目から見ても明らかになるようにな」
「なっ……!?」
さしもの少女も、言葉を失った。
ほかの四人の騎士たちからは、口笛や歓声があがる。
しかし少女がためらったのは、わずかの間だけだった。
彼女は大きくため息をつき、こう返した。
「分かったよ、クズどもが。好きにしろ。その代わりそこの人たちは今すぐ解放しろ。それが条件だ」
「くくくっ、潔いな。いいだろう」
隊長格の騎士は兵士たちに、捕縛された町民の解放を命じる。
兵士たちはロープを切り、捕えられていた者たちに「行け」と伝えた。
しかしそのうちの一人──先ほどまで虐げられていた女性が、太ももの大怪我をおしてその場でよろよろと立ち上がり、叫ぶ。
「ダメよ、クラウ! あなたはこの国のすべての人々の希望でしょう! 私たちなんかのために、あなたの身を犠牲にするなんて、そんなのはダメ!」
しかし少女は、うつむいた顔に一瞬だけ微笑むような表情を浮かべた後、すぐに面持ちを変えて女性に冷たい目を向ける。
「あんた誰だっけ。どこかで会ったことあった? 目障りだから早くどっか行ってよ。それともあたしがレイプされるところを見たいわけ?」
「……っ! クラウ、何を──ちょっ、何をするのアンジェロ、放して!」
「いいから行くぞアルダ! 俺たちがいても邪魔になるだけだ!」
「でも……! クラウ、クラウ……!」
一緒に捕らえられていた男たちが、女性を無理やり引きずって立ち去っていく。
その姿を、冷たい眼差しで横目にしていた少女に、隊長格の騎士が愉快げに語りかける。
「くくくっ、どこまでも健気なことだな、小娘」
「何の話だ? さあ、やるならさっさとやれよ。あたしは逃げも隠れもしねぇから」
両手をあげて無抵抗を示す少女。
隊長格の騎士はにやにやと笑ったまま、ほかの四人の騎士たちに「やれ」と命じた。
四人の騎士たちが、下卑た笑いとともに少女のもとへとにじり寄っていく。
少女は自らの言葉どおり、抵抗の素振りを見せない。
静かに目を閉じ、運命を待ち受けた。
その額から、一滴の汗が流れ落ちる。
だが、そのとき──
「何っ!?」
「テメェら、いつの間に!」
異変を示す騎士たちの声に気付き、少女が目蓋を開く。
少女に歩み寄ろうとしていた騎士たちが、慌てた様子で周囲を見回している。
冒険者らしき武装をした男たちが、新たに数人、広場に現れていた。
少女はその口の端を、にぃっと吊り上がらせた。




