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キラーワスプ

 俺たちの正面、数十歩ほど先にある左右の木々の間から飛び出してきたのは、三体の巨大な蜂の姿をしたモンスターだった。


 ヴヴヴッと羽音を鳴らしてホバリングする巨大蜂。

 その体長は、頭頂から尻までが1メートルを少し超えるほどもある。

 臀部からは、剣ほどの長さの尾針が伸びていた。


 そいつら──「キラーワスプ」は俺たちに向かって、空中を滑るような動きで近付いてきた。


 速い。

 洞窟層で戦ったゴブリンたちの比ではない接近速度だ。


「弓月、範囲魔法頼む! 小太刀さん、一番右のやつを集中砲火します!」


「了解っす!」


「分かりました!」


 俺は自らも魔法攻撃の準備をしながら、二人の仲間に指示を出す。

 なんかいつの間にか、俺が指示出しする形が定着しているんだよな。


 接近してくるキラーワスプ。

 だが白兵戦に入るよりも早く、俺たち三人の一斉魔法攻撃が発動した。


「くらえ! 【ロックバレット】!」


「いきます! 【ウィンドスラッシュ】!」


「終焉の業火よ、すべてを焼き尽くせっす! 【バーンブレイズ】!」


 初見の相手なので、出し惜しみはなしだ。

 こちらの最大火力で落としにかかる。


 ちなみに、弓月が口にしている呪文らしきものは、魔法発動にはまったく必要ない。

 ただの中二病だと思う。


 俺が撃った岩石弾と、小太刀さんが放った風の刃が同じキラーワスプに直撃し、さらに弓月の炎の魔法が三体の巨大蜂すべてを包み込む。


 結果、集中砲火を受けた一体のキラーワスプは消滅。

 残る二体が、俺たちに向かって襲い掛かってきた。


 よし、ひとまず一体は落とした。

 順調だ。


「──はぁっ!」


 魔法発動直後に駆け出していた小太刀さんは、残りのキラーワスプのうち一体に、いつもの短剣二刀流で攻撃。

 そいつに的確にダメージを与え、あっという間に消滅させた。


 もう一体は、俺が迎え撃つ。


「これで!」


 残ったキラーワスプに向かって、ロングスピアを突き出す。


 キラーワスプが急速に軌道を変えて回避行動をとり、危うくよけられそうになったが、ギリギリどうにか命中。


 キラーワスプは表皮も身も硬く、貫通するほどの威力は出せなかったが、それでも撃破には成功した。


 そうして、キラーワスプ三体を相手にした第五層最初の戦闘は、あっさりと勝利を収めることができた。


「勝った……」


 俺はホッと息をつく。

 初見の敵と戦うときは、やはり緊張するな。


「イエーイ、大勝利っす! 楽勝だったっすね!」


「やりましたね。六槍さんも弓月ちゃんも、お疲れ様です」


 小太刀さん、弓月とハイタッチをして、第五層の順調な滑り出しを祝う。


 それから魔石を拾って回った。


 キラーワスプの魔石は、一個あたり2000円(額面)での買い取りだったはずだ。

 洞窟層・第一層のコボルドの魔石が一個あたり400円(額面)だから、実に五倍だ。


「でもキラーワスプは、第五層でも最大五体まで遭遇あるらしいからな。今のは三体だったからいいが、甘く見ていると足をすくわれるぞ」


「ですね。火垂ちゃんも、あまり油断し過ぎないように気を付けて」


「おっすおっす! こう見えてもうち、油断しないことにかけてはプロフェッショナルっすからね!」


「だといいがな」


 俺は苦笑しつつ、弓月の頭に手を置いてわしわしとなでる。

 弓月は「うきゅっ」とうめいて、こそばゆそうにしていた。


 まあバイトで一緒だった頃の弓月を見ていても、軽率で危なっかしいようでいて、致命的なミスをしたのは見た記憶がないんだよな。

 何よりムードメーカーだし、チームに一人いると重宝するキャラではある。


 キラーワスプ三体を撃破した俺たちは、再び探索を始める。


 ダンジョン探索をしていてモンスターと遭遇する頻度は、洞窟層では一時間に平均二回前後といったところだったが、そのあたりは森林層でも大差はなさそうだ。


 さらに三十分ほど探索を続けたところで、小太刀さんがモンスターの襲来を告げた。


 遭遇したモンスターの群れは、再びキラーワスプが三体。


 ひとまず問題なく勝てる相手であることが分かったので、今度はちょっと戦い方を変えてみる。


 初手、弓月の【バーンブレイズ】は変わらずだが、俺と小太刀さんの魔法攻撃をそれぞれ別のキラーワスプに向けて放ってみた。


 結果、いずれのキラーワスプも撃破され、消滅に至った。


 つまり弓月の【バーンブレイズ】+俺の【ロックバレット】、および【バーンブレイズ】+小太刀さんの【ウィンドスラッシュ】で、それぞれキラーワスプを撃墜できたという実績が得られた。


 残る一体のキラーワスプは、俺の槍の一撃を回避して迫ってきたが、そこに小太刀さんが滑り込んで短剣による攻撃で撃破した。


 敵の動きが速いから、俺ぐらいの敏捷性だと武器攻撃を回避される可能性が低くないんだよな。

 小太刀さんは危なげなく当てるんだけど。


 戦闘を終了すると、小太刀さんが最後に倒したキラーワスプが、宝箱を落とした。


 小箱型の宝箱──洞窟層では100%の確率で「HPポーション」が入っていた種類のものだ。


 例によって小太刀さんが【トラップ探知】【トラップ解除】を使ってから、宝箱を開いた。


 中に入っていたのは──


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