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第404話 作戦会議

「それでは『氷の女王』の探索と討伐について、作戦を詰めたいと思います」


 会議の場で司会を務めるソフィアさんが、そう宣言した。


 俺たちも引き受けた、フェンリル討伐に加えての「もう一つの依頼」。

 それは「氷の女王」の探索・討伐依頼だ。


 より具体的には、討伐部隊がアイスキャッスルまで足を延ばして、そこあるいはその周辺、あるいはそこまでの道中で氷の女王に遭遇したら討伐するというもの。


 存在するかどうかも分からない「氷の女王」の討伐に向けて、大戦力を動かすことに関しては、国王や国の文官たちは当初は及び腰だったと聞いた。


 だが事情が変わった。

 フェンリルの出現だ。


 かつての英雄たちが「氷の女王」を討伐したときにも、フェンリルは「氷の女王」の片腕として英雄たちの前に立ちはだかり、彼らを大いに苦しめたという。


 フェンリルの出現報告によって、「氷の女王」の存在も一気に真実味を増した。

 文官たちも「氷の女王」討伐に賛成し、国王も首を縦に振ったというわけだ。


 ただいずれにせよ、今の時代において誰一人として、「氷の女王」の存在を確認していないことに変わりはない。


 本拠地であろうと目されるアイスキャッスルに出向いて、そこに存在したならば討伐する。

 その存在が確認できなかったならば、討伐計画は終了となり、部隊は解散されることとなっている。


 ただこの点に関しては、俺はあまり心配していなかった。

 王都での会議の際、「氷の女王」討伐の依頼の話が出たときに、こんな特別ミッションが現れていたからだ。


───────────────────────


 特別ミッション『討伐依頼を受けてアイスキャッスルに向かい「氷の女王」を討伐する』が発生!


 ミッション達成時の獲得経験値……350000ポイント


───────────────────────


 いつもながらメタ情報が入ってくる類の特別ミッションだった。

 これでアイスキャッスルに行って「氷の女王」に遭遇しないパターンは、ちょっと想定しづらい。


「作戦を詰めるっつっても、今決められることは、ほぼねぇんじゃねぇか? どんな状況で遭遇するかも、どれだけの数の取り巻きを連れているかも分からねぇってんじゃ、その場で臨機応変に対応するしかねぇだろ」


 そう発言したのは傭兵隊のリーダー、ヴィダルだ。


 その横柄な態度に、「貴様、ソフィア様に対して重ね重ね、無礼だぞ!」といきり立つ騎士たちもいたが、それはソフィアさんが窘める。


「今はともに戦う仲間です。地位や礼儀についてとやかく言うよりも、実のある話をするべきです」


 そうした王女の言葉に、騎士たちはしぶしぶ従っていた。


 ソフィアさんも、王族にしては弱腰すぎるというか何というか。

 いい人なんだけど、いい人すぎるというか、庶民的なんだよなぁ。

 お付きの騎士たちも、あれはあれで大変そうだなと思った。


「ってことは、うちら全員でアイスキャッスルまでどんどこ進んで、途中で遭遇したモンスターはちぎっては投げ、ちぎっては投げしていけばいいってことっすね。そんでアイスキャッスルに『氷の女王』がいたら、そいつもぶっ倒せば任務完了っす」


 弓月がそう割って入る。

 こいつもヴィダルとは別の意味で、常に無礼講である。


 ソフィアさんは、わずかに苦笑する。


「どうにも力技ですが、そうなりそうですね。ホタル様たちのこと、頼りにしています」


「うっすうっす。大船に乗ったつもりで任せるっすよ。それにこれだけ人数がいれば、『氷の女王』だか何だか知らねーっすけど、楽勝っすよ」


 えへんと胸を張って答える弓月。


 俺が「楽勝の根拠、何もないだろ」と小声でツッコミを入れると、「そこは先輩が何とかしてくれるっす」とひどいことを言ってきた。

 こいつ後で折檻だな。


 まあ何も根拠がないと言っても、「氷の女王」自体のデータは、実は割れていたりはするのだが。


 討伐計画が現実のものとなり、文官たちが本気を出して国の資料を漁ったところ、過去に英雄たちが戦った際の【モンスター鑑定】の結果が発見されたのだ。


 ちなみにそのデータは、フェンリルが30万ポイントで「氷の女王」が35万ポイントなら、まあこのぐらいだろうという数値感だった。

 火属性が弱点であることや、ヤマタノオロチのような理不尽な強さの特殊能力を持っていない点も、フェンリルと同様だ。

 ヤマタノオロチのほうがイレギュラーだったのかもしれない。


 問題はヴィダルが言った通り、どんな状況でどれだけの数の取り巻きとともに遭遇するかが分からない点だ。

 それらの周辺条件次第で、「氷の女王」の攻略難易度は、大きく変わってくる。


 過去の英雄たちの戦いでは、「氷の女王」は百に近い数の取り巻きを連れていたというし、その質においてもイエティやフロストウルフなど侮れないものたちばかりだったという。


 いずれにせよ、この会議で話すことはあまりなかった。

 アイスキャッスルはここから北の、年中吹雪いている氷雪地帯にあるため、防寒をしっかりすることを確認されたぐらいだ。


 あと一応、補助魔法を効果的に活用するためのフォーメーションについては、この会議で提案しておいた。


 そして一休みして昼食を取り、準備が整ったら出立しようと話がまとまったのだった。



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