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第353話 戦いの後(1)

 俺たちが馬車のもとに戻ると、ほぼ同時に、ほかの二つの冒険者パーティも反対側の森の奥からやってきた。


 レグルドさんやアデラさんら、総勢九人。

 彼らのほうも誰一人欠けることなく、四体のアウルベアを仕留めてきたようだ。


 戻ってきた冒険者たちを称えたのは、依頼人である商人のマーカスさんだった。


「んんんんっ──素晴らしいっ! よくぞ私の荷物を守ってくれた、『大地の槍』の諸君! キミたちに依頼してよかったよ、ありがとう! 報酬は契約の五倍、いや七倍払おう!」


 親密感あふれる態度で俺のもとまで歩み寄り、両手で包み込むように俺の手を握ってくる。

 冒険者ギルドで初めて出会ったときとは、えらい態度の変わりようだ。


 まあ無碍にするわけにもいかないので、愛想笑いで応えておく。

 あと働きに報酬で報いてくれるのは、いい依頼人だと思う。


 マーカスさんはその後、風音と弓月の元にも行って、二人の働きも称えた。

 風音はやはり、愛想笑いで応じる。


 ちなみに弓月はというと、「うちの手を握るなら先輩の許可を取るっすよ。うちは先輩の所有物で、ペットみたいなものっすから」などと、誤解を招きかねないことを言っていた。


 お前なんなの? 俺を社会的に抹殺したいの?

 と思っていると、当人が俺に向かってニヤリとした顔を見せてきた。

 あいつ絶対、確信犯だ。


 でも本当に弓月が俺の所有物でペットだったら、どんな感じになるだろう──と思ってもやもやと想像してみたら、弓月に首輪をつけてリードを握るご主人様な俺とエロい顔でキャインキャインと鳴く弓月の姿を妄想してしまって、ぶんぶんと首を振って邪念を消し去った。

 邪悪退散。邪なるものよ退きたまえ。


 あとグリフが抗議するように弓月をくちばしでつついていた。

 一方ではその体を引っつかんで取り押さえ対抗する火垂さん。

 ペットの地位を争奪せんとする我が彼女と従魔。どういう状況だよ。


 その後、マーカスさんは残り二つのパーティもねぎらいにいく。


「『紅蓮の斧』と『ワイルドファング』の諸君もよくやってくれた。だが報酬は通常払いでいいな!」


「いや、文句はねぇけど。マーカスの旦那は少し、言い方ってもんを考えてくれねぇかな」


「あははっ、旦那らしいけどね。こっちも文句はないよ」


 レグルドさんとアデラさんが、片や苦笑しつつ、片や朗らかに笑って答える。

 まあ彼らはある意味、普通の仕事をしただけだしな。


 特別ミッション達成の通知も出ていた。

 風音が【気配察知】で十六体のアウルベアを感知した直後に、この特別ミッションが出ていたのだ。


───────────────────────


 特別ミッション『アウルベア十六体の群れをレイドメンバーと協力して撃退する』を達成した!

 パーティ全員が80000ポイントの経験値を獲得!


 六槍大地が55レベルにレベルアップ!


 現在の経験値

 六槍大地……2614804/2848853(次のレベルまで:234049)

 小太刀風音……2479636/2588024(次のレベルまで:108388)

 弓月火垂……2835451/2848853(次のレベルまで:13402)


───────────────────────


 なんかそろそろ8万ポイント程度なら日常茶飯事という雰囲気になってきたな。

 少し前までは炎と氷のダンジョンやサハギン王相手の10万ポイントを相当に怖れていた気がするのだが。


 俺たちのレベルもだいぶ上がったからな。

 ドワーフ大集落ダグマハルにいたときは30レベル台後半だったけど、今や54~55レベルだ。


 さておき。

 アウルベアが想定以上のカーニバルを見せるドタバタがあったが、気を取り直して食事再開だ。


 といっても、すでに半分以上は食べ終わっていたが。

 残りを三人と一体で楽しく食べていると、アデラさんとレグルドさんが俺たちのもとにやってきた。


「いや、おそれいったよ。まさか十二体ものアウルベアをたった三人で始末しちまうなんて。かわいい少年少女だと思っていたけど、とんだ食わせ者じゃないか」


「けど限界突破をしてんなら、先に知らせておいてくれても良かったんじゃねぇか? 結果的にうまくいったからいいが、場合によっちゃ致命的な判断ミスもあったかもしれねぇぜ」


 うーん……レグルドさんの言うことも正論なんだよな。

 基本の報連相ができていないと言われても、あまり言い訳ができない。


「す、すみません。なんというか、その……能力があるからといって扱き使われるのが嫌だなと思って。もともとAランク相当の仕事ですから」


「あー、まあな。そう考えればそうか。悪い、余計なことを言った。窮地を助けてもらっておいて、あんまりな言い草だったかもしれん」


「いえ。こちらこそすみません、自分たちのことばかりで」


「いいや、おかしなことはしてないと思うよ。それよりも本当に助かったよ、ありがとう。最初はおどおどした子だと思ったけど、頼りになるじゃないか」


 アデラさんが隣に来て、俺の首に腕を回してきた。


 信頼の証なのだろうが、座っている俺に中腰の姿勢で絡んでくるものだから、豊かな胸が顔に当たって俺はドギマギした。


 あと風音が少しムッとしているのが見えた。

 だから違うって、不可抗力なんだって。


 ついでにもう一人、わずかに拗ねたような表情を見せたレグルドさんが、強引に話を変えてくる。


「しかし何だったんだろうな、あのアウルベアの大群は。アウルベアカーニバルの時期っつったって、異常が過ぎるぜ。この時期でも一度の遭遇数は六体が過去最高だったはずだぜ」


 そんなレグルドさんの態度を知ってか知らずか、アデラさんは俺のもとから離れ、レグルドさんの隣に座る。


 俺のもとには風音がやってきて、これまた少し拗ねたような表情で「大地くん、抱っこ」と言ってきた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 大地「当たっているんですけど…」 アデラ「当ててんのよ、わざと。」
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