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朝起きたら探索者《シーカー》になっていたのでダンジョンに潜ってみる 〜1レベルから始める地道なレベルアップ〜  作者: いかぽん


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第351話 風音&火垂 vs. 五体のアウルベア

──side:小太刀風音、弓月火垂



 小太刀風音、弓月火垂の二人は、馬車のある野営地から前方へと向かって駆けていた。


「まったく、大地くんのええかっこしいにも、困ったもんだよね」


「多分アレ本人は自覚ないっすけどね。冷静に戦力分析をして最適解を出したつもりでいるっすよ」


「うん、分かる。どっちにしても私たちは──」


「そっすね。ちゃっちゃとこっちを片付けて、先輩を助けに行くっすよ」


 やがて護衛対象から十分に離れて、間違っても巻き添えを食わせないであろう位置までやってきた二人。


 その頃には、前方から迫るアウルベアの群れはすぐ目の前まで来ていた。

 あと数秒で接触という距離。


 そこで火垂は足を止め、その身に赤い魔力の燐光をまとわせていく。

 風音はそのまま、アウルベアの群れへと向かって風のように駆けた。


「──はあっ!」


 黒装束をまとった姿が、プロバスケットボール選手もかくやという俊敏な切り返しを見せつつ、二振りの短剣を閃かせる。


 一体のアウルベアが振り下ろしたかぎ爪は空を切り、代わりにその剛毛に覆われた体が斬り裂かれた。

 二条の創傷から黒い靄が大きくあふれ出す。


「っと、危なっ──ぐぅっ!」


 一方で風音も、五体いるアウルベアの攻撃のすべてを、ことごとく回避できるわけではなかった。

 次々と襲い来るかぎ爪による攻撃のいくつかはヒットし、彼女の黒装束を引き裂いて打撃を与える。


「風音さん!」


「だ、大丈夫! 二発や三発もらったところで……!」


 心配する火垂の声が聞こえてくるが、致命傷は受けていない。

 風音は素早いバックステップで、モンスターの群れからいったん距離を取っていた。


「よくも風音さんを! 範囲魔法でまとめて焼きたいところっすけど──しょーがねぇっす、【トライファイア】!」


 後衛からの援護を担当する火垂は、その前方に三つの火球を生み出す。


 森の木々が燃えて火事になる可能性はなるべく避けたいので、得意の範囲攻撃魔法【エクスプロージョン】を控えてのピンポイント攻撃だ。

 魔法と物理現象の関係は判然としないが、どうやら魔法の炎を原因とした火事は起こる可能性があるらしい。


 火垂が生み出した三つの火球は、それぞれが意志を持つかのように異なるターゲットへと向かって飛んでいく。


【モンスター鑑定】のスキルを持つ火垂の目には、先ほど風音が攻撃したアウルベアのHPが「50/270」と映されていた。


 まずはその手負いの一体に、火球のうち一つが命中。

 対象のアウルベアの巨体は黒い靄となって消滅、地面に魔石が落ちる。


 さらに別の二体にも火球は一つずつ命中し、炎によるダメージを与えた。

 二体のアウルベアは苦悶の叫びをあげるが、それだけで消滅することはない。


 火垂の目には、二体のHPがそれぞれ「156/270」「171/270」と映っていた。


「風音さん、ダメージを与えたやつを狙うっす!」


「了解! ──はぁあああああっ!」


 火球を受けて傷付いたアウルベア、その一体の懐に風音が素早く潜り込み、二振りの短剣を閃かせる。

 一瞬の後、その個体も消滅、魔石へと変わった。


 残ったアウルベアたちはなおも風音を狙って攻撃を仕掛けるが、その一連の攻防で風音が直撃を受けたのは、一撃だけだった。


 素早い動きで翻弄し、あるいは【回避強化】のスキル効果によって紙一重で攻撃を回避し、アウルベアの攻撃をなかなか寄せ付けない。


「けほっ、けほっ……でも、あと三体!」


「風音さんも、無茶しちゃダメっすよ! もう一発、【トライファイア】!」


 今度は火垂、三つの火球を無傷の一体へと集中させた。

 その攻撃により、ターゲットとなったアウルベアは消滅、魔石へと変わる。


「大丈夫、このぐらいなら、まだまだ──!」


 さらに風音が、稲妻のように動いて、手負いの一体を屠る。


 そこに襲いかかってくる最後の一体の攻撃を、風音はどうにか回避。


 すぐさま飛び退いて距離をとったところで、火垂からの三度目の【トライファイア】が飛んで、最後のアウルベアも消滅した。


 そうして五体もいた強力なモンスター、アウルベアの群れは、たった二人の女冒険者の力によってあっさりと全滅させられたのだった。


「風音さん、HP大丈夫っすか?」


 風音のもとに、火垂が駆け寄ってくる。

 風音は自らのステータスを視界に表示しながら、答える。


「うん、大丈夫。HPはまだ190残ってる。最大値が342だから、半分近くもっていかれたけど。直撃四発でこれか……大地くん、本当に大丈夫かな」


「HPとか単純な防御力だと風音さんより先輩のほうが上っすから、そう簡単にはやられないと思うっすけど……」


 大地が戦っているアウルベアは、七体いるはずだ。

 風音や火垂が戦った五体よりも数が多いうえに、向こうは一人で戦っている。


「急ごう、火垂ちゃん」


「承知っす。──先輩、マジで頼むっすよ。先輩に何かあったら、うち先輩のこと一生恨むっすからね」


 二人はポーションによるHP回復の間も惜しんで、大地が向かった方へと一目散に駆け出した。


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