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第289話 合流

──時間を少し遡り、六槍大地──



「トドメだ──【三連衝】!」


 俺はヒルジャイアントに向かって、スキル攻撃を叩き込む。

 瞬く間に繰り出された三度の突きは、巨人の体を激しく貫いた。


 衝撃でヒルジャイアントは吹き飛ばされ、地響きを立てて倒れ込む。

 一瞬の後には、その姿が黒い靄となって消滅、地面には魔石が残った。


「よし、二体目撃破っと」


 俺はヒルジャイアントの魔石を拾い上げつつ、自身に治癒魔法をかける。

 これで俺が手に入れたヒルジャイアントの魔石は二個目だ。


 ゲルゼルと別れたあと、目指していた二体目のヒルジャイアントのもとにたどり着いて、今ココである。


 そしてここで、ミッション達成の通知が来た。


───────────────────────


 ミッション『ジャイアントを4体討伐する』を達成した!

 パーティ全員が40000ポイントの経験値を獲得!


 新規ミッション『ジャイアントを10体討伐する』(獲得経験値100000)が発生!


 現在の経験値

 六槍大地……1566854/1573489(次のレベルまで:6635)

 小太刀風音……1414986/1417965(次のレベルまで:2979)

 弓月火垂……1500551/1573489(次のレベルまで:72938)


───────────────────────


 うまーっ。ミッション達成次々おかわりの椀子そばって感じだ。

 まあ次が10体だと、このクエストではここまでだろうが。


 なお俺が二体目を倒してミッション達成ということは、風音と弓月のうちどちらかがヒルジャイアントを一体撃破しているはずだ。

 炎と氷のダンジョンで倒したファイアジャイアントも数に含まれているみたいだからな。


 つまり現段階で、俺たちのパーティがヒルジャイアントの魔石を最低三個は確保したことになる。


 このフィールド全体にいたヒルジャイアントの総数は五体だったから、事実上これで勝ちが確定したと言えるだろう。


 あと心配するべきことがあるとすれば、このあとゲルゼルがどう動くかだが。


 あいつがおとなしく土下座して俺の靴を舐めて完全敗北の言葉を口にするとは思えない。

 何かイチャモンをつけてくるのか、あるいは──


「ともあれ、風音や弓月と合流だな」


 俺はひとまず、川の向こう側を目指して移動することにした。

 風音にせよ弓月にせよ、そちら側にいるから、移動しておいて損はない。


「せんぱぁい、ヒルジャイアント一体、倒してきたっすよ~!」


 しばらく移動したところで、グリフォンに乗った弓月が、空の上からぶんぶんと手を振っている姿に遭遇した。


 グリフォンが俺のもとまで降下してきて、弓月が俺に飛びついてくる。


「おっと。お疲れ、弓月」

「えへへ~。先輩、褒めてほしいっす~」


 俺は弓月を抱きとめると、その華奢な体をぎゅっと抱きしめてから、頭をなでてやる。


 後輩はすごく嬉しそうにして、仔犬のようにその身を俺にこすりつけてきた。


「無事で何よりだ。怪我はなかったか?」


「うちは大丈夫っす。でもグリちゃんが、ヒルジャイアントの岩石投げで一発やられたっすよ」


「クァ〜……」


「分かった、すぐ治す。【グランドヒール】!」


 俺が治癒魔法をかけてやると、グリフォンの傷が癒え、そのHPが完全回復する。


 ジャイアント系のモンスター、近接攻撃特化かと思っていると意外と遠隔攻撃もしてくるから侮れないんだよな。


「グリフォンもよくやった。偉いぞ」

「クアーッ♪」


 グリフォンのこともなでてやると、これまた嬉しそうにその身を俺にこすりつけてきた。

 弓月と反応が一緒である。

 というか弓月の反応が動物的だ。


「先輩、風音さんとはまだ合流してないっすか?」


「ああ。風音のほうも、順調に事が進んでいればそろそろだと思うが」


 そんな話をしていたときだ。

 どこか遠くから、こんな声が聞こえてきた。


「大地くん、助けてぇええええええっ!」

「「──っ!」」


 聞き間違えようはずもない。風音の声だ。


「先輩!」

「ああ、急ぐぞ!」


 俺、弓月、グリフォンの二人と一体は、声が聞こえてきた方角へと向かって一目散に駆け出した。


 途中でオーガとはほとんど遭遇しなかった。

 誰か──おそらくはゲルゼルあたりが掃除しながら進んだのだろう。


 やがて俺たちは、川に石橋がかかっている場所までやってきた。


 そこで向かう先から、猛スピードで駆けてくる黒装束姿を発見した。


「風音!」

「大地くん! やった、逃げ切った!」


 俺たちは風音と、石橋の真ん中あたりで合流した。

 風音が飛びついてきたので、抱きとめて、くるりと一回転してから橋に下ろす。


「よかったぁ。一時はどうなることかと思ったよ」


「助けを呼んでいたけど。大丈夫なのか、風音」


「うん、今のところはね。でも──」


 風音が、自らがやってきた方角へと視線を向ける。


 そこに風音よりしばし遅れたタイミングで、斧を手にした巨漢が姿を現した。


「ハアッ、ハアッ……くそっ、仲間と合流されたか。逃げ足の速い女め」


 息を切らせたゲルゼルが、俺たちの方を睨みつけてくる。

 どうやら風音を追跡してきたようだ。


 ここで風音が治癒魔法を要求してきたので、俺は彼女にも【グランドヒール】をかけてやった。

 風音が負っていたダメージが綺麗に癒される。


「で、風音。これはどういう状況なんだ?」


「んーとね、私が煽りすぎたせいかもしれないけど、あいつプッツンしちゃってさ。『もう勝負なんてどうでもいい、ぶっ殺してやる、犯してやる、まずはお前からだ黒ずくめ女』だって」


「……は?」


 俺はここで再びキレた。


 相変わらず何言ってくれてんのあいつ。

 マジで処していい?


 というか真面目な話、もう完全にライン越えだよな。

 人間同士だから、冒険者同士だからで争いを避けるべき領域をとうに逸脱している。


 そしてこのとき、さらに状況が動いた。


「ゲルゼルさん!」

「なんだ、どういう状況だ!?」

「これって……」


 俺たちの後方から、ゲルゼルの仲間たちが姿を現した。

 ゲルゼルの取り巻きの男二人と、弓使いの女冒険者。


 俺たちは石橋の真ん中で、前方にゲルゼル、後方にその仲間たちにといった具合に、両者に挟まれた状態となってしまった。


 その状況を見てゲルゼルがニヤリと笑い、こう言い放つ。


「よぉし、テメェらいいところに来た。そいつらをぶっ殺せ! クソ生意気な小僧と小娘を血祭りにあげるぞ!」


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― 新着の感想 ―
[一言] 大地「俺たちも限界突破なんだけど、敵対する気?」 これだけ言えば普通の人は引き下がるはず。 ゲルゼル「なんだと⁈」 直後、大地の三連撃で吹き飛ぶゲルゼル。
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