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第219話 祭り

(作者より)

 次話より更新ペースが遅くなり、週二回(火曜日と土曜日)の更新にする予定です。

 理由は……単純に執筆が追いつかなくなってきたからです。(´・ω・`)

 別にほかの作品を並行で連載しているわけでもないのですが、プロット作成が遅々として進まなかったり、連載疲れか思うように頭が働かなかったり、ほんのちょっとですが家庭の事情もあったり……です。

 遅筆すぎて恐縮ですが。以上、ご連絡でした。

 以下本編、ダグマハル編エンディングどぞー。

 ボス部屋の先にあった転移魔法陣に乗ると、光に包まれ、俺たちは元いた洞窟へと転移した。

 足元の転移魔法陣は、光の粒となって砕け散った。


 バルザムントさんたちの方はどうかと思って見にいくと、もう一つの転移魔法陣はまだ残っていて、うっすらと光を放っていた。


 心配しながら待っていると、数分たった頃に魔法陣が光を増し、やがてバルザムントさんを筆頭とした十一人のドワーフ戦士たちが姿を現した。

 転移魔法陣は光を弱め、やがて俺たちが乗ったものと同じように砕け散る。


 ドワーフ戦士たちが挑んだ仮称・氷のダンジョンも、無事にクリアされたようだ。

 俺たちはバルザムントさんたちと、再会や勝利を喜び合った。


 この炎と氷のダンジョンをクリアしたことで、モンスターのあふれ出し(オーバーフロー)現象は阻止することができたはずだ。

 集落が異常な数のモンスターに襲われるようなことは、もう起こらないだろう。少なくとも当面の間は。


 このタイミングで、ミッション達成の通知も出た。


───────────────────────


 特別ミッション『ドワーフ大集落ダグマハルのモンスター襲撃問題を解決する』を達成した!

 パーティ全員が100000ポイントの経験値を獲得!


 六槍大地が40レベルにレベルアップ!

 小太刀風音が40レベルにレベルアップ!

 弓月火垂が42レベルにレベルアップ!


 現在の経験値

 六槍大地……557634/564547(次のレベルまで:6913)

 小太刀風音……558926/564547(次のレベルまで:5621)

 弓月火垂……642301/720298(次のレベルまで:77997)


───────────────────────


 弓月一人だけ、経験値とレベルが抜きん出ていた。

 ファイアドラゴンとファイアジャイアント、二体のボスを二体とも、弓月がトドメを刺したからだろうな。


 俺と風音さんも、もうちょっとでレベルアップだ。

 これまでのパターンで考えると、41レベルでまた、修得可能スキルリストが大きく更新されるはず。

 楽しみだが、まあ過度の期待はしないでおこう。


 俺たちはドワーフ戦士たちとともに洞窟を出る。

 外はまだ雨が降っていたが、あたりはだいぶ明るくなり、雨足も弱まっていた。


 空を見上げれば、墨色に塗りたくられた雲たちはそのほとんどが遠ざかり、白い雲の合間からは晴れ間も見え隠れしている。


 俺たちは雨具を身につけ、集落へと帰還した。

 やがて雨もやみ、空は夕焼け色へと変わった。


 集落にたどり着いた頃には、夕食の準備を始めるような時刻だった。

 バルザムントさんを筆頭にした戦士たち一行は、集落の住民たちに事態の解決を告げる。

 住民たちは喜びの声をあげ、戦士たちに向けて喝采した。


 その中にはもちろん、俺たちもいたが。

 どういうわけか、バルザムントさんの合図で、ドワーフ戦士たちが一斉にその場から退いた。


 俺たちとユースフィアさんが、集落の住民たちから注目を浴びる形になる。

 バルザムントさんが、いつものよく通る声で、こう言い放った。


「彼らヒト族の勇者であるダイチ、カザネ、ホタル、それにわが友ユースフィアの助力によって、我らが集落は未曽有の窮地から脱することができた! よって俺は、この者たちを我らが集落の英雄と讃えたいと思う。どうだ、皆の者!」


 住民たちからは、さらに大きな喝采の声があがった。


 それから祭りの準備が始まった。

 集落が危機を脱したことと、新たな英雄の誕生を祝う祭り……だそうだ。


 後者の理由はさておき、集落のドワーフたちはいずれも、喜びにあふれているように見えた。

 モンスターの襲撃続きで緊張と心配を強いられる日々を送っていた彼ら彼女らにとって、祭りは苦境から解放されたことを示す象徴の役割があったのだろう。


 やがて夜が進み、準備が整うと、祭りが始まった。


 場所は、集落で最も大きいパーティホールのような洞窟住居と、その周辺一帯だ。

 たくさんのテーブルには色とりどりの豪勢なドワーフ料理やお酒が並べられ、誰もが自由に飲み食いしていいバイキング形式だ。


 俺たちは主賓ということで、立派な貸衣装を用意された。

 人間の街の王侯貴族に卸すような代物らしい。

 そんなもの貸衣装にしていいのかと思ったが、拒否するわけにもいかないので、俺たちは厚意に甘んじることにした。


 風音さんと弓月は、二人とも可憐なパーティドレスを着た姿へと変身していた。

 どっちも綺麗でかわいくて愛らしくて、俺はその姿を見ただけで悶え死にそうになった。


 ちなみに俺も、この世界の貴族風のパーティ衣装を身につけていたが、まあ俺のことはどうでもいい。

 ただ風音さんと弓月は、そんな俺の姿を見てご満悦だったようだ。


 ユースフィアさんも同様に、黒のパーティドレスに身を包んでいた。

「わしはいいと言うたのに……」とぶちぶち文句を言いながら、恥じらうように頬を赤くしている。

 肝っ玉母さんタイプのドワーフ女性たちに囲まれ着せ替え人形にされているユースフィアさんを思い浮かべて、俺はほほえましい気分になった。


 ふと見渡すと、いつか見た幼いドワーフの少女と、彼女の父親であるドワーフ戦士、それに母親のドワーフ女性が仲良く食事を取り分けている姿を目撃した。

 家族三人とも笑顔があふれていて、とても楽しそうだった。


 パーティには、旅商人エスリンさんと三人の従者たちも参加していた。

 集落側との商談がまとまったらしく、エスリンさんはほくほく顔だった。


 彼女らは旅の護衛が見付かり次第、フランバーグへと帰還する予定らしい。

 俺たちとは進路が違う。彼女らとはここでお別れだ。


 やがて音楽がかき鳴らされ、ダンスパーティが始まった。

 パーティホールの真ん中で、ドワーフたちが陽気に踊りはじめる。

 洗練されたダンスではないが、誰も彼も楽しそうだ。


「踊ろう、大地くん!」


 ミントグリーンのドレスに身を包んだ風音さんが、レースのグローブに覆われた柔らかな手で、俺の手をつかんできた。


「でも俺、ダンスなんて」


「先輩。こういうのはうまくなくても、ノリでいいんすよ」


 深紅のドレスを身にまとった弓月が、俺のもう一方の手をつかんでくる。

 俺は二人に引っ張られて、ダンスの舞台へと進み出た。


 二人にリードされ、俺は踊るというよりも、流れによって踊らされた。

 まったく不得手なはずのダンスも、二人の目を見て、手を引かれ、動きを追っていたら、なぜかそれなりに様になった気がする。

 探索者(シーカー)の運動神経も助けになったのかもしれない。


 俺の手を取った弓月が、ドレスのスカートをはためかせてくるりと回り。

 俺に肩を抱かれるように寄り添った風音さんが跳び上がったので、俺はその体をお姫様抱っこのように抱き上げる。


 風音さんは俺の頬に一瞬キスをして、パッと離れる。

 入れ替わりで俺に抱き着いてきた弓月とともに、くるりと一回転、二回転、三回転。弓月は俺の額にキスをして、頬を赤く染めた顔でにひっと笑って離れていく。


 俺たちのダンスは、ドワーフたちに大ウケだった。

 主賓を気分良くしてくれたのかもしれないが、盛り上がっていたことは間違いない。


 ユースフィアさんは踊る気はないと言っていたが、隅っこでボッチをしていたところに風音さんが駆け寄って、その手を取ってダンスを始めた。

 ユースフィアさんは顔を真っ赤にして戸惑っていた。


 俺はちょっとだけ、風音さんをユースフィアさんに取られた気がして嫉妬した。

 でも俺には弓月が付いていてくれて、これでもかというぐらい俺に密着してダンスを踊った。


 やがて風音さんと弓月が交代して、俺は風音さんと、ユースフィアさんは弓月と踊った。


 でも俺とユースフィアさんが踊ることはなかった。

 そこは風音さんと弓月が、それとなく妨害していたように見えた。

 まああの調子のユースフィアさんと俺が組んでも、変な感じになるだろうしな。


 やがて弓月は、近くにいたバルザムントさんにバトンタッチする。

 バルザムントさんに渡されたユースフィアさんは、いよいよ弄ばれ、目を回していた。


 ダンスを終えてからも、俺たちはドワーフ料理とお酒を堪能した。

 ドワーフ社会では、十歳などのかなり若いうちから飲酒をするらしい。

 人間社会でも、この世界では十五歳からが一般的だと聞く。


 ドワーフたちが好んで飲む蒸留酒は度が強すぎるので、俺たちは子供向けの果実酒などをチマチマ味わった。


 風音さんが蒸留酒(ブランデー)に挑戦したが、秒でフラフラになって俺に絡んできた。

 めちゃくちゃ抱き着いてくる。あとキス上戸。ドワーフの皆さんの前でディープなのをやられた。歓声が上がった。


 弓月も張り合って、顔を真っ赤にしながらディープなのをやってきた。また歓声が上がった。

 風音さんによる猛攻と合わせて、俺の理性は瞬く間に消し飛びそうになったが、ドワーフの皆さんが周りにいたので辛うじて耐えられた。


 ユースフィアさんはそんな俺たちを、頬を赤らめてこそこそと見ていた。

 それを見つけた風音さんがユースフィアさんのもとへ行って、肩を抱いて絡み、けらけらと笑っていた。

 俺は風音さんが、ユースフィアさんにもキスをするんじゃないかと思い、気が気じゃなかった。


 そうして、何がなんだか分からないぐらい楽しくて、幸せな時間が過ぎた。


 翌朝、宿の一室で目覚めた俺は、風音さんや弓月と同じベッドで寝ていた。

 宿の外では小鳥がチュンチュン鳴いている。頭が痛い。


 朝食後、俺たちはたくさんのドワーフたちに見送られて、ドワーフ大集落ダグマハルをあとにした。


 その後、一緒に集落を発ったユースフィアさんや、旅商人エスリンさんらとも別れる。

 ユースフィアさんはバルザムントさんに書いてもらった紹介状を手に、南に向かうとのこと。

「やれやれ、ずいぶんと無駄足を踏んでしまったわ」と言っていたが、その表情はどこか嬉しそうだった。


 エスリンさんたちは、旅の護衛をユースフィアさんに頼み込んだようだ。

 あのユースフィアさんがよく引き受けたな。どんな交渉をしたんだ。


 対して俺たちは、さらに北へ。

 ここから二日ほど北に行けば、「世界樹」があるという。

 到達すると3万ポイントの経験値がもらえるミッションがあるので、それが目当てだ。

 今になると3万ポイントは大した経験値でもない気もするが、ほかにこれといったあてもないしな。


 元の世界への帰還までは、あと81日。


 ドワーフ大集落ダグマハルから旅立った俺たちは、彼方に見える大樹を目指して、険しい山道を進んでいった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] また小鳥がチュンチュンしてましたね。
[良い点] ミッション達成!! そしてダグマハル編終了!!! 風音と弓月が仲良く煽って(笑)くるのが可愛くていいですね(^^) [一言] 更新ありがとうございます。 次章より更新頻度下がる旨了解で…
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