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朝起きたら探索者《シーカー》になっていたのでダンジョンに潜ってみる 〜1レベルから始める地道なレベルアップ〜  作者: いかぽん


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第200話 防衛戦(2)

「クロスボウ、狙いは先頭のフロストウルフだ──撃てぇーっ!」


 ──バンッ、バンッ、ババンッ!


 俺たちがいるのと同じ城塞の壁の上で、四人のドワーフ戦士たちが構えていたクロスボウから、一斉に矢が放たれた。


 狙われた先頭のフロストウルフは、攻撃を回避しようととっさに横に跳んだが、かろうじて回避できたのは一発のみ。

 残りの三発の矢が、巨大狼の胴に二本、眉間に一本深々と突き刺さり、そのフロストウルフは黒い靄となって消滅した。


 また狙いを外した一発も、そのすぐ後ろにいたイエティのどてっ腹に突き刺さっていた。

 だがこいつは倒れることなく、ほかのモンスターともども突き進んでくる。


 そしてモンスターの群れの先頭が、ついに攻撃魔法の射程距離に入った。

 そこに別の四人のドワーフ戦士たちによる、攻撃魔法が炸裂する。


「これでも食らえぃ、【エクスプロージョン】!」

「「「【ロックバズーカ】!」」」


 火属性の範囲攻撃魔法が、ごうと唸りをあげてモンスターの群れの先頭集団、数体をまとめて包み込み。

 さらに土属性の単体攻撃魔法が三発、クロスボウの矢で傷ついていた一体のイエティに殺到した。


 この攻撃で、ダメージを負っていたイエティは消滅し、魔石となった。


 だが残りのモンスターは、数体が爆炎魔法でいくらかダメージを受けた様子ながらも、構わず突き進んでくる。

 次の魔法発動やクロスボウ射撃の前には、門前に取りつかれるだろう。


 そうなれば、城塞の壁の上から攻撃を仕掛けても、フロストウルフの氷の吐息で反撃を受けることになる。

 またこの二日間でスピード修繕した門扉も、イエティの怪力によってそう長くはもたずに破壊される見込みだ。


 ──が、こっちには本命がまだ残っている。


 うちの自称大魔導士は、火属性のモンスターであるヘルハウンドやフレイムスカルには実力を発揮できなかったが、氷属性のモンスターとなればすべてが逆転する。


「うっし、うちも行くっすよ! 唸れ、終焉の劫火──【エクスプロージョン】!」


 ドワーフ戦士たちの魔法の結果を確認した直後、弓月の魔法攻撃が炸裂した。


 ドワーフ戦士が放ったものとはまるで魔力密度が異なる火球が放たれ、モンスターの群れの先頭集団の中心部に着弾、激しい爆炎を巻き起こす。


 その魔法の効果範囲内にいたのは、フロストウルフが三体と、イエティが二体。

 ドワーフ戦士の【エクスプロージョン】が巻き込んだのと同じ五体を、それよりもはるかに凄まじい爆炎が薙ぎ払う。


 爆炎がやんだあとには、範囲内のモンスターは綺麗さっぱり消滅し、五体すべてが魔石へと変わっていた。


「なっ……!? フロストウルフとイエティの群れを、範囲魔法だけで殲滅したというのか!」

「な、なんて火力だ! 同じ魔法だというのに、これほどまでとは……!」


 ドワーフ戦士たちは、弓月の魔法の威力に驚きを隠せない様子だった。

 さらに──


「風音さん、こっちも行きます!」

「うん、大地くん!」

「【ストーンシャワー】!」

「【ウィンドストーム】!」


 俺と風音さんによる追加の範囲魔法攻撃が、別の五体のモンスターをまとめて叩き伏せる。

 これはいずれも撃破には至らなかったが、大打撃を与えることには成功したはずだ。


「おおおーっ! ヒト族の若き傭兵たちは頼りになるぞ!」

「これならやれる! 門を破壊される前に叩くぞ!」

「「「おおおーっ!!!」」」


 ドワーフ戦士たちの士気も上がり、戦闘はイケイケムードで進んでいった。


 なお大半のドワーフ戦士たちは遠隔攻撃が得意でないため、門の後ろで近接戦闘用の武器を構えて待機していたのだが──

 どうやら今回、彼らの出番はなさそうだった。


「はぁーっはっはっは! うちの大舞台っすよ! まとめて吹き飛べ、【エクスプロージョン】!」


 とにかくうちの自称大魔導士が、大活躍だったのだ。


 フロストウルフなら【エクスプロージョン】の一発だけで全滅させるし、それより耐久力のあるイエティでも、俺や風音さんの【ストーンシャワー】や【ウィンドストーム】が重なれば一掃できる。


 火属性攻撃を弱点とするモンスターの集団は、弓月にとっては相性最良の敵なのだ。


 無論、モンスターどもも黙ってやられているわけではなかったが、こちらの殲滅力が圧倒的すぎて、門の破壊などの決定的打撃には到底至らなかった。


 フロストウルフの氷の吐息が、城壁の上の俺たちを狙って散発的なダメージを与えてきても、肝心の弓月は高い魔法防御力でノーダメージという無双っぷり。


 結果、絶望的なまでの大戦力だったはずのモンスターの群れは、ほとんど何もできないまま、一分と待たずに全滅することになった。


「な、なんということだ……。たった三人のヒト族の傭兵がいるだけで、これほどまでに違うものなのか……」


 集落の族長代理グランバさんは、俺たちの横で、あっけにとられた様子でその結果を見つめていた。


 俺は笑顔を作って、そんなグランバさんに声をかける。


「事前の取り決めではたしか、俺たちがトドメを刺した分の魔石は、ボーナス報酬として集落に買い取ってもらえるという話でしたよね」


「あ、ああ、その通りだ。……だがこれは、ほとんどおぬしらだけで倒したようなものではないか……」


 戦闘が終わった後の自己申告では、弓月がフロストウルフ九体とイエティ六体、俺がフロストウルフ二体とイエティ二体、風音さんがイエティ三体の撃破数で、ドワーフ戦士たちの総撃破数である六体をはるかに凌駕していた。


 またこれは後の話になるが、落ちていた魔石の総数も各自の申告内容の合計と合致していたので、討伐数は申告どおりに認められることとなった。


 結果、二十二個の魔石を集落側に買い取ってもらうことで、俺たちは金貨82枚と銀貨5枚の追加報酬を得ることができた。

 このぐらいのモンスターの群れになると、魔石報酬もバカにならないな。


 なおユースフィアさんは、戦闘が終わって少したった頃に、壁の上にひょっこりと顔を出した。


「なんじゃ、もう終わったのか。わしが手伝うまでもなかったの」


 と、遅れて来ておきながら澄まし顔で言うユースフィアさんに、ちょっとだけイラッとした。

 俺は決して、理想の人格者ではないのだ。


「まあ、結果オーライですけどね」


「ん……? 何やら不満そうじゃの、おぬし」


「別に。ユースフィアさんが、八英雄の一人である自分は、とびっきりの善人じゃぞ、なんて言っていたこととか、全然気にしてませんし」


「ぬぐっ……! ……お、おぬし、さては根に持つタイプか?」


「根暗だとは言われますね」


 とまあ、猫のように奔放なユースフィアさんに、ちょっと嫌味を言いたくなってしまった俺なのであった。


 ちなみにこの戦闘で、ミッションも一つ達成した。


───────────────────────


 ミッション『フロストウルフを5体討伐する』を達成した!

 パーティ全員が10000ポイントの経験値を獲得!


 六槍大地が38レベルにレベルアップ!

 弓月火垂が38レベルにレベルアップ!


 現在の経験値

 六槍大地……393034/441573(次のレベルまで:48539)

 小太刀風音……383126/390112(次のレベルまで:6986)

 弓月火垂……403801/441573(次のレベルまで:37772)


───────────────────────


 弓月はこの戦闘で、かなりの経験値を稼いだようだった。

 まあホント、結果オーライだな。


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― 新着の感想 ―
[良い点] > 遅れて来ておきながら澄まし顔で言う > ユースフィアさんに、ちょっとだけイラッとした。 > 俺は決して、理想の人格者ではないのだ。 うんうん、こういうセリフがリアリティあって、作者様…
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