第195話 大集落の居住地
「「「おお~っ!」」」
そこにあった光景を見て、俺と風音さん、弓月の三人は感嘆の声をハモらせた。
ドワーフ大集落ダグマハルの居住地は、段々になった山の斜面を利用して作られた、大規模なものだった。
ただ山の斜面を利用しているというだけなら、以前にお邪魔したドワーフ集落もそうだったのだが。
このダグマハルの居住地には、それと規模が違うだけではなく、もう一つ大きな特徴があった。
人々が暮らしている住居が、岩山そのものをくり抜いて加工して作られた「洞窟住居」なのだ。
ここの住民は実質、穴の中で暮らしているわけだ。
ただ穴の中といっても、各住居は見た目からして立派なものが多い。
山そのものの岩盤を利用して作られてはいるものの、その作りは石造りの一般住居とほとんど変わりないように見える。
住居の数から察するに、人口規模はおそらく千人を超えるだろう。
それも見渡す限り、住人はドワーフしかいない。
俺たちは居住地へと踏み込んでいく。
そのとき、エスリンさんが俺たちの前に進み出て、くるりと振り向いた。
「やーっ、ようやっと着いたわ。道中いろいろあったけど、これで護衛依頼は終了やね。三人ともお疲れさん、助かったわ。今回の報酬は特に高額なんで大金貨で払うけど、しっかり確認してな」
そう言ってエスリンさんから渡された巾着袋には、ずっしりとした重みがあった。
風音さんと弓月が横から覗き込んでくる中、俺は巾着袋の口を開く。
「「「おおーっ!」」」
本日二度目の感嘆の声。
巾着袋の中から、黄金色の輝きがあふれ出していた。
いや、そんな気がしただけかもしれないけど。
巾着袋の中から、金貨を一枚取り出す。
その黄金色の硬貨は、五百円玉ぐらいの大きさだが、金の比重のため五百円玉よりずっと重い。
この世界で比較的頻繁に目にする「金貨」は、別名「小金貨」とも呼ばれるもので、小指の先ぐらいの大きさしかない小さなものだ。
一円玉と比べても、かなり小さいぐらい。
だが今、巾着袋に入って渡されたものは、それとは違う「大金貨」と呼ばれる種類のもの。
大金貨は小金貨の十倍の価値がある。
俺たちの感覚だと、一枚あたり十万円ぐらいの価値がある代物だ。
ようは十グラム以上ある金のインゴットだな。
巾着袋の中身を確認すると、それが四十八枚入っていた。
こういう大金を持つと、それだけで心がウキウキしてしまうあたり、強くなっても小市民感覚はなくならないなぁと思うところだが。
まあこれと同じような数の大金貨は、以前にも受け取ったことがあるのだけれども。
いつかというと、アリアさんから依頼されて、飛竜の谷に向かう前。
あのときは目的があって、その大部分をすぐに使ってしまったわけだが。
でも今回もまた、すぐに使うことになるかもしれない。
このダグマハルには、良質の武具が売られているだろうか。
以前にドワーフ集落でもらった紹介状──バドンさん、ドドルガさん、ベルガさんが連名で書いてくれたもの──が役に立つといいけど。
そしていつものように、ミッション達成の通知も来た。ピコンッ。
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ミッション『ドワーフ大集落ダグマハルに到達する』を達成した!
パーティ全員が20000ポイントの経験値を獲得!
ミッション『Aランククエストを1回クリアする』を達成した!
パーティ全員が15000ポイントの経験値を獲得!
特別ミッション『女商人エスリンを護衛してドワーフ大集落ダグマハルまで鉱石を運ぶ』を達成した!
パーティ全員が25000ポイントの経験値を獲得!
新規ミッション『レイドクエストを1回クリアする』(獲得経験値20000)を獲得!
新規ミッション『Aランククエストを3回クリアする』(獲得経験値30000)を獲得!
新規ミッション『Sランククエストを1回クリアする』(獲得経験値30000)を獲得!
新規ミッション『海底都市に到達する』(獲得経験値50000)を獲得!
六槍大地が37レベルにレベルアップ!
小太刀風音が37レベルにレベルアップ!
弓月火垂が37レベルにレベルアップ!
現在の経験値
六槍大地……379734/390112(次のレベルまで:10378)
小太刀風音……370426/390112(次のレベルまで:19686)
弓月火垂……381651/390112(次のレベルまで:8461)
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キタキタキタキターッ! キマシタワーッ!
大物ミッションのトリプル達成で、合計60000ポイントの特大経験値ゲット!
俺たちはこのために、ここまでやってきたのだ。
レベルも上がった。
新規ミッションもいろいろと出てきた。
ウハウハだね。
──と思っていると、そこに集落の族長代理グランバさんがやってきた。
そして俺たちとユースフィアさんに向かって、こう声をかけてきたのだ。
「ヒト族の若き戦士たち、それに族長の知人だというダークエルフの娘よ。こうして我らの集落にやってきたのも何かの縁。これからワシら戦士は、会議場にてモンスター対策会議を行うのだが、よければ一緒についてきてはくれんか。おぬしらにも協力を依頼したいのだ。もちろん適正な報酬は支払うつもりだ」
新たな依頼の予感。
これまでのパターン的に、これはついていったほうがいい気がする。
少なくとも、話だけでも聞くが吉だ。
風音さんや弓月とも同意して、俺たちは対策会議とやらに参加することを了承した。
ちなみにユースフィアさんはというと──
「ふんっ、わしには関係ないの。……と、言いたいところじゃが、まあ聞くだけは聞いてやろう。どの道バルザムントが帰ってくるまで暇じゃからの」
と、素直じゃない態度を披露していた。