表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

171/448

第171話 オーガ討伐

 黒狼騎士団の七人と、エスリンさんとその従者、それに俺たち三人──合計十四人の一行は、ルクスベリー北西の門を出て、街道を進みはじめた。


 この街道の途中、次の街までの経路上に、オーガの変異種が出現したそうだ。


 変異種モンスターも通常のモンスターと同様、そのテリトリーから大きく離れることは稀らしい。

 ゆえに再びこのあたりに出没する可能性が高いとのこと。


 運よく今日じゅうに遭遇できればよし。

 そうでなければ、黒狼騎士団はさらに数日の警戒行動を続けることになるし、俺たちも特別ミッションを達成できない。


 ただその場合は、このミッションは無視して、俺たちはそのまま次の街に向かうつもりでいた。

 経験値10000は惜しいが、何日もかけて達成したいほどのものでもないし、エスリンさんの都合との兼ね合いもあるしな。


 朝に出立し、麗らかな日の光が落ちる森の中の街道を進むこと、およそ二時間。

 そこで一行は、最初のモンスターの群れに遭遇した。


 オーガが五体。

 いずれも通常種だ。


 この世界でオーガに遭遇するのは、これで二度目だ。


 人間の五割増しの背丈を持った巨体が誇るのは、筋骨隆々たる赤銅色の肉体。

 見た目はごついが、今の俺たちにとってはさほどの強敵でもない。


 それが右手側の森の奥から二体、左手側の森の奥から三体現れ、左右から挟み撃ちをされる形になったが──


「いきなり変異種に遭遇ってことはねぇか。だが妙に数が多いな」


「副団長」がそうつぶやく。

 彼らもまた、オーガに遭遇しても、落ち着いた様子だった。


 このあたりの一帯は、もとよりオーガが群れで出現する地帯らしい。

 しかし通常は、一度に遭遇する数は二体から四体程度であり、五体出現するのはイレギュラー寄りだ。


 さておき、俺は「副団長」に言う。


「で、獲物は早い者勝ちってことでいいですか?」


「ハッ、言うじゃねぇか若造。いいぜ。横入りさえしなけりゃ、魔石は倒したやつの取り分だ。──おらテメェら、ガキどもに舐められんじゃねぇぞ!」


「「「「「おう!」」」」」


「副団長」の合図で、黒狼騎士団の面々が三々五々バラバラに動き始める。


 ただ連携が取れていないわけでもなさそうだ。

 各自がどう動くかを把握しながら、阿吽(あうん)の呼吸で連携をはかっているように見える。


 ちなみに「団長」──馬上の甲冑少女は、その輪の中には入れていない模様。


 彼女はオーガの出現に応じて、慌てて剣を抜いたものの、左右から来るオーガの群れにどう対応していいか分からず戸惑っている様子だった。


 この黒狼騎士団、やはり「団長」はお飾りで、「副団長」が実質的なリーダーというのが実情のようだ。


 それはともあれ、俺たちも負けてはいられない。


「風音さん、弓月。単体攻撃で各個撃破。黒狼騎士団の動きを見て、邪魔はしないように」


「あははっ、難しいこと言うね大地くん」


「でも了解っすよ」


 早い者勝ちとは言ったものの、どう見ても我の強い黒狼騎士団の邪魔をしたら、面倒なことになるのは目に見えている。


 かと言って連携を申し出ても、話がうまくまとまるとも思えない。

 相手は俺たちのことを、口先だけの生意気な若造ではないかと疑っているのだから。


 だったらこっちが相手に合わせて、連携をとってやればいい。

 そういうことができる程度の実力を、今の俺たちは持ち合わせている。


 というわけで、俺たちは黒狼騎士団が動きやすいように援護しつつ、戦闘を行った。

 その中で、二体のオーガを撃破することに成功。


 俺の【三連衝】や弓月のフェンリルボウなら一手で撃破できる相手なので、戦況を見極めつつこの程度の戦果をかっさらうことは造作もない。


 一方で黒狼騎士団のメンバーは、合計で三体のオーガを撃破。

 人数差も考慮した上で、彼らにもそれなりに華を持たせることができたと思う。


 そしてちゃっかりと、ミッションも一つ達成だ。


───────────────────────


 ミッション『オーガを3体討伐する』を達成した!

 パーティ全員が5000ポイントの経験値を獲得!


 新規ミッション『ヒルジャイアントを1体討伐する』(獲得経験値10000)を獲得!

 新規ミッション『ファイアジャイアントを1体討伐する』(獲得経験値40000)を獲得!

 新規ミッション『フロストジャイアントを1体討伐する』(獲得経験値50000)を獲得!


 小太刀風音が35レベルにレベルアップ!


 現在の経験値

 六槍大地……253564/267563(次のレベルまで:13999)

 小太刀風音……269056/303707(次のレベルまで:34651)

 弓月火垂……276561/303707(次のレベルまで:27146)


───────────────────────


 オーガは以前に1体だけ倒していたから、これで3体討伐達成というわけだ。


 そうして戦闘を終え、魔石を回収していると、「副団長」がずんずんと俺たちのもとにやってきた。


 何だろう、何かドジったかなと思っていると──

「副団長」は俺の横につき、その腕をぐいっと俺の肩に回してきた。


「ハッハッハ、やるじゃねぇかお前ら! 思い上がった若造かと思っていたが、とんだ食わせ者だ。お前らみたいな実力ある冒険者は歓迎だぜ」


「ど、どうも」


「お前ら、俺たちが戦いやすいようにしながら、自分たちの戦果ももぎ取っていったんだろ? なまじの実力でできることじゃねぇ。認めるぜ、お前らは間違いなく腕利きの熟練冒険者だ。ツラのいい女を二人も連れたチャラチャラした野郎かと思ったが、人は見た目によらねぇもんだな!」


「あ、はい。ありがとうございます」


 どうやら俺たちの実力を認めてもらえたようだ。

 風音さんと弓月の周囲にも、黒狼騎士団の団員たちが集まって、二人の戦いぶりを称賛していた。


 よしよし、これでだいぶやりやすくなったぞ。

 侮られたままだと、連携をとるにも無駄に気を遣わないといけないからな。


 ちなみに黒狼騎士団の面々も、実力は十分であるように見えた。

 個々の実力では、ドワーフ集落の戦士たちや、エルフ集落の熟練戦士たちと同格ぐらいだ。


 さらに騎士団全体でも、前衛、射撃手、魔法火力、回復役などの役割バランスが良く、人数が六人もいればそれなりの強敵とも戦えるだろう。

 変異種モンスターの討伐部隊として選ばれただけのことはあるなと思った。


 さてこうなると問題は、一人だけだ。

 その一人──甲冑姿の少女は、今は黒狼騎士団の団員たちから叱責を受けていた。


「おいお嬢、戦闘中にうろちょろするんじゃねぇって、いつも言ってんだろ。邪魔なんだよ」


「す、すまない。だがそれでは、私はいつまでも未熟なままで──」


「それでいいんだっつってんの。いい加減分かれよな」


「そうそう。俺たちゃ団長のお守りじゃねぇんだよ。分かる、お嬢?」


「…………」


 馬上の少女は悔しそうにうつむき、瞳に涙をためていた。


 それを見た風音さんと弓月が、俺のもとに寄ってきて小声で話しかけてくる。


「ちょっとかわいそうだね。何とかしてあげられないかな」


「仲間外れはつらいっすよ。バイト先でぼっちだった先輩なら分かるはずっす」


「俺は別に仲間外れってほどでもなかったが。あと事あるごとに俺をディスるのをやめないか後輩」


「いやっすね~。これは先輩にじゃれてるんすよ。ねーっ、グリちゃん?」


「クピッ、クピッ!」


 弄ってやっているんだぞ的な、いじめっ子発言をする我が後輩。


 俺の肩に乗っているミニグリフォンは、同意するように元気に声を上げる。

 ううっ、お前だけは俺の味方だと思ったのに。


 ちなみにこのグリフォンは、今のところ戦闘要員としては稼働させずにいる。

 黒狼騎士団の面々も、ただのペットだと思っているようだ。


 それはそうと──


「弓月、お前いつかぎゃふんと言わせてやるから覚えてろよ」


「な、なんすか? うちグリちゃんと一緒に調教されるっすか? ひぃっ、グリちゃん、うちらは同じペット枠なんすよ~!」


「大地くんってば鬼畜だなぁ。火垂ちゃんをペットみたいに調教して分からせたいだなんて」


「あの、根も葉もない冤罪を広めるのはやめてもらえませんかね?」


 黒狼騎士団の方々が耳をそばだてていますよ。

 この世界での俺の人物像が、どんどん捻じ曲げられていきそうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ