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第166話 地下室

 地下へと続く石造りの階段を、俺と風音さんは足音を忍ばせて下りていく。


 階段は薄暗いが、左手側の壁に灯のついたランプが等間隔に設置されているため真っ暗ではない。


 一階ぶんほど階段を下ると、そこから先は廊下になっていた。

 ランプの灯りにより、俺と風音さんの影が、廊下の床にゆらゆらと揺れている。


 廊下を少し進んだ先では、通路が右手に折れ曲がっている。

 その先から、声が聞こえてきた。


「ぐふふふふっ……エスリンよ、そろそろあきらめてはどうだね? ここはワシの屋敷の地下牢。いくら意地を張ろうが、誰も助けに来たりはせんのだよ」


「んっ、くっ……! や、めっ……! んんんっ……!」


 地下の石造りの廊下に反響してくるのは、下卑た男の声と、エスリンさんの声だ。


 俺と風音さんは顔を見合わせ、急いで曲がり角まで駆け寄った。

 もちろん【隠密】スキルは発動しており、物音はほとんど立たない。


 曲がり角から、右手側にある通路の先を覗く。


 そこは地下牢だった。

 俺たちのいる場所から、まっすぐに廊下が続いている。

 その途中に左右三つずつ、鉄格子で仕切られた独房があり、さらに正面行き止まりにもう一つの独房があった。


 左右の独房にもちらほらと人が囚われているようだが、それよりも真っ先に目に入ったのは、正面行き止まりにある独房の光景だ。


 鉄格子で仕切られた独房の奥の石壁に、エスリンさんが鎖で繋がれて囚われていた。

 万歳するように上げさせられたエスリンさんの両手が、頭上からの鎖で吊るされている。


 そのエスリンさんの体にいやらしく手を滑らせているのは、この屋敷の主ゴルドーだ。

 そればかりか、華美な衣服と装飾品に身を包んだ肥満体は、嫌がるエスリンさんの首筋に舌を這わせようとしている。


 またその場にはもう一人、重要人物がいた。


 鎖かたびらと大剣を身につけた、髭面の巨漢。

 いつぞやエルフを誘拐していた人さらいのリーダー、「親分」だ。

 なお子分たちの姿は見当たらない。


「親分」はエスリンさんが囚われている独房の外で、鉄格子を背にしてもたれかかり、退屈そうにあくびをしていた。

 俺たちの存在に気付いている様子はない。


 彼と独房の中を隔てる鉄格子の一角には、入り口となる扉があり、今はその扉が開放されている状態だった。


「ぐひひっ、いい声で鳴くではないかエスリンよ。ほれ、もうすぐワシの手が、お前の大事なところに触れてしまうぞ」


「や、やめっ……いややっ……! ゴルドーさんっ、あんたこんなことして、許されると思ってんの!?」


「許されるのだよ。ワシほどの力があれば、お前のような小娘一人を思い通りにすることなど容易いのだ。それを分からなかったお前が愚かなのだよ」


 わずかのうちにも、ゴルドーの蛮行はどんどんエスカレートしていく。


 このとき俺の脳内でピコンッと音がして、視界にメッセージボードが現れたが、それも今はどうでもいい。


「大地くん」


「分かってます。俺が『親分』の相手をします。風音さんはエスリンさんの救出を」


「了解。──あいつ、絶対に許さない」


 風音さんと小声でささやき合ってから、俺たちはその場を飛び出した。


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