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天使はあくまで一緒にいたい  作者: みがさか
7/12

夢心地

……夢を見てるのだろうか?

俺の家に、しかもこんなお昼の真っ只中に天堂が制服姿で俺の家にいる。

どうして来たのかは、恐らく契約関係なのかもしれないけど、それどころじゃない。

今見ている光景に、自分の理解が追いつかないどころか、少し目眩を感じてしまう。

これ現実…なんだよな?俺の家のリビングに天堂がいるんだよな…?

「…ふぅん…綺麗にしてるんだね」

「へ?ま、まぁ…妹がな…」

思わず声が裏返ってしまった。

ダメだダメだ、冷静にならなくては…。

明日どうなるかは明日考えるとして、それよりも今天堂との会話をしっかりしなければ、引かれるのは勘弁だ…。

「ここ座って大丈夫?」

「お、おう…お茶でも出すか?」

「いいの?じゃあ、お願いします」

そう言って、お淑やかに座って一礼。

まるで、どこかのお嬢様なんじゃないかと錯覚してしまうほどに、その姿は印象的に映る。

お茶を入れながら、冷静さを少しづつ取り戻そう…深呼吸深呼吸…。


お茶を出し終えて1口飲み終えた後…

「それで…どうしてここに…?」

「え?どうしてって…今日秋野くん休んだでしょ?」

「そうだけど…どうしてわざわざ家に…?」

「もう…休んでるんだから、今日会えないでしょ?だから来たんだよ?」

不思議そうに首を傾げる天堂に、俺の理解と冷静に保とうとする心が落ち着かない。

え?なに?なんて?会えないから来たの?

それってまるで…俺に会いたいから来たみたいな言い方じゃないか…?!

と、勘違いしそうになる自分を正そうとお茶を口に運ぶ。

落ち着け。天堂とはそこまで関わりもないんだから、そんなロマンチックな展開になるはずがない。

たしかに最近、距離は近くなったけど、それだけでここまで親密になれている実感などないわけで…。

つまり、なにか他に理由があるはず。

自分の頭の中で理解しきる頃には、天堂が自分のそばに座り直していた。

…座り直していた!?!?!?

鼓動が早くなるのを感じる、というか心臓が持ちそうにない。

隣で優しく微笑む天堂の笑顔は、本当に天使のような輝きを放っていて…。

「ねぇ、秋野くん…」

「は、はい…!」

緊張が隠しきれない、きょ、距離が近い…!

なんか近づいてきてないか!?気のせいか!?

もうなにがなんだかわからなくなる。何が起きてるのか…。

考えが纏まらない内に、天堂は俺の手をとった。

「ジッとしててね…秋野くん…」

「えっ!?なんっ…」

なんで、と聞こうとしたが、ジッとするように言われたので、振りほどく訳にもいかない。

俺の手に重ねられた天堂の手には、青く数字が浮き出る。

そこでようやく理解が追いついた。少し冷静になれた。

そうかそうか、屋根裏に毎日行かなきゃいけないのに、今日は休んじゃったもんな。

数字の意味は分からないけど、補給が必要なんだろう。

そのために俺の家までわざわざ来て…?あれ…?

そのためだけに、授業を放って昼頃にわざわざ家に…?

そもそも、補給できない休日はどうするつもりだったんだろう?どうして俺の家を知ってる?

冷静になった頭が、一気に俺の体温を覚ましていく。

それと同時に、この天堂への疑いが強くなり、その疑問が数字を見た途端に確信に変わる。

113、112、111…とどんどん数字がへっている。

それを目の当たりにした瞬間に、俺の手は無意識に天堂(?)の手を振りほどいていた。

「わわっ…ど、どうしたの?秋野くん…?」

「誰だ…お前…?」

「…っ!?」

あの数字が何なのかはわからないけど。少なくとも減っていいものじゃないことはわかる。

天堂がわざわざ手を重ねて、増やしてくれている数字だし、減らすこともあるのかもしれないけど…。

調整するにしても、前の130まではしっかり+していいはずとも考えられた。

それに、天堂の顔に困惑などの感情が一切無いことにも…

既に、俺にこの天堂へのドキドキは、何者なのかという怖さへのドキドキに変わっていた。

咄嗟に1歩後ずさる。

「そっかぁ…ふふっ…さすがだよねぇ…わかっちゃうんだ…」

俯いた彼女から聞こえたそれは、天堂の声とは全く別人の声で…

まるで溶けていくかのように、ドロドロと顔や服が溶けていく。

「やっぱり…ふふっ…いいなぁ…すてきぃ…聖雅さぁん…」

「っ…!?」

俺の名前を…知っている…?

ドロドロと溶けた顔の後ろに、真の顔が見えてくる。

綺麗な白い髪に、いつの間に被ったのか、それとも最初から被っていたのか…

白いベレー帽を被った、黄色い瞳の美しい女性が、微笑んで目の前に立っていた。

光るように美しい外見ではあるが、しかし目に光はなく、真っ直ぐと俺を見つめていた。

「もう…隠す必要なんて無いですよねぇ…?うっふふ…」

ジリジリと近づいてくる。

「ま、待ってください…!とりあえず落ち着いてっ…!」

手を前に出し、落ち着かせようと説得を試みたが…。

「ふふっ…いただきますっ。」

そう言い放つと、急に距離を詰めてきた。

1m程の距離から鼻と鼻が当たりそうなくらいに近い距離にまでを、一瞬で。

何かしら抵抗をしようともしたが、間に合うはずもなく…。

終わったか…と目を瞑った時、耳元で彼女の声が聞こえる。

「"昨日"からよろしく…ねぇ…」

パッと目を開けると彼女は目の前から居なくなっていた。

ホッと肩を撫で下ろすと同時に、腰を抜かしてしまった。

綺麗な子だった…それは確かだったし、少しドキッともしたけど。

「あれはどっちの…ドキドキかなぁ…ふわぁ」

緊張が走っていたのか、欠伸がでる。

昨日はぐっすり眠ったはずなのだが、なんだかすごく眠くなってきた…。

ウトウトとソファの上に寝転がり、次第にまぶたが重くなっていく…。

眠る直前になって思い出す…彼女の声は聞いたことがある…。

どこかで…知らない場所で…"夢"で…?

その考えを境に、俺の意識は夢へと連れていかれていくのであった。

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