自己紹介
続けます
自己紹介が遅れた。
オレの名前はサド・ジェスティーマ。
こんなこと恥ずかしくて言いたくもないが異世界転生者だ。
今ある最後の記憶は2021年東京、17歳。
世に異世界転生モノなる小説・漫画・アニメが溢れ、飽きられ始めてもいる頃だ。
もちろん憧れなかったわけではないが、まさか自分がこうなるなんて。
そしてオレはそんな物語の主人公になりえないなんてことを自分がよく理解していた。
おまけに異世界転生モノにありがちな「ギフト」めいたものを受け取っていない。
それどころか記憶の継承すらかなり異質だ。
オレはこの世界での成長と同時に元の東京の記憶を追体験するように記憶を思い出している。
この世界で5歳の頃、オレは今の親に拾われた。
その時、確かにこんなファンタジーな世界とは似ても似つかぬ住宅街の公園の滑り台の記憶を有していた。
この世界で10歳の頃、オレは学校に通わせてもらうことになった。
この世界でこの世界の言語、歴史、算術、魔法を習いつつ、
東京の公立学校で日本の言語、歴史、算術、化学を学んだ記憶を取り戻していった。
厳密に言えばこれは転生ではないのかもしれない。
何故ならオレはまだ東京で死ぬ間際の記憶を有していない。
今持ち得ている17歳の記憶ではオレは普通に生きて普通に高校生をやっていた。
14歳の頃に取り戻した記憶として、異世界転生モノのアニメを思い出し、
ひょっとして今のオレの状態はこれに近いのではないか?と思い至ったに過ぎない。
オレは5歳の頃にこの世界には存在しない言語で、存在しない記憶を語ったことで
かなり頭のおかしな人間だと思われ、憐れまれていた。
そんなオレが自分の境遇を納得するために、自分に折り合いをつけるために得た結論こそが、
オレが異世界転生者であるというものだった。
はじめは物語の主人公よろしく何かしらチート無双してやろうなんて思っていた時期もあったが、
しかし残念ながら17歳で知りえている知識などたかが知れている。
こちらではあまり発展していないとはいえ元の世界の科学を啓蒙することなんてできない。
異世界転生者として唯一、一般人と比べてよいといえる点は、
精神年齢の熟化ではないかと思っている。
オレは現在17歳だが、17歳の人間2人分の知識と、経験と、記憶がある。
単純に34歳の精神年齢とは言わないが、それでも周りのやつらと比べるとまだ幾分か聞き分けがよく、熟慮を選ぶことができる人間に育ったと自負している。
オレはいろいろあきらめ、謙虚に敷かれたレールに乗ることを決めた。
郷に入っては郷に従え。この世界の魔法を真剣に学ぶことにしたんだ。