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Case_00_02-6

 最後の一人が話し終わり、あしかけ2時間にも及んだ5人の男達による独演会はようやく終わりを告げようとしていた。

 

 ケールシュタインで、このように私以外のものが話し続けるというのは珍しい事だが、たまにはこういうのも悪くないものだ。

 これからも、定期的にこのような事をしてみるのも一興だろう。

 


 そのようなたわいのない好奇心を脳裏の一部で思いつつ、男たちの言葉と報告書を考え直してみた。

 

 だが、結局彼らはそれぞれの立場から、自らの組織の有利になる事を中心に述べているに過ぎず、さらには自らの組織拡大に最も効果的な次の戦争相手を指名しようとしている、と要約できるだろう。

 


 陸軍は、やり残したロシアの完全な撃滅を望み、空軍は前回手打ちになった英国との決着をつけたがり、海軍はやるなら近い順に倒すべきだと言っており、統計数字だけを見る軍需相は銃よりもパンを求め、後ろ手の拳よりも差し出され開かれた右手を優先すべきだと訴え、ハイドリヒは一見言を左右にしているが、これも順番に倒すべきだと要約できる。

 もしくは逆に、それともアメリカだけは相手にするなと言っている。

 

 そしてあとはこれに各国の外交関係を加味すれば、自ずと結論が出てくる、と言うことになる。

 

 少し整理してみよう。

 


 英国の目的は、システムとしての連合王国の存続にあり、それには植民地を前提とした従来型の資本主義を必要としている。

 そしてそれ故に米日との対立が簡単に解消する事はない。

 一時的に連携したとしても、後で問題が噴き出すのが必然だ。

 

 米国は、国内市場以外を持たないための方便として自由資本主義を掲げているが、モンロー主義的な国防方針を捨てたワケではない。

 そして、日本に一度敗北して以後は、表面的な融和外交を国是としている。

 それが安上がりな国防だからだ。

 だが、自らの勢力圏とした地域もモンロー主義の中に含めるので、始末が悪い。

 

 日本は、以前は英国の模倣品のような国家を作りつつあったが、外交手段として民族自決を前面に押し出すようになってからは、経済、外交的にはむしろアメリカと性格が似通ってきている。

 また、表面的な軍事力は、列強でも最強クラスとなっている事も、彼らの気分を大きくさせる大きな原因となっている。

 手を出せば簡単に激発するだろう。

 

 そして米日に共通して言える事は、どちらもテンションの高い国民の声が、国の行く末を束縛しやすいという事であり、それ故自らの覇権維持拡大のためには市場の拡大こそが最大の目的となり、旧帝国である英国はむしろ邪魔な存在で、これはヴォルシェビキ崩壊後のロシアも同様だが、それ以上に別の意志を持った国家社会主義に強い警戒心を抱いており、ドイツが米日のテリトリーと考える場所に踏み込んだ時点で、これら二つの老廃物を利用してドイツに挑戦するという点にある。

 

 そしてタチの悪い事に、両国とも我が国との対立は防衛戦争だと定義しているので、一旦戦端が開かれたら我が国を滅ぼすまで戦争は止めない点が強く見えてくる。

 

 そしてこの事は、我が国と米日、いや世界最大の生産力を持つアメリカ合衆国の出方により、今後の世界が作られていく、と言うことになり、我が国が征くべき道は、現状維持のまま融和路線を取るか、10年前のように冒険に出るか、という事に要約できる。

 

 つまり、中途半端な行動は、かえって自らの首を絞めるだろうという事だろうか。

 いや、英国やロシアだけが相手なら、やりようもあるだろう。

 


 さて、どうしたものだろうか。

 

_______________


 Case 00-03「狼の巣」

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