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Phase 0-8


■ New Horizon-ZERO



●Phase 0-8



●海軍の現状と今後


 2003年夏、20世紀末の往還船の大量建造、2001年元旦のトラック宇宙港開港に続く日本の宇宙開発の柱となる本格的有人宇宙機が就役した。

 これらの要因と欧米諸国との協調姿勢により、日本の宇宙での優位は四半世紀は不動のものと誰もが認知していた。

 

 つまり日本帝国は、今後世界の覇権を握るための必須条件である制宙権を現時点ではその手にしていたと表現もできる。

 平和利用や学術研究などの言葉で扮飾されていたが、現実はそれだった。

 

 経済と軍事は表裏一体なのだ。

 

 この事は、宇宙に十分手が届き、宇宙の価値を正しく理解しているアメリカ、ドイツを中心とした国々における共通の認識となっていたが、現実問題で宇宙へそこまで投資できない国は諦観をもってそれを受け入れ、日本人に全てを渡す気のない大国たちは、日本人に国際協調という言葉で足枷を付け、自らの歩みを速める事で対応しようとしていた。

 

 これこそが、21世紀を迎えた時の節度ある国々の態度だった。

 


 だが、それを理解しないもしくはできない、あるいはする気もなく曲解し、あげくに妬むだけの人々は、いつの時代でもそうであるように多数存在していた。

 これは、世の中に金持ちと貧乏が存在する限り変わらぬ原則だ。

 

 それが先鋭化したのが、先述したイラクや中華民国のようなある程度の腕力(軍事力)を持った独裁国の行動だった。

 

 故に、次なる飛躍のため宇宙へ向けて邁進している列強各国も、自存自衛という大義名分のもと強大な軍備を保持していた。

 

 これを世界で消費される年間軍事費と実際の軍事力指数から見ると、世界のパワーバランスがどのようなものか分かりやすいだろう。

 

 国連による2001年の軍縮報告書によると、昨年の世界の軍事費は合計で8400億ドル、各国の国内総生産(GDP)の2.6%を占めたとされている(世界のGDPは32.3兆ドル)。

 

 そして以下が年間100億ドル以上軍事費を支出しているとされる各国ごとの数字となる。

 


◇世界各国の軍事費 (単位:ドル)

  1位 アメリカ:2446億★

  2位 日本  :1484億★

  3位 ドイツ :582億★

  4位 満州国 :405億

  5位 ロシア :388億★

  6位 フランス:342億★

  7位 イギリス:338億★

  8位 ベトナム:243億

  9位 韓国  :225億

  10位 中華民国:211億★

  11位 イタリア:205億

  12位 サウジアラビア: 183億

  13位 ブラジル:175億

  14位 インド :144億★

  15位 イラン :123億


※:★印付は核保有国

(この他、パキスタン、イスラエル、ブラジルが保有国とされている。)

 

 上の数字から、米国、日本、満州、ドイツ、ロシアの上位5カ国の軍事費は、世界の62%に達しているのが見てとれる。

 なお、国内総生産(GDP)に占める軍事費の割合は、ここ近年の世界平均の2.3%に対し、中東が6.3%と突出しているのでこの数字がそのままGDPに繋がっているわけではない。

 なお、冷戦時期ドイツやロシアはこの数字が最大12%に達したと見られており、これが両国が経済的に崩壊した最大の原因になっている。

 

 なお、この軍事費との対比で面白いのは、この数字から億の単位を取り二倍にするとロシアを除く欧米とアジア先進国が保有する航空機の数にかなり近くなるという事だ。

 

 つまり日本は全軍を合わせると約3000機の航空機を軍で運用していると見て取れるわけだ。

 

 そして、以下がアメリカを100とした場合の各国の核戦力を除く軍事指数になる。

 


◇世界各国の軍事指数 (アメリカ=100(端数切り捨て)) 

 アメリカ:100

 日本  :62

 ドイツ :28

 中華民国:21

 ロシア :16

 満州国 :14

 イスラエル:10

 イギリス:10

 フランス:9

 インド :8

 イタリア:8

 ベトナム:8

 韓国  :7

 イラン :6

 サウジアラビア:5


◇各勢力圏別合計

 北大西洋条約機構:120

 亜細亜同盟:111

 欧州連合 :73

 世界合計 :355



 この数字は、各国の兵力量と練度、運用技術程度、徴兵制度の有無、継戦能力など総合的な数字を単純化したもので、大きな陸空軍を有しているロシアや中華民国などの指数が高くなり、実戦経験豊富なイスラエルが高い評価とされ、相対的に欧州やアジア先進国の数字が軍事費に比べて低いものとなってもいる。

 特に徴兵制度の有無は、人件費と装備費比率に致命的な結果をもたらすので、それだけ差が大きくなっている。

 

 ただし、実際戦闘するとなるとこれをランチェスターモデルで数値化するので、実際の戦力計数はこの乗数で見なければいけない。

 

 それが如実に現れたのが、1991年の湾岸事変と1995年の第二次中華動乱で、それぞれ当時世界第7位、第11位とされた軍事力を有していた二つの軍事大国は、彼らの常識を超越した戦力を叩きつけられることで、少なくとも四半世紀は軍事国家として台頭できない程の打撃を受けている。

 

 また、冷戦時代戦力指数が100に迫っていた欧州連合の軍事力は、冷戦崩壊後の軍縮で大きく勢力を減退しているのがここでは示されていない変化だ。

 


 そして、もう一つこの数字に現れていないのが遠征能力、すなわち遠隔地に対する軍事力の輸送能力とその維持・補給能力だ。

 具体的には、大型輸送機の数と何より海軍にその役割の多くが求められる事になる。

 

 これは航空機が緊急展開性について、そのスピードと柔軟性、内陸進出能力など多くの点で船に勝っているが、軍や国にも経済原則を当てはめるととても費用対効果が良いとは言えない事と、一気に大量の物資を運ぶ能力において船に勝る物が存在しないという点において海軍にその負担の多くが求められる事になる。

 もしくは、その時々において使い分けられるとも言えるだろう。

 

 また、軍艦という自己簡潔性の極めて優れた戦力単位を主戦力としている点も見逃せない。

 何しろ彼らは継続的な補給さえ受けられる態勢が整えられているのなら、それこそすぐにも母国を出発し、国が求めた場所に展開できるからだ。

 この点、飛行場を必要とする航空機では、準備が全くない場所での差は歴然だ。

 

 その最たる存在が航空母艦だった。

 特に日米が多くを保有する超大型空母は、建造費、維持費などが小国の予算にすら匹敵するほど巨大なものだが、たった1隻で大国の軍事行動を抑止してしまう程の戦力価値を持った移動要塞だ。

 

 そして、彼女たちは国が求めるのなら、1ヶ月以内に世界のいかなる場所にでも展開し、その日から巨大な移動空軍基地として機能する能力を持っていた。

 これはもはや戦略兵器と呼んでも何ら差し支えないだろう。

 秀吉の墨俣一夜城どころの騒ぎではない。

 

 また、戦略兵器として忘れてならないのは、存在の秘匿性の高い水中戦力、つまり潜水艦の群たちだ。

 特に1990年代以後、日米のほとんど全ての潜水艦に長射程巡航弾が搭載され、さらにその多くにNUKE搭載・運用能力を付与する事で戦略的価値を高めている事は、ある意味空母以上の価値を鋼鉄の鯨たちに与えていた。

 これは、1990年代から世界各国で通常動力型の小型潜水艦が多数整備されていたが、その戦力価値は些かも変化していない。

 

 そして、それら戦略兵器と同じぐらいに重要なのが、大規模な陸上兵力を火急速やかに遠隔地に展開できる水陸両用戦部隊の存在だった。

 

 これは、単に大型揚陸艦だけでなく、それらを中核とした多数の各種輸送艦船の複合的な能力がトータルパワーとして重要だ。

 それは、単に大型の揚陸艦を有しているだけでは、短期的にはともかく長期戦、とくに自らが運んだ陸上部隊の展開後の後方支援、つまり補給活動がままならないからに他ならない。

 

 そして、総合的に「まともな」水陸両用戦力を有している国家は、アメリカと英国そして日本しかなかった。

 限定的能力に限れば、ドイツ、フランス、イタリア、満州、ベトナム、韓国などもあげる事はできるし、揚陸艦を保有する国は日米が旧式艦を払い下げたりしたため意外なほど多いが、戦略的に価値のある戦力を世界規模で展開できる能力を有しているのは、日英米以外にありえなかった。

 

 なればこそ、これらの国が実質的に世界を支配していたのだ。

 かなり短絡的ではあるが、この一つの事象からもその事が見て取れると断言して良いだろう。

 なにしろ、世界規模での展開能力を維持するには、生半可な予算の投入と中途半端な国家戦略ではなしえないものだからだ。

 

 そして、それら巨大な水陸両用戦力を維持させている原動力は、国家の意思とその国が持つ国力(経済力)の大きさに他ならなかった。

 


 さて、長々と回りくどく述べてきたが、何が言いたかったと言えば、21世紀を迎えた今日において世界規模での展開能力を持ち戦略的戦力を柔軟に運用できる軍備を持つ事こそが、世界のオーナーたる証であり、それをなし得る存在は日英米、とりわけ日本とアメリカだけだと言う事だ。

 

 つまり、人類が制海権の維持に注意を向けるようになってから21世紀の今日においても、外洋海軍の価値は全く何ら変わっておらず、今後もその重要性が薄れる事はない、と言う事だ。

 

 確かに航空戦力の価値の大きさも年々増大しているし、実際大型爆撃機と巡航弾、そして高度の情報網を組み合わせた「空中戦艦」構想などが空母に変わる戦力として研究されたりもしているが、何かそれ以上の革新的な技術が生まれでもしない限り、その役割が変化する事はないだろう。

 

 そして、世界の海洋戦力を二分する、世界の海洋戦力の3割を保有する日本海軍の力は今後も日本帝国が覇権国家として存続する限り変わることはなく、日本の最も頼れる楯にして矛であり、有力な外交カードであり続ける事は疑いない。

 

 では最後に、2003年4月現在の日本帝国海軍の戦力を列挙し、これを以てこの章の最後の言葉の代わりとしたい。

 


■2003年4月現在 日本海軍・主要艦艇数・航空機


・連合艦隊所属

 空母(7隻(実働6隻))

原子力空母(CVN):「赤城」、「天城」、「葛城」

13万トン ・搭載機90~110機

 原子力空母(CVN):「鳳祥」

10.5万トン ・搭載機70~90機

 攻撃空母(CV):「蒼龍」、「雲龍」、「昇龍」

10万トン ・搭載機70~90機


大型水上艦(4隻(実働3隻))

戦艦(BB)(制海艦):

「大和」、「武蔵」、「信濃」(「甲斐」(予備艦))

10.5万トン 

・51cm砲3×3 SLCM4×4 VLS×4 他多数 ・搭載機6~14機


巡洋艦(8隻(実働7隻))

打撃巡洋艦(CGA):

「剣」、「白根」、「鞍馬」(「黒姫」(予備艦))

3.5万トン 

・30.5cm砲3×2 SLCM4×2 VLS×2 他多数 ・搭載機4機


「金剛級」(CGH):

「金剛」、「比叡」、「榛名」、「霧島」

1.5万トン 

・12.7cm砲2×2  VLS×1 他多数 ・搭載機8機


駆逐艦(DDG)(38隻):

「村雨級」DDG:14隻

1.3万トン 

・12.7cm砲2×2 VLS×2 他多数 ・搭載機2機

「睦月級」DDG:12隻

1.1万トン 

・12.7cm砲2×1 VLS×2 他多数 ・搭載機2機

「天津風級」DDG:12隻

9000トン 

・12.7cm砲2×2 SAN2×2 他多数 ・搭載機2機


海防艦(DD)(20隻)

「初雪級」DD:12隻

6000トン 

・12.7cm砲2×1 SLCM4×2 SAN2×1 他多数 ・搭載機2機

「朝霧級」DD:8隻

6500トン 

・12.7cm砲2×1 SLCM4×2 SAN2×1 他多数 ・搭載機2機


・潜水艦隊所属


・潜水艦隊(54隻+α)

「長門級」弾道弾搭載巡洋潜水艦(SSBN):8隻

20,000トン ・SLBM×24 魚雷発射管×4

「薩摩級」巡航弾搭載巡洋潜水艦(SSGN):4隻

16,000トン ・SLCM8×16 魚雷発射管×4

巡洋潜水艦(SSN):28隻

7,000トン級 ・SLGM×12 魚雷発射管×4

6,500トン級 ・魚雷発射管×6~8

潜水艦(SSK):14隻

2,000トン級 ・魚雷発射管×6

潜水母艦(AS):5隻


・海軍陸戦隊付属

揚陸母艦(LPH):「祥鳳」、「瑞鳳」

60,500トン

・エアクッション艇4隻 艦載機50機 兵員2200名収容

揚陸母艦(LPH):「大隅」、「下北」、「国東」

50,400トン

・エアクッション艇4隻 艦載機40機 兵員1800名収容

汎用揚陸艦(LPA):「大鷹」、「沖鷹」、「雲鷹」

41,200トン

・エアクッション艇4隻 艦載機4機 兵員2000名収容

ドック型揚陸艦(LPD):「牡鹿」、(「高縄」、「知床」(予備役))

18.900トン、エアクッション艇2隻、艦載機2機、兵員1500名収容


他揚陸艦艇・補給艦・揚陸用輸送船多数(大型船15隻在籍)


・海上保安隊所属(地方隊)

各種海防艦(FF)(19隻)

 「くろべ級」(FF):2隻(3,500トン ヘリ×2)

 「ゆうばり級」(FF):1隻(5,500トン ヘリ×2)

 「あぶくま級」(FF):12隻(2,500トン ヘリ×1)

 「たかつき級」(DDE):4隻(+12隻がモスボール艦)

各種巡視艦(LV or LVH):多数(軽武装コルベット+ヘリ)

各種巡視艇(LB):多数(沿岸用小型高速艇)


・直轄・その他

超大型汎用母艦:「飛鳥」

通信指揮艦:「島原」、「房総」

練習空母:「飛龍」

練習艦:「鹿島」、「香取」、「香椎」、「橿原」

実験艦:「飛翔」

訓練支援艦:「黒部」、「夕張」

高速支援艦(AOE):8隻

高速給油艦(AO):6隻

高速給兵艦(AE):4隻

大型砕氷船:2隻(「白瀬」、「占守」)

掃海母艦:2隻

掃海艇:24隻

外洋型掃海艇:3隻


・海軍航空隊

母艦航空隊(各約90機):7隊(うち一つは練習航空隊)

直援飛行隊(各約30機):2隊(戦艦部隊所属)


基地対潜飛行隊(4発固定翼機装備・各20機):5隊

基地対潜飛行隊(回転翼機装備・各20機):3隊

艦載対潜飛行隊(各約40機):4隊


輸送隊:(各種合計約80機)

中型輸送機:3個中隊

小型輸送機:2個中隊

大型ヘリ :2個中隊


司令部直轄:(各種合計約20機)


総数:約1100機


海軍陸戦航空隊:3隊

(各戦爆:18機、V/STOL:18機、大型ヘリ:24機)


海上保安隊所属(地方隊):(各種合計約200機)

ヘリ海防艦所属:(回転翼機約30機)

基地隊:5個飛行隊(各捜索、輸送機約30機)


以上、この頃の海軍は実働戦力において1996年に策定された国防大綱の『新六六艦隊計画』を中核としており、最盛時に比べて航空戦力も1割程度削減されているが、これは高度情報化が個体あたりの戦闘力を高めている事による変化である。

 

ハ~イ、毎度毎度ですが、お疲れ様でした~☆

また、なんだかとってもマッタリとしていましたが、ここまでおつき合いいただきありがとうございました~☆

それにしても、中途半端でしたね~

これからもこんなのだったら、著者をとっちめてやりましょう(w

あ、そうそうここでバットエンドが一つもありませんでしたが、今のところのバッドエンドは言うまでもなく史実現在のアメリカの状態ですからね、この点忘れてはいけませんよ(笑)


 ・


 ・


 ・


 さて、これで本当にこの時間軸は幕となります。

 

 ただ、全てを書いてしまっていてアレなんですが、この「ZEROルート」はするべきではなかったかな? と言うのが書ききった直後の著者の感想です。

 

 理由は言うまでもなく、何かにつけて中途半端に過ぎるからです。

 書いた私自身がそう感じてます(汗)

 少なくとも、21世紀初頭の混乱か海軍についてかのどちらかに対象を絞って書けばよかった思います。

 おかげでなんだか、この時間軸全体が中途半端だったのかな、などとすら思えてきますよ(苦笑)

 とにかく、これも全体を見渡す間もなく送り出された週間連載がもたらした弊害の一つであり、このような泥縄な事をしてしまった私の不徳です。

 

 最後になってしまいましたが、この点ここまでつきあって下さった方へのお詫び申し上げます。

 


 それにしても、今現在、21世紀初頭の世界的混乱というは、それまでの事象とは少し異質な感じがして、どういう方向で進むのか分かりにくいですね。

 

 いや、マジで。

 


 では、また違う時間軸でお会いしましょう。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 良いベターでハッピーなラストでした。 この世界のアメリカは史実より幸運なのかもしれませんね。 この後も日本には東日本大震災や新型コロナが襲いかかっても乗り切れそうです。
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