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Phase 5-e2:第五次中東戦争

 1991年2月24~27日にかけてクウェートからイラク南部に電撃的地上侵攻を行った多国籍軍主力は、その後態勢を整えるとバグダッドへの進撃を開始した。

 

 それが引金だった。

 

 窮地に陥ったフセイン大統領率いるイラクが、これまでの戦闘で一躍有名になった「スカッド弾道弾」に各種化学弾頭を搭載して、中東の弾薬庫の心臓部に打ち込んだのだ。

 

 イラクがこの行動に出た事には諸説ある。

 多国籍軍の進撃を中東全域の大混乱でうやむやにしようとした、自らが滅びる前に「死なばもろとも」とばかりに周辺地域を混沌におとしめようとしたなどがそれだ。

 

 だが、彼らの心情などこの混乱にあってはどうでも良い事だった。

 全ては行動とその結果が問題だった。

 何しろ、イスラエル共和国の各地にマスタードガス、サリンガスなど凶悪な化学弾頭が使用されたのだ。

 いかなる理由かは分からないが、生物兵器が使用されなかったのはせめてもの幸いだった。

 だが、そんな事は何の慰めにもならなかった。

 

 これによる直接、間接の死者数は、多国籍軍が爆撃と地上侵攻で殺したイラク人の数からすれば系数的に小さな数字でしかなったが(反対に負傷者数は系数的に多かったが)、その効果は絶大だった。

 この攻撃に、それまでアメリカなどの政治工作で自重していたイスラエルが、全面的にイラクを攻撃し始めたからだ。

 

 この後はもう奈落の底へ落ちるようなものだった。

 イラクの対抗馬として中東の軍事大国化しつつあったシリアは、イスラエルとイラクに挟まれていると言う地理的要因もあり好むと好まざると自重していたが、イスラエル軍はイラク寄りの姿勢を明確に示していたヨルダンへの侵攻準備を始め、これを援護するためとそれまで多国籍軍に参加こそしていたが半ば沈黙していたエジプトが動き出し、イラクの崩壊が決定的になった事でクルド人が動き出したので自国内のクルド人の策動を阻止するためトルコ軍が活発な活動を開始し、さらにせっかく日本が押さえつけていたイランが、イラクの化学弾頭使用に神経を高ぶらせ、国境線での軍事圧力を強めていた。

 

 私が危険を承知で滞在していたペルシャ湾にある中立国のバーレーンから立ち去ろうとしていた時、空港の街頭テレビから報道されるCNNとNHKのニュースが、イスラエルがイラクに最も肩入れしていたヨルダンに電撃的侵攻を開始、ヨルダン軍主力を撃破しつつあると報道していた。

 

 こうなっては、多国籍軍が当初の作戦を中止しても何の意味もなかった。

 もう、混沌を承知で全てを一度破壊するしかないだろう。

 それがたとえ列強をこの中東により深く足を突っ込ませる事になっても、そうしなければドイツというタガの外れた状態で好き勝手な戦争を始めてしまった中東を治める事はできないからだ。

 

 そして、戦略資源の確保という点では正しい国家戦略であっても、このような政治的に難しい場所で列強各国が大軍を派遣したままという事は極めて危険だった。

 

 そして、何とか全ての国が冷静さを取り戻してくれれば良いが、その期待も薄かった。

 

 それはイラクが第一撃目でエルサレムを激しく攻撃していたからだ。

 これにより、一部キリスト教圏の大衆新聞が現代の「十字軍」としてイラクを完全に滅ぼすべしと煽り、欧米市民のかなりがこれに賛同していたからだ。

 そして、深く足をつっこんでしまった日本としてもこれに付きあわざるをえず、今後の国際政治のかじ取りを思うと悪夢でしかなかった。

 

 しかも、ついでのように原油が異常高騰を始めている。

 世界中の新聞は第三次オイルショックが到来しつつあると報じていた。

 


 そして今、この混乱の総仕上げをイスラエルがやらかしてくれた。

 イラクのさらなる化学弾攻撃の報復として、ついにニュークを使用したのだ。

 しかも、バグダッドの大統領官邸への地上爆発が確認されたと、知らせてくれなくてもよいのに軍の関係者が教えてくれた。

 


 果して今後日本を待っているのは第三次世界大戦だろうか、それともばく大な戦費とオイルショックによる未曾有の不景気だろうか。

 どちらにせよ、しばらく暗い時代が続く事になるのだろう。

 


 ・


 ・


 ・


 Bad End


 ハイ、お疲れさまでした。

 ここまできてのバッドエンドです。

 

 あ、別にこのままいっても日本にはあんまり悪影響はないんじゃないかっていう人がいるんじゃないですか?

 チョット同感て気もしますけど、まあ著者に言わせればこんなところでの本格的な介入など、生来の皮肉屋で孤高でないと気の済まないジョンブルと手前勝手な正義大好きのヤンキーに任せて、日本は無為な努力とムダ遣いをするな、だそうです。

 最終章に進むためには、一圓たりとも日本帝国はむだ遣いしていてはいけないのですっ!☆




 さて、「なんでやねん!」という吉本ギャグ的なツッコミを入れたくなりそうなオチかもしれませんが、著者はここを独断と偏見によってバッドエンドとしてしまいました。

 

 また、史実で軍事的に可能なのに政治的理由で行われなかった(であろう)バグダッド侵攻を取り扱ってみましたが、その中でも最悪の想定のと思われるものの一つをオチとしてみました。

 

 ドイツ人だろうとアメリカ人だろうとバックに誰がいようとも、フセイン政権が誕生していればその性質は同質のものでしょうから、結局史実と同じようなオチでしか戦争を終らせる事はできないでしょう(2003年春の対イラク戦争の事です)。

 

 だいいち、その方が「当面は」安上がりです(笑)

 それに、イランより西が日本にとってのアジア、共栄圏なのですから、それより西の事などおせっかいなアングロ国家に任せておけばよいでしょう。

 別段日本が色々抱え込まなくてもよい世界なのですから。

 

 それでは、正しい道のりに戻ってください。


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