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Phase 5-e1:景気後退

 1991年春にはペルシャ湾での紛争は終息した。

 

 この事は、日本にとっては石油が再び安全に供給される事をあらわしているだけで、終ってしまえば国内的には全くと言ってよいほど関係のない事と認識されていた。

 この紛争を日本がほぼ傍観で通したからだ。

 

 それよりも日本にとって懸念だったのは、その後日本全土そしてアジア全土を襲った長期に渡る不景気だった。

 

 1980年代半ばから長期にわたって好景気が継続された。

 しかも、異常な熱意を以て。

 良識を維持している一部の人々は、景気の道半ばにして極めて危険な兆候と判断していたが、目先の利益に目を奪われている一般大衆やそれに迎合したその時点での勝ち組である企業群、そしてそれを助長した関係各省庁の存在。

 それら全てが徒党を組んで「重工バブル」と呼ばれる未曾有の好景気をばく進していった。

 

 そしてそれは経済の原則に従い絶頂に達すると同時に、いつまでも好景気が続くという幻想を崩壊させ、伸び切ったゴムがやがて元にもどりそしてその反動で大きく反対側に向って伸びるように、日本経済そのものも急速に減速していくこととなった。

 

 景気は今まで通り数年で回復すると言われたが、今ではそれも虚しい言葉に過ぎず、半世紀近く前のアメリカ合衆国のような未曾有の不景気へと日本は突撃しつつあった。

 恐らくこれを回復させるにはもう10年は必要だろう。

 日本人達は好景気を偽りの平和の上に楽しみ過ぎたのだ。

 


 ターニング・ポイントはなんだったのだろうか。

 

 イランと共に国家として日本が湾岸事変に局外中立を守り、国連常任理事国として各国の経費の一部、110億円もの巨額な戦費を負担した事が原因だろうか。

 

 いや、問題はその後のアメリカとの関係冷却化だろう。

 我々が本当に和解してから四半世紀もたっていない、と言うことを失念していたのではないだろうか。

 アングロ=サクソンとはそれ程甘い民族ではない。

 

 この事変での日本の傍観が、日本は無定見な国家だと言う風評が特にアメリカ合衆国内で醸成され、これがアメリカとの経済関係を悪化させ、輸出の鈍化、そしてトドメとしてアメリカに日本円の事実上の切り下げと言う手段に手を出させる事となった。

 これが未曾有の不景気の起爆剤の一つとなったのは間違いないだろう。

 

 もちろん日本自身のいつの間にか旧態依然化した産業構造、経済構造、財政構造の改革失敗による問題も大きな原因だろうが、通貨切り下げによる大量の国外資金を失った事によるダメージは大きく、全てが徒党を組んで世界のリーダーシップを失なわせた事による日本の政治自身の後退が、この改革を難しくしたのも無視出来ないかもしれない。

 


 とにかく、うわべの言葉と虚しいだけの掛け声だけとは裏腹に、日本は一朝にして昇竜の勢いの覇権国家から斜陽の帝国への道のりをばく進しつつあった。

 

 しかし、軍備の削減は勢力圏の維持という観点から最低限度にされねばならず、となると削減すべきところは他の贅沢な国家事業という事になる。

 つまり、当時日本帝国にとっての最大級の大規模公共投資となっていた宇宙開発が大きく制限される、という事だ。

 年間国家予算の10%以上を消費している宇宙開発は、予算の圧迫という点ではこれ以上のものはなく、これを半分にするだけで国債の発行を大きく削減できるとあっては、やむを得ないとこの時の内閣は判断したらしい。

 

 確かに、国家財政という点では賢明な判断と言えるかもしれないが、これにより日本は制宙権という今後一世紀の覇権国家の座を射止めるための最大級のファクターを失うかもしれない。

 


 これが杞憂であってくれれば良いのだが・・・


 ・


 ・


 ・


 Bad End


 ハイ、恐らく予想外の「不景気バッドエンド」です。

 

 さて、ここに最初に来た皆さんは、ちゃんと皆勤賞は守りましたか?(w

 あ、そうそう、念のため確認しておきますけど、何が悪かったかは分かっていますよね。

 もし、分かっていない人は、もう一度ここ10数年程の現代史の勉強をやり直してきてくださいね(笑)





 さて、何から話すべきでしょうか。

 

 とにかく、少し強引すぎる引きでしたね。

 

 いきなり史実と似通った平行世界へと流してしまいました。

 ですが、アラブ地域で覇権国家としての発言権を維持したければ、力を伴った介入を行わなくては欧米と対抗することなどまず無理だと思います(すぐに事態がややこしくなるムスリムの人々の事はここでは考えない事にします)。

 そして、アラブ地域の石油コントロールを欧米に委ねてしまう事は日本アジアの経済運営にとっては大きなマイナス要因なのも間違いないでしょう。

 

 あと、アメリカ合衆国と本当に対等に付きあいたければ、たとえそれが綱渡り的な外交選択になろうとも常に彼らと同じ土俵に立つべきだと言う事でしょう。

 フランスのように中途半端な力で挑んでよい相手でもないんですが。

 ・・・ま、これは少しディフォルメした私見に過ぎませんけどね。

 


 では、少し戻ってトラック環礁を目指してください。


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