表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八八艦隊1934 第三章・F.R.S plus  作者: 扶桑かつみ
New Horizon

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/145

Phase 4-2:スターウォーズ


■ New Horizont_0


 ●Phase 4-2:スターウォーズ


 1983年春、首相に就任しての最初の大仕事が終った。

 もちろん、1972年5月に締結された第一次から数えて三回目となる「第三次戦略兵器制限交渉(SALT3)」とされる、ニュークの削減交渉に関する日米独の間での軍縮条約についてだ。

 交渉そのものは、新兵器を開発したとしても弾頭数においては数量的調整による現状維持に終始しましょう、という程度のものでしかなかったが、各国の間で高性能の多弾頭(MX)弾道弾が開発、配備されつつある現状を思えば歴史上最大級の軍縮交渉かもしれない。何しろこれから急速にそれこそ数倍に増えるであろう武器の数を最初から制限してしまったのだ。

 なお、当然といえば当然の話かもしれないが、数量については単なる数字合せだけでなく総破壊力数において制限が加えられていた。これは1発あたりが5キロトンしかない戦術弾頭から最大20メガトンもの熱核弾頭まで幅があったからだ。たとえごく標準的な戦略弾頭が400キロトンから1メガトンとされていても、戦略用、戦術用双方での総量を規制しないと意味がない点からもご理解いただきたい。

 そして数量制限は、細かい事はともかく米独日の間で以下のような比率にされる事が決定された。


 米:5

 独:5

 日:3


 まさに、現状の数量からの割り出された数量規制。ただそれだけだった。だが、その効果はニュークに投資されるという意味だけを見るなら、それぞれの国家に大きな効果を発揮した。

 これからしばらくは、総量を減少させると共に新兵器の代替えだけをすればよいというのは、各国にとっての大きな福音であった。この予算が別の軍事予算などに投資されなければ、という「但し」がつくが。

 なおこれを日本においてのみ見てみると、日本が保有する大威力弾頭数は、潜水艦に搭載された弾頭数10基のSLBM(潜水艦発射型弾道弾)が8隻×24発+8隻×16発で3200基。中・短距離弾道弾・巡航誘導弾用弾頭が各種400基という事になる。あとこれに、防衛兵器である迎撃用弾頭として100基が認められていた。そしてこの数字は現状の80~90%程度であった。当然米独も似たり寄ったりで、日本のこの数字にICBM(大陸間弾道弾)の保有分が加算される程度だ。

 ちなみに、この頃のニューク保有国は米独日の他には、英国、フランス、ロシア、インド、中華民国、中華人民共和国が保有確実で、他にイスラエル、パキスタンなどが潜在保有国とされていた。ただし、熱核兵器(水素融合型熱核反応爆弾)を保有しているとなると、英、仏、露のみとなる。なお、アジア諸国で保有国が少ないのは、欧州の中小国と同様に日本の核の傘に入ることを安全保障としており、経費のかかるこの兵器体系の整備を自ら選択していないだけだった。単に開発保有すると言うのなら、同種の発電所を保有する、満州国、韓国、ベトナムなども潜在保有国という事になる。

 そして、これらの国々が保有する数字は、世界を破滅するに十分な分量だったという事だ。


 そして、世界は相互確証破壊という恐怖に脅えつつも、取りあえず足かせを付けての新たな軍拡へと狂奔する事となった。軍拡の対象は、これまでニュークの影に隠れていた膨大な量の通常兵器においてだ。そしてこれが日本での『中期防衛大網』、『第三次八八艦隊計画』などという事になる。

 だが、世界中の一般市民の脅威の的となったのは、これらの通常兵器開発の目玉商品である宇宙軍備についてだった。

 1976年のドイツ宇宙軍創設、1983年の日本宇宙軍建軍、そしてアメリカの「SDI構想」発動である。

 これは、アメリカ・レーガン大統領による「スター・ウォーズ」演説により、子供にすら理解できる軍備拡張として認識される事となった。

 マスコミはこれらに熱狂した、いや国が国民を熱狂させた。SFや漫画でしかなかったものがついに現実となったと誤解もしくは錯覚したからだ。いや意図的にそうしたのだろう。この点ではアメリカの気宇壮大な宣伝と技術大国ドイツの幻想が最大限に効果を発揮したと言えるだろう。そして、日本にとっての最大の勝利は、日本での宇宙軍備が列強の中でも進んでいるのに、市民からはそう見られていなかった事だ。日本での宇宙軍建軍もドイツに対する対抗としてだけ作られた程度にしか日本国民には受け取られなかったのだ。

 だがそれが即日本の防衛網の不足とならなかったのは、濃密な弾道弾迎撃網が宇宙軍とは全く別途のものとなぜか認識されていた事による。日本軍の広報部の功績もしくは罪といってしまえばそれまでだが、一般国民は日本での宇宙軍の基本が、濃密な衛星偵察網と弾道弾迎撃機構にあったとは考えず、まさにテレビなどから伝えられるあえて幼稚に表現されたイメージのまま、SFに登場するような「宇宙戦艦」や「宇宙基地」、「戦闘衛星」などであると思い込んでいたということだ。

 また、ドイツで建造が始まった「軌道戦艦」、「宇宙要塞」の存在がこれを助長していた。当時の者ならほとんど知っているとすら言われた「フォン・ブラウン」、「ドルンベルガー」、「ヴァイツゼッカー」などの名称で呼ばれていたのがそれらの代表格にあたる。

 まあ、その実態については宇宙機に毛が生えた程度のもの、日本が運用しているような軌道基地に無理やり弾道弾を搭載したものなどで、メンテナンスや効率を考えれば実用性の極めて少ないものでしかないのは今では有名だが、市民は政府にこれに対抗できる軍備を建設しろと唱え、日本の国家予算が軍事費と宇宙開発に湯水のように消費される事を全面的に是とする事になり、実に皮肉な事にこれが日本の建設業界を中心として行われていた、不必要なまでのレベルに達しつつあったインフラ整備を目的とした公共事業にトドメを刺す事になった(1950年代国家予算の15%前後だったものが、1980年代には5%程度になっている)。明日滅びるかもしれないのに、数十年後完成する道路などどうでもよいと当時の世論が認めたのだ。そして、日本産業は新たな大規模公共事業として航空宇宙産業とそこで発生するありとあらゆる利益へと特化していく事になる。

 これにより、国家予算の一割(西暦1980年時点で国家予算は約6000億円、このうち宇宙開発の関連予算合計で約600億円で軍事費の総額の半分以上に匹敵する)が先端産業への大規模公共投資のような形で宇宙開発に注ぎ込まれる事になるのだが、ここでは軍事についてのみ取り上げよう。


 日本の宇宙軍だが、その名に反して部隊の過半は地上にあった。人員については全てが地上配置だった。既に軌道基地も存在し、軍人も宇宙に上がっていたが「軍人」として衛星軌道に居る者はなかった。軍事的にほとんど意味がないからだ。当時の技術を考えれば当然だろう。そして極論してしまえば、連合空軍時代の戦略打撃防衛網と戦略打撃軍に日本軍統合宇宙局の組織を統合したものが宇宙軍の実態と言えた。

 「最も効果的な弾道弾迎撃」、それこそが宇宙軍の存在意義だった。だから、宇宙軍というよりは防空軍と呼ぶ方が適切かもしれない。

 分かりやすくその装備でみると、攻撃力は様々な空中発射型弾道弾(分類上INF・中距離弾道弾(IRBM))もしくは巡航ミサイル(BMG or SLCM)とされているが)を搭載する超音速重爆撃機を抱える戦略宇宙打撃部隊のみだった。これはこれでかなりの戦力だったが、これだけでは組織全体の3割程度しかないのだから、宇宙軍の実態がいかに防衛を主眼に置いていたかが見て取れる。

 そして主力装備たる防衛兵器は、日本帝国が四半世紀かけて整備されただけに世界最良の技術、最大級の装備数により、当時列強の中にあって最良の布陣を備えていた。これが対米独6割の戦略兵器軍備のバランスをとっていたのだ。

 多少誇大に表現するなら、広報部が唱えていた『迎撃率99%』という宣伝文句になるだろう。

 その主力を成していたのは、低高度、高高度など全ての衛星軌道に多数展開された早期警戒衛星・偵察衛星、地上各地の超水平線電探、フェーズド・アレイ(位相配列)電探、24時間配置に就いている早期警戒管制機などのほぼ当時としては最高度の早期警戒網と、それらの情報に基づいて発射される日本の勢力圏各地に配備された地上発射型迎撃弾の数々だ。また、連合空軍と装備を同じくする、航空機搭載型の迎撃弾も運用の柔軟性の高さから重要な位置を占めていた。ただし、戦闘機は連合空軍が宇宙軍には渡さなかったので、宇宙軍の場合は懐かしの「飛鳥」重爆撃機からの発射となる。しかし、これらの多数の誘導弾に搭載された弾頭の大半は特殊ではあるが通常弾でしかなく、ごく限られたものしかニューク・ヘッドは搭載していなかった。これは軍縮条約も影響していたが、単にコストの問題がそうさせていたのだ。

 まあ、宇宙軍の実態などこの程度のものだったが、鉄壁の防空網という触れ込みは国民にはそれなりに納得されたらしく、順調に進展していた宇宙開発の後押しもあり、短期間でそれなりに認められた存在となっていた。ただ、市民やマスコミ対策として新世代の兵器とされている「レーザー光線」や「戦闘衛星」などの開発もされている事になっていた。といっても実際開発されていたのは、「レーザー光線」は謎の殺人光線や子供向け作品のようなデタラメな破壊力を持った光学兵器などではなく、あくまで誘導・測距装置、実験的な通信用としての指向性の強いだけの代物で、「戦闘衛星」も軍用目的に特化された各種偵察衛星でしかなかった。当時としては技術的限界からくるコスト面からそれしかできなかったし、それで十分と判断されていたのだ。

 もちろん、宇宙空間に対する偵察衛星の早期展開のための緊急発射用ロケットを多数確保したり、衛星軌道上からのさらなる正確な偵察方法の開発など血のにじむような努力はされていたし、自分たちが最後の盾である事を知ってる宇宙軍の士気は建軍当初から非常に高いものがあった。

 なお、宇宙軍以外の弾道弾迎撃システムは、連合空軍の戦闘機搭載迎撃弾がそれであり、海軍においては「天弓機構」を搭載した水上戦闘艦艇の全てがある程度もしくは、かなり高度な弾道弾迎撃能力を保持していた。


 日本についてはこれぐらいにして、米独の同様の計画も見ておこう。ドイツのそれは日本の堅実な軍建設とは違い、非常に誇大妄想的な要素の大きなものだった。これについては、アメリカの「SDI」も実態は似たり寄ったりなので、現場を知らない政治家の考える事などどこも同じという事だろう。

 ただ、さすがにロケット大国にして宇宙先進国であるドイツのものだけに、アメリカよりは実用性のあるものがその装備に含まれていた。(まあ、無理やり実用化したものかもしれないが。)

 日本と同様の早期警戒システムとそれによる迎撃ミサイル網などは警戒密度においては日本のそれに匹敵していた。ただし、技術的な限界から日本ほど優れた弾道弾迎撃網は保有できておらず、ためにドイツは自らの得意分野でこれを補っていたのだ。

 主力は「キラー・サテライト」と呼ばれる、自爆型戦闘衛星の配備だ。これは、衛星自らが敵の衛星にランデブーし自爆して破壊するという、単純だが実に確実な「攻撃兵器」だった。これが日米で採用されなかったのは、単にコスト・パフォーマンスの問題であり、これを兵器体系に組み込んでいたドイツの焦りとも取れるように見える。もちろん、ドイツとしては単に外交カードの一枚として活用しようとしただけかもしれない。

 そして彼らの目玉商品が、衛星軌道上に世界で唯一存在する軍事用の軌道基地と、そこと地上の基地を結ぶ形で配備されている事になっている、戦闘用宇宙機だ。

 ドイツ帝国とマスコミはこれを「宇宙要塞」、「宇宙戦艦」と呼んでいるが、実際どちらも本来貨物用に使用する開閉式ペイロードに無理やりニューク・ヘッド装備のミサイル・ランチャーを搭載しているだけの代物に過ぎない。もちろん、試作型のレーザー砲を搭載した例もあったらしいが、いかにどこか狂った所のあるドイツ人の兵器開発能力をもってしてもこれを本当に使えるレベルで実用化はできなかったようだ。

 なお、世間一般に夢想されるような「宇宙戦艦」はドイツにおいてすら建造は断念されていた。これは、当時のエンジン推力と燃費を考えたら、軌道を修正するだけで当時の宇宙船にとっては大事業だったという事を思えば理解できるだろう。どう頑張って建造できても軌道要塞の少し機動性を高めたものが限界だったのだ。そして、さすがのドイツ人たちもコストのあまりの悪さに建造を断念したのは当然といえば当然だろう。日米については言うまでもない。似たような理由で、月面基地や月面の軍事利用も彼らをしてもそれを実現できてはいない。

 また、もう一つの目玉商品は、地上設置型のレーザー砲台だった。日本でも軌道衛星砲などと呼ばれてニュースや新聞を賑わしたので覚えている方も多い事だろう。このウェポンシステムは、大電力に任せて無理やり地上から高出力のレーザー線を放ち、衛星軌道上を飛来する敵弾道弾を撃墜してしまおうという、一見まっとうだが実に狂ったウエポン・システムだった(当然、敵衛星の撃破も任務に含まれている)。

 まだ、まともじゃないかという意見もあるかもしれないが、このレーザー砲台一基のために専用の大電力供給用の原子力発電所がセットで建設されたと言えば、この「兵器」の実用面での莫迦莫迦しさが分かっていただけるだろう。ちなみにドイツ人たちはこれを「ドーラ」と呼んでおり、都合4基がドイツ本国の各所に建設され、今では人工衛星などとのレーザー通信の研究施設に改良された1基だけがアルプスの麓に現存し、残りは発電所が民需に転用され役立てられているにすぎない。これだけ無理をしても当時の技術では実用性に問題があったという事だ。

 さらにドイツ人達が狂っていたのは、このレーザー砲を専用の原子力巡洋艦を建造しこれに搭載しようとした事だろう。一説には、日本が保有する「大和級」戦艦に対する恐怖がこの狂気の艦を建造させたとも言われているが、さすがにそうでなくても艦隊を弾道弾から守るためにこのような艦艇を建造したという事は、もはや呆れるぐらいでは感情の表現ができないと言える。

 この艦については、かつての巡洋戦艦ほどもある大型艦が新たに建造され、その1、2番艦が実際レーザー砲を装備したとされているが、その後の改装後の姿にはそれらしいものは存在せず、やはり実用的ではなかったらしい。

 また、彼らの戦略兵器でもう一つ変わり種の兵器がある。と言っても熱核弾頭を搭載した兵器などではない。どちらかと言えば、宇宙戦艦などと同様に童心をくすぐられる兵器だ。

 「潜水空母」と言えば分かりやすいだろう。

 数字的な事を採り上げれば、20000トンもある二つの潜水艦を横並びにしたような内部構造の大型のSSNに弾道弾を搭載する代わりに巨大な格納庫を設け、その内部に10機程度の垂直離着陸(VTOL)戦闘機を搭載するというものだ。戦術レベルではたかだか10機の軽戦闘機の挙げられる戦果などたかがしれているが、潜水艦という隠密性に優れた兵器と併用する事で、隠密任務で使用したり、地域紛争などの局面で小技の効く奇襲兵器として開発・建造されたもので、ドイツはこれを都合3隻建造し、「水中機動部隊」という何とも珍妙な部隊を創り上げている。ただ、この兵器の実用性や有効性の最たる例として、冷戦の崩壊もあり就役から10年と経たずに1隻を除いて全て退役してしまっている事がこの兵器の何たるかを何よりも雄弁に物語っていると言えるだろう。しかも残る1隻も、特殊部隊の隠密展開に有効だとして保持され、本来の目的からは外れてしまっている。ただし、この潜水艦が早期退役した理由の一番の点は、その船体構造にあるとも言われている。


 それに引き換えアメリカの同種の計画は、「スター・ウオーズ」などと宣伝こそ大成功だったが、もともとこの手の事に合衆国国内に存在する良き倫理観とされるものが邪魔をしてたため、開始当初から日独に水をあけられており、結局開発に成功したものは、優れた探知能力を誇る軌道用合成開口電探の日米共同開発ぐらいで、アンチ・ミサイルの多くは日本からの技術導入とライセンス生産で切り抜けるしか納税者を満足させる事はできなかった。

 有名なところでは、アメリカで「パトリオット」と呼ばれている、日本でも1982年に量産配備の始まった「82式広域地対空誘導弾(82式広域弾)」がそれだ。この誘導弾は1972年にビルマでの戦訓を反映させて日満共同で開発が始まり、第三世代の対空誘導弾にして同じく第三世代の弾道弾迎撃弾として当時の日本の持てる技術の全てを注ぎ込んで作られた多目的対空誘導弾だ。10年かけてようやく量産配備にこぎつけたが、フェーズド・アレイ(位相配列)電探を捜索・誘導に使用した優れた兵器機構で、開発当初から戦術弾道弾に対する優れた迎撃能力を保持しており、これが配備される事で沿海州から向けられているドイツ製INF・IRBM・MRBMは事実上無力化されたと豪語させるに至ったものだ。『迎撃率99%』といううたい文句もこの誘導弾なくしては語れないだろう。そして、本格的な弾道弾迎撃能力を保持した改良型の開発など、いまだに進歩を続けている優れた兵器だ。

 これをアメリカは1984年から英国は1985年から導入を開始しており、これでようやくアングロ同盟も日独と同じ土俵に立てる事になったとされる。


 そして、主に日米側がこういった対弾道弾防衛システムの構築をひと段落させた頃、欧州大陸を震撼させる事態が発生した。

 ドイツ第四代総統死去のニュースが震源地だった。

 時に1987年初頭、恐らく首相としての任期も終えようという時にこの重大事が発生した事になる。

 幸いにして、世襲制のような形の元首制度にうんざりしていたらしいドイツ国民そのものは、ちまたのクライシス小説などのようなそのまま最終戦争に持ち込む事はなったが、だからと言って楽観できる状態とも言いきれなかった。

 ドイツにおいては、それ程混乱もなく(ドイツ総統制度は先代があらかじめ後継者を指名するのが習わしらしい。まあ、5回も続けばそれはそれで立派な「伝統」と言えるだろう。)、半世紀近く前の大戦中の有名人の子孫がハイドリヒの後継者として第五代総統に就任する事が決まり、彼そのものは内外から開明的との前評判が高くドイツを民主化させる方向に持っていく意向が強くあると言われていたし、実際もそうなのかもしれないが、ナチス党、一般親衛隊、その他外郭団体など既存の権力に依っている保守勢力の力はいまだ根強く、彼の改革はどう見ても国内の要素だけでは成功できそうにないと見られていた。

 そこで私というより日本帝国は、当時二期目にあったアメリカ合衆国大統領ロナルド=レーガンと図り、今後の方針について決める事となった。

 一般に我々は互いにニックネームで呼びあう仲とされる私達であったが、まあそれなりの個人的信頼関係はあると言う事で、大統領の側からこちらにいくつかの腹案を提示してきた。

 彼が腹案として提示してきたのは、改革に向っているドイツ新総統にできうる限り協力するというものと、ドイツの混乱が戦争に発展する可能性を考慮して軍事力の動員をオフレコで進めるというもの、そして事実上何もせずに傍観するというものだ。

 傍観は論外として、我々は北風になるか太陽として振る舞うかという事になるだろうか。


 

_______________


 1.ドイツ新総統との協調

  (Phase4-3 へ進む)

_______________


_______________


 2.対独軍事圧力を強化する

  (Phase4-e2 へ進む)

_______________


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ