Case_03-E3 ノイエ・エスタライヒ
「ロシア政府との停戦が成立。戦闘中の全部隊は直ちに戦闘行為を停止し、現時点から無条件に2000メートル後退せよ。なお敵包囲下にある部隊は・・・」
ウラル山脈を遠くに臨む全ての戦線に一つの通信が覆い被さった。
膨大な量の軍事援助、傭兵という名の派兵、これの次にくるものは間違いなく傍観者たちそのものの参戦・・・1949年のロシアの大地で何度か見かけられた傭兵団の存在は、欧州以外に存在する大国からのこれ以上ないメッセージだった。
少なくともドイツ中央はそう受け取った。
だからこそドイツ総統は、この時の停戦を指令したのだ。
停戦が決まった折りの演説でアドルフ・ヒトラーは、「慢性的紛争状態である東方国境の抜本的対策として、ロシアに対して我々が何が出来るのかを見せることこそが今回の戦争目的であり、ウラルを臨むまで進撃した我々の威力を全ての者たちは十分以上に思い知ったであろう」と相変わらずの調子で獅子吼し、第三国を通じてただちに停戦会議へと持ち込んでしまった。
これに呼応してロシアにあったドイツ軍以下の欧州軍も相手に付け入れられないようにしながら速やかに撤退していった。
なお、ロシア側がこの度の停戦に合意したのは、ドイツが究極の破壊兵器の使用をほのめかしたからだと言われている。
その後、1950年4月よりベルリン郊外のポツダム宮殿にてオブザーバーを踏まえてのドイツ・ロシアによる停戦会議と今後のロシア情勢を決定する会議が開催され、その中でロシアはボルガ川以東の保有を勝ち取った代わりに、それ以上の国土奪回は適わず、しかも完全な戦闘停止や非武装地帯・緩衝地帯の設置を踏まえた講和条件の調印をせざるをえず、少なくとも泥沼から解放されたドイツの勝利と世界は見るようになる。
だがドイツは戦後数年した1953年6月に、占領地域在るロシア領での分離独立を発表し、この結果ボルガ川以西のロシア地域には、それまでのバルト三国に加えて、ベラルーシ、ウクライナが独立し、民族問題的に難しいコーカサス地域には、コーカサス連邦共和国という多民族連邦国家を樹立して、その実質的支配権をドイツが握る事でバクー油田がドイツの手に確保され、そして残ったヨーロッパ・ロシアにロシア民主共和国と言う名の新たな国家が樹立され、これ以後ロシア人は、ロシア社会主義連邦共和国(東ロシア)とロシア民主共和国(西ロシア)による分裂時代を迎え、大陸勢力と海洋勢力の冷戦構造における象徴としての半世紀を過ごす事になる。
ほどほどの戦争と大国同士の適度な妥協、これこそがその後半世紀のドイツ、そして世界のそれなりの安定をもたらしたと言えるだろう。
NORMAL END 3
あとがきのようなもの3
ハイ、何だかここにもグダグダした説明の比率が大かったですね~。やっぱり陸戦主体だとヤル気が起きないんでしょうか(w
アレ、向こうで違うそんな事はないという声が聞こえたような気がしますが、聞こえなかった事にしましょう☆
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さて、ここではこのような顛末としましたが、不満を持っている方も多いのではないでしょうか?
確かにヨーロッパロシア全土を失ったロシア相手なら、欧州の過半を抱え込んだドイツは楽勝なのではと思われても不思議はないと思います。
ただここでは、「出る杭は打たれる」という古今東西普遍の外交理論に従い、アメリカと日本(+イギリス)にロシアの強く後押させてみました。
要するに太平洋という安全なルートを使って、世界の三分の二の文明世界からレンドリースを無尽蔵に受けている状態に近いワケです。
そうなると、欧州の物資と生産施設しか使えないドイツが、ロシアの深部で勝利できるかと考えると、かなり微妙なのではと思います。
何しろあそこは、な~~~んにもない場所ですからね。
ハッキリ言って近代戦争する場所じゃありませんよ。
あんな所で本気で戦争できるのは、ロシアとアメリカぐらいのものでしょう。
また、他でも書きましたが、日本の国力が英国並みかそれ以上にあり、世界がその日本と史実より少し弱いアメリカ、そして欧州で勝ち抜いたドイツ第三帝国という図式で存在する世界で、ドイツが単独で最終的に勝利できる可能性はかなり低いと想定できます。
基本的に欧州世界全てに戦争を振りまいて、欧州世界の全ての負の遺産を背負い込んだ大陸国家に過ぎないドイツに、表面的平和の中での共存(競争状態)以外の選択肢を互いに妥協してしまった海洋国家群に突きつけることは、自らの破滅もしくはそれに近い状況しか呼び込まないでしょう。
これは、史実のソ連がこれ以上ないぐらいお手本を示していると思います。
なお、ここも私が見たい世界じゃありませんので、戦闘面は可能な限り控えさえていただき(そうでもなかったかも)、別の場所でも出す予定の兵器だけに重点を置く事に留めさせていただきました。
それに、こんなミニマムな戦場どうでもいいですしね(笑)
ではまた別の平行世界で会いましょう。




