24.オ・オ・ウの口の動き
「まぁ、ユズリア以外にアリーを任せられる人もいないか。でもいいかいユズリア、アリーに手を出してごらん。いくら君でも……」
角が生えた般若のお面の口元が『コロス』と声を出さずに動いた。
いや般若のお面だからそう見えただけで、実際はきっと違うよ。
あっ、そう!
『ポトフ』だ、きっと『ポトフ』って言ったに違いない。
わ〜、なんて平和〜。
お腹空いてたんだねぇ〜。
「分かりました。殺されないように頑張ります」
おいこらユズ!!!
私の内心の誤魔化しをあっさり無効化すんじゃないよ!
知ってた、多分そうだって知ってたけど!
「あなた? 」
「ごめんなさい」
さっきまで大爆笑してた母が、額に青筋浮かべながら父を責める。
般若のお面が外れ、表れる情けない父の顔面。
結論:母強し。
「でもアリーがこの家を離れたら、寂しくなってしまうわねぇ」
「私もお父様とお母様と離れるのは寂しいです。大好きな2人ですから」
「アリィ〜……」
「あ、ちょっとそれ以上は待ってお父様」
涙ドバドバ流しながら抱き着いてこようとする父の顔面が汚い。
イケメンがしちゃいけない表情だって、いや本当に。
「ァァァ……」
抵抗虚しく抱き締められてしまった。
はい、虚無。
目が虚ろになっていくのが分かる。
でも、さっきチラッと見たユズの目の方がさらに虚ろだった。
なんでだよ!
父からようやく開放された。
このドレスに付いているキラキラの正体とかには気付いてはいけないわ、きっと妖精さん達が私を輝かせようと贈り物をしてくれたのね。
うふ、素敵!
「アリー様、それリアム様の鼻水じゃないですか?お願いですからそれ以上近づかないで下さいね」
私はユズの両頬を引きちぎる勢いで引っ張りながら、声を出さずにゆっくりと囁いた。
『ポ・ト・フ』
ユズは青ざめているようだが、私は料理名を声を出さずに言っただけ。これぞ完全犯罪!
大変長らくお待たせ致しました。
お読み下さりありがとうございます。




