アーセナル
◇
――あーー!!ちくしょう……。
カリカリしても仕方ないわけだが、
世界のトップチームなのにこんなもんか……?
いい加減、いつになったら俺の動きを理解してパスだせるようになるんだよ――!!
ブラジル戦のあとから1週間が経ったが、
新しく入ってきた【CMF】のパー○ィが使えなさすぎる――!!
はっきりいって、よくあるプレーの流れなのに、理解遅すぎるだろ・・・。
和也ならすぐに「その位置」にパスをだして、次の攻撃にも飛び込んでこれるのに――。
( またチャンス逃したじゃねぇか……‼︎ )
お決まりのチーム内での紅白戦の最中――。
スター選手だったジョ○ジーニョが年齢で
母国に帰ったっていうのに………、
――本当に、パー○ィの奴のせいで攻撃が停滞している…………。
本当、、、和也ほどうまければなぁぁぁ………。
今はバランス調整で、サブ組に入って試合にでているが――、
相手の背後への「あのパス」じゃなくても、
鋭くはやいパスとそこからのオフ・ザ・ボールの動きがあれば、
………確実に得点を決めてやれるって思えるのにーー。
今の俺たちサブ組は、わざと現代では難しいとされる。4一4-2の陣形で戦っているが、
ボールをあんまり運ぶことができないパー○ィの練習とでもいうのだろうか――?
(ちくしょう、これは危ないか……。)
STというポジションにいる。
そのためそれなりに守備に戻って、
ディフェンスしたものの、
RWGの○カがドリブルしてクロスをあげると、
「バシュッ!!」
ファーサイドに送られた
鋭いクロスは、
あっさりエースFWのジェ○スの
2タッチで得点になってしまう。
"FWがどれだけDFを抜いてボールを受け取れるか,,
トラップや加速力に自信のある俺でも十分勝負
できるはずだからサブ組にいるが、
中盤にだって攻撃を仕掛ける力が必要で、スペースの穴を突破してもらわないとDFの壁は崩れない………。
あーー。
集中しながらポジションに戻っていたのに、
また「勝てないイメージ」でサッカーをしようとしている……。
「俺が前に渡すよ。」
「OK。」
どれだけの効果があるか不明だが、喧嘩や狩りには相手より強い自信というのが
大事なことは確かに証明されている。
『ピッッ………!』
『必ず勝てるイメージ』で試合に出続けることは実際には不可能ではなかった。
ちゃんと適切なステップを踏んできたからだが、 最近。それが怪しくなってきている。
味方のパスワークとともに、敵の陣形の空いたスペースでボールがもらえるよう、
周囲全体に気を配って身体を動かす……。
今のタイミング……。
パー○ィが和也なら――、あの日みたいに1発でウイングの先にパスをだしただろう。
ダッッッ……。
はっきりいって、高い金額支払っても同じタイミングでボールをだせるプレイヤーがいるか不明な
くらいの話だが、
和也がCMFにいれば、必ずオーナーが優秀なトップ下を連れてきてただろう。
(本業のアンカーじゃなくて、ボックストゥボックスの8番としてなら無双だったな。)
裏へ駆け抜ける動きよりも、ツートップの右【ST】のポジションで、
俺が司令塔の役割として攻撃を作っているわけだが……、バシッ…。
白DFの手前のスペースでボールを貰い…。
攻撃作りのために味方に後ろに下げて。
ボールはピッチの左に繋がれると、そのまま味方SBが正面にドリブルを仕掛けてボールをロスト。
離れた位置からくるジャ○を振り抜いて
パスをだせると思ったんだろうが――、
見事に赤DFに戻されたボールは、前にでてきた敵の赤GKへと渡り、ロングキック。
全員を走らせるためのジェ○スへのパスだろうが、これも――いい勝負。
多少、お互い狙っているからだろうが……。
( カウンターになったとき、どこでボールを受けるのが正解か――?)
毎回敵がいなければ、これを考えながら
自陣に戻るが……、
(どうすればいいんだ……?)
『結局――、俺の人生は間違えていたりしたんだろうか――……?』
メンバーが変わって、結果をだしてる分。
サブ組で紅白試合するようになったからか、
動きが噛み合わず。以前より全然練習した気になれない……。
学生時代は――、弱いチームに寄り添えるだけの実力と環境があったが…、
はぁ―――――。
自陣の中盤までボールをもらいに行く動き――。
全然ボールはくるが、チャンスになる確率は25%くらいか……?むこうのほうが1軍なだけあって、守備が厚いのは良いことだが、
スタメンを4名も交換しているのに、
とことん攻略が難しいときている――。
――和也を引き上げられていれば、こんな問題悩まずに済んだんじゃないだろうか……。
先に行って……、どんどん結果出して――、それでも振り返れば努力して追いついてきてたはずなのに追い落としてしまった。
ドリブル、ディフェンス、パスセンス、スピード、シュート精度。
決着をつけるために、全てに秀でた特別な『親友』に会いに行ったのは、
ただの――、俺の生涯のミスだったんじゃないか……。
『お前さん、苦労しておるのぅ……。』
赤いビブスの1軍が再び攻撃を仕掛け、
白DF裏へのギリギリで抜け出すスルーパスをだす。
赤RWGのサ○のクロスは、
――味方DFの間の中央へときて、ヘディングでシュート。
(悔しい……。)
コーチからの檄がとぶが、
ここ最近――、失点が3とか4の負けが続いているためついナーバスになってしまうが、
さっきの声はなんだ――?
(GK含めたら5人目になるのに、あきらかに精彩をかいている。)
「お前さん、必殺技が欲しくないか……?」
あの遠くのお爺さんの声か……。
視線がぶつかり……、
『必殺技』という3文字のことだけを思い浮かべる。
(周囲はまったく気づいていないのか……?)
ピッチの左のほうで立って、こちらを観ている仙人のような爺さんがいるが、
リーグ戦――も終盤で順位も2位につけている今日は確か、関係者以外立ち入り禁止のはず。
(急いで、ポジションに戻らないといけないか……。)
気持ちを切り替えた瞬間――‼︎
ドゴゴゴゴ....。
滅茶苦茶大きな地割れがピッチ上で起こり、
俺の意識が完全に持っていかれてしまう...。
サブだって優秀じゃなきゃ、良い練習が出来ない………。
こうやって、空野和也の幼馴染。高瀬龍はイギリスの舞台から姿を消した。